第314回:カーマニアの奇遇
2025.07.14 カーマニア人間国宝への道最新のアウディデザインを眺める
アウディはエリートの乗り物だ。私は過去、愛車たち(プジョーやBMW)に「パワーエリート号」だの「エリート特急」といった愛称をつけてきたが、真のエリートはアウディだと思っている。
なかでも私がぞっこんなのは、先代「A6」だ(第148回参照)。メカ的には地味だったが、地上最高に乗り心地がよく、空に浮かんでいるみたいだった。これぞ本物のエリート。あんなにデカいのに、後輪操舵でビックリするほど小回りが利くのもエリートっぽくてウットリ。
そのA6は、フルモデルチェンジして「A7」になるのかと思いきや、A6のまま残ったが日本未導入。いっぽう「A4」は「A5」となって発売された。サイズ的にはA5くらいが実用車として限界だし、車名もA6スレスレに近づいたので、期待を込めて試乗させていただきました。
駐車場で愛車の「プジョー508」と並べると、フォルムがまるでソックリだった。サイズも近いが、どっちもセダンを名乗りつつ、スタイリッシュな5ドアハッチバックなのは奇遇だ。
写真だと、新型A5はシンプル系のデザインに回帰したように見えたが、実物はかなりゴテっとしていた。前から見ると、ボンネットフードのエグリがビジーな印象だし、横は面がヌメッとしていて重い。個人的には、パキッとクリスプだった従来のアウディデザインのほうが、エリートっぽくて好みである。
今回の試乗車は、純ガソリンエンジンの「TFSIクワトロ150kW」。最高出力204PSの2リッター直4ターボで、マイルドハイブリッドシステムも付いていない。別にハイブリッドはなくてもいいが、お値段は681万円。これだったら、総額400万円で先代A6の中古を買ったほうがシアワセになれそうだ。後輪操舵で小回りも利くし。
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フェラーリの命の恩人に再会
運転席に座ると、少し見方が変わった。インテリアがものすごくエリートっぽくてイイ。特にディスプレイやスマートパノラマガラスルーフがエリート感ビンビン。ステアリングホイールもまるでプジョーみたいに四角くなっていてビックリ! 奇遇だが私好みだ。A6みたいな後輪操舵が付いてないのは残念だけど、508も付いていないので許す。
首都高に乗り入れると、大変乗り心地がいい。ドライブセレクトで「ダイナミック」モードを選んでも、嫌な突き上げはほぼゼロ。エンジンはものすごくフツーで、マイルドハイブリッドもないので出足が弱いが、ディーゼルモデル(マイルドハイブリッド車)を選べば出足ビンビンだろう。というか、なぜガソリンじゃなくディーゼルのほうにマイルドハイブリッドシステムを付けたのかわからない。
そんな感じで首都高・辰巳PAに到着すると、日曜日の午前中だけに、カーマニアが大集結していた。驚くべきことに、駐車場に並んでいるクルマ全部の車高が低く、スカッと見通しがいい! ミニバンはもちろん、SUVすら一台もいない! なかでも最大勢力を誇っていたのがポルシェだった。
私は春の「フェラーリ328」炎上事件以来、ポルシェが大好きになった(第307回参照)。というより、ポルシェはわがフェラーリの命の恩人。まさかポルシェにフェラーリが助けられるなんて、そんな展開が自分の人生で起きるなんて思わなかった。
これだけたくさんポルシェが来ているなら、きっと私の命の恩人(携帯消火器で火災を消してくださった2人)もいるんじゃないかと思って探したら、ホントにいらっしゃいました! 感動。
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燃えるかもしれないクルマは刺激的
993型「911」にお乗りの恩人・Nさんは、炎上当日以来の対面で、あらためて大感謝。携帯消火器を持っていたのは、「ちょっと古いポルシェには、積んどいたほうがいいと思いまして」(Nさん)という理性的な判断による。フェラーリ乗りみたいに、「燃えたらどうせ消せないだろうし、い~や」と諦めないところがさすがだ。ただNさんも、実際に消火器を使ったのは初めてで(だよね……)、あんなにすぐに消えるとは思っていなかったそうです。
もうひとりの恩人・Kさんの930型「911」は、あれ以来携帯消火器を増量し、さらに強力な中型(?)消火器も追加搭載していた。「燃えたらまず携帯消火器を投入して、それでもダメならデカいほうで勝負を懸けます!」(Kさん)。ここまで準備万端だと、もはや車両火災が待ち遠しいかもしれない。
普通のクルマにお乗りの皆さんは、自分のクルマが燃えることなんて考えてもいないでしょう。古いフェラーリに乗っている私ですら忘れていたくらいですから……。でも、燃えるかもしれないくらいのクルマって刺激的だ。乗るだけで小さな冒険なので。
炎上覚悟のカーマニアの皆さまとの会話の後、A5に乗り込んで帰途につくと、あまりの安楽さに涙が出た。これはエリートの日常の足だ。それはそれで価値があるし、古いスポーツカー乗りは、安心安全な実用車が絶対的に必要。しかし、ここまで値段が高くなくてもいい。
実用車はやっぱ300万円以下だろ! 余ったお金は趣味車に回すのが、カーマニアの正しい道のような気がする(私見です)。
(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一/車両協力=アウディ ジャパン)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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