「レガシィ アウトバック」が3月末で販売終了 スバルの新たな国内向けフラッグシップはどうなる?
2025.03.05 デイリーコラム年度末に起きる王位争奪戦
既報のとおり、これまで国内向けスバル車のなかではフラッグシップに位置づけられていた「スバル・レガシィ アウトバック」は2025年3月31日をもって販売終了となる。それに伴い国内向けモデルラインナップの頂点が変わることになるわけだが、2025年度以降、スバル車の頂点にはどのモデルが立つことになるのだろうか?
考えられるプランのひとつは、現時点のスバル車としては唯一にして最高のスポーツセダンである「WRX S4」が、その内容を微妙に進化させたうえで玉座に座るというものだが、個人的には、これはないと考えている。
クルマといえども「組織の構成員」には、必ず序列や格、役割のようなものがある。そしてWRX S4は、組織のトップや幹部会の外側で自由気ままに行動させるぶんには素晴らしい働きをするメンバーだが、トップとなるには格のようなものがいささか欠けている。具体的には「周囲に有無を言わせぬほどのボディーサイズやスペックおよび実績」が、WRX S4にはない。それゆえWRX S4がフラッグシップとなることには大いに違和感がある。仮に筆者ら消費者がそれを許したとしても、格上の古参メンバーである「スバル・フォレスター」が許さないだろう。
価格的にはソルテラも資格十分なれど……
そしてそんなフォレスターが、アウトバックに代わって国内における2025年度以降のフラッグシップとなる可能性は大いにある。
2025年1月の東京オートサロンでお披露目されるかと思っていた新型フォレスターは、結局は発表されなかった。しかしそれでも、ストロングハイブリッドを搭載する新型フォレスターの登場はもはや妙読み段階。北米仕様の場合で全長×全幅×全高=4655×1828×1730mmとなるボディーサイズは、同4870×1875×1675mmであったアウトバックと比べてフラッグシップとしての説得力にはいささか欠けるが、日本においては十分なサイズ感だとはいえる。そしてそこに素晴らしい出来栄えのストロングハイブリッドが積まれるということになれば、われわれ消費者も一応の納得感を抱くことはできる。そしてフォレスターの弟分である「クロストレック」が文句を言うこともないだろう。
高額な電気自動車(BEV)であるソルテラだけは「なぜ自分が跡目ではないのか?」と不満を抱くかもしれないが、販売実績的に心もとないソルテラにさしたる発言権はないので、無視しておけばいい。
またそのほかに伏兵として、スバルとしては「おしゃれな都会派クロスオーバーSUV」と位置づけている「レヴォーグ レイバック」が2.4リッターターボエンジンまたはストロングハイブリッドを採用したうえで、突如「フラッグシップ」に祭り上げられる可能性もゼロではない。だが市場での存在感が今ひとつ希薄なことから、その可能性は低いとみていいだろう。
間もなくお目見えする新型SUV
となると、順当に考えれば「2025年度以降のスバルにおける国内向けのフラッグシップは新型フォレスター」ということになるわけだが、話はそう簡単には進まないはずだ。
なぜならば、まず第一に、スバルは2018年7月に発表した「新中期経営ビジョン(2018-2025)STEP」のなかで「2025年ごろ、新型車種としてグローバル戦略SUVを投入する」と明記している。そして第二に、2024年5月に発表された「新経営体制における方針 アップデート」においては、現在すでに販売されているソルテラを含む4車種のBEVをトヨタと共同開発し、2026年末までにラインナップ。そしてさらに2028年末には「自社開発BEV」をラインナップする――と述べているからだ。
「2025年ごろに新型車種として投入されるグローバル戦略SUV」とは、おそらくは、すでに北米でスパイショットが撮影されている「次期型アウトバックとおぼしきSUV」だろう。
現在のステーションワゴン的なレガシィ アウトバックとはずいぶん異なる「普通のSUVフォルム」を採用したその姿に、現地のアウトバック愛好家たちは落胆しているらしい。だがスバルの主力マーケットである北米のユーザー嗜好(しこう)を考えれば、次期型アウトバック(ではないかと思われるモデル)が普通のSUVフォルムになるのも、残念ではあるものの、仕方のない話だ。
この次期型アウトバック(とおぼしきモデル)が2025年度中あるいは2026年度中に、ストロングハイブリッドを搭載したうえで日本にも少量が導入され、「とりあえず納得感のある暫定フラッグシップ」の座に座る。そして2028年度以降、例の隠し玉である「自社開発BEV」が、暫定ではない国内スバル車のフラッグシップになる――というのが筆者の見立てだ。当たるも八卦(はっけ)、当たらぬも八卦ではあるが……。
(文=玉川ニコ/写真=スバル/編集=藤沢 勝)

玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
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