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第78回:バイエルンのデザイン革命(後編) ―新型「3シリーズ」はどうなる!? 新人事からBMWの未来を読み解く―

2025.07.23 カーデザイン曼荼羅 渕野 健太郎清水 草一
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コンセプトモデルの「BMWビジョン ノイエクラッセ」と、BMWグループ全体のデザイン部門の総責任者である、エイドリアン・ファン・ホーイドンク ヘッド・オブBMWグループ・デザイン。
コンセプトモデルの「BMWビジョン ノイエクラッセ」と、BMWグループ全体のデザイン部門の総責任者である、エイドリアン・ファン・ホーイドンク ヘッド・オブBMWグループ・デザイン。拡大

未来のBMWを担うのは、元ボルボや元MINIのデザイナー? 2024年10月に発足したデザイン部門の新体制は、どのような意図のもとに構築され、また今後の注目車種……例えば新型「3シリーズ」などに、どんな影響をもたらすのか? カーデザインの識者と考えた。

前編に戻る)

BMWの上級車種のデザインを任されることとなった、マクシミリアン・ミッソーニ氏。それ以前は、ボルボ傘下の電動ハイパフォーマンスカーブランド、ポールスターでデザインディレクターを務めていた。
BMWの上級車種のデザインを任されることとなった、マクシミリアン・ミッソーニ氏。それ以前は、ボルボ傘下の電動ハイパフォーマンスカーブランド、ポールスターでデザインディレクターを務めていた。拡大
ミッソーニ氏の手になるクルマとしては、日本では「ボルボXC40」が身近。ボルボの人気コンパクトSUVで、「日本カー・オブ・ザ・イヤー2018-2019」にも選ばれている。
ミッソーニ氏の手になるクルマとしては、日本では「ボルボXC40」が身近。ボルボの人気コンパクトSUVで、「日本カー・オブ・ザ・イヤー2018-2019」にも選ばれている。拡大
MINIのデザインを主導していたオリバー・ハイルマー氏は、BMWの小・中型車とMモデルのデザイン責任者に就任。BMWグループの生え抜きのデザイナーで、インテリア部門の責任者も務めたことがある人物だ。
MINIのデザインを主導していたオリバー・ハイルマー氏は、BMWの小・中型車とMモデルのデザイン責任者に就任。BMWグループの生え抜きのデザイナーで、インテリア部門の責任者も務めたことがある人物だ。拡大
BMWならびにBMWグループ全体のデザインを統括する総大将は、これまでと変わらずエイドリアン・ファン・ホーイドンク氏である。
BMWならびにBMWグループ全体のデザインを統括する総大将は、これまでと変わらずエイドリアン・ファン・ホーイドンク氏である。拡大

次世代のBMWデザインを担う2人の人物

渕野健太郎(以下、渕野):今後のBMWデザインは、よくわからない部分もあるけど(笑)、いい動きが見えてきていると思うんです。

清水草一(以下、清水):「ノイエクラッセ」のセダンですな。

webCGほった(以下、ほった):そっちじゃないでしょ。

渕野:「スカイトップ」と「スピードトップ」には、いい動きが見てとれると思うんです(笑)。仮に、このデザインが上級車種に展開されるとして……このクラスの新しい担当者は、元ポールスターの人でしたっけ?

ほった:ですね。マクシミリアン・ミッソーニさん。この人はBMWの……(プレスリリースを見ながら)“アッパーミッドサイズ”と“ラグジュアリークラス”、それとアルピナを担当するみたいです。

渕野:で、ほかの車種は確か……。

ほった:前回もちょいと触れましたけど、小・中型系とMモデルを請け負うのは、MINIのデザイン責任者だったオリバー・ハイルマーさんですね。

渕野:去年のMINIの発表会に来ていた、あの人ですね(参照)。それに、小・中型とそれより上で、デザイン体制を分けるんだ。それはすごい。

ほった:ちなみに、上級車種を担当する元ポールスターのミッソーニさんは、ボルボでは「XC40」とかが出ていたころにリーダーをやってた人です。で、さらにその前はフォルクスワーゲン。

渕野:そうなんですか。XC40はすごくシンプルでいいデザインだったと思うんですけど……。じゃあやっぱり、今後はBMWの上級モデルも、シンプルな路線に向かうのかな。それこそスカイトップのような方向に。

ほった:ちなみにちなみに、キドニーグリル超巨大化計画の黒幕だったBMWデザインの責任者、ドマゴイ・デュケクさんは、ロールス・ロイスに異動だそうです。アデュー!

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どうなる? 新型「3シリーズ」

清水;うーん。誰も彼も初めて聞く名前だし、そういうことってユーザーとしては割とどうでもいいと思うんだ。とにかく、BMWの全部でなくていい。ノイエクラッセのセダンみたいなイメージの「3シリーズ」が出てくれれば、われら中高年は大喜びだよ。

ほった:主語がデカい(笑)。

清水:でも、次の3シリーズってそうはならないみたいだよね? 今と意外に変わらないような。

ほった:確かに。ちまたに出回ってるスパイショットがホンモノなら、そこまでぶっ飛んだクルマにはならなそう。

渕野:ていうか、3シリーズってそろそろモデルチェンジなんですか? 確かに、現行型が出てもうずいぶんたちますけど。

ほった:らしいですよ。2026年ってウワサです。なんか、新型3シリーズについて思うところがあるんですか?

渕野:うーん。次のモデルがノイエクラッセみたいなクルマになるかはわかりませんが、正直、ああいう逆スラントのフロントデザインをこれからも採用していくのは、割と難しいんじゃないかと思うんですよ。空力的な面でも、寸法的な面でも、歩行者保護の面でも。特に3シリーズのような量販車では。

ほった:それは切実ですね。正直、ワタシら庶民からしたら、BMWの上のほうの車種がどうなろうとご縁がないですからね。上級車種がスカイトップ風とかポールスター風とかのカッコいいクルマになるかも気になりますが、どっちかっつったら、ちっちゃいクルマの未来のほうが切実。

清水:まったく同感だよ。昔でいう「6シリーズ」より上は、ただ眺めるだけ。

まだそんなに古いイメージのない現行型「3シリーズ」だが、その発表は2018年のパリモーターショー。デビューからすでに満6年が経過しているのだ。
まだそんなに古いイメージのない現行型「3シリーズ」だが、その発表は2018年のパリモーターショー。デビューからすでに満6年が経過しているのだ。拡大
2025年で誕生50周年を迎えた「BMW 3シリーズ」。新型の登場もウワサされているし、ひょっとしたら年内に、なにかしらの発表があるかもしれない……。
2025年で誕生50周年を迎えた「BMW 3シリーズ」。新型の登場もウワサされているし、ひょっとしたら年内に、なにかしらの発表があるかもしれない……。拡大
清水氏の大好きな「ビジョン ノイエクラッセ」と、エイドリアン・ファン・ホーイドンク氏。この個性的な意匠は、新型「3シリーズ」や同車ベースの電気自動車に、どこまで取り入れられるのだろうか?
清水氏の大好きな「ビジョン ノイエクラッセ」と、エイドリアン・ファン・ホーイドンク氏。この個性的な意匠は、新型「3シリーズ」や同車ベースの電気自動車に、どこまで取り入れられるのだろうか?拡大
BMWのフロントマスクといえば、キドニーグリルと逆スラントノーズ! ……というファンはいまだに多そうだが、渕野氏いわく、この意匠を今後も継続採用していくのは、難しい様子。空力や歩行者保護など、さまざまな要件で不利になるからだ。いや、カッコいいんですけどね……。
BMWのフロントマスクといえば、キドニーグリルと逆スラントノーズ! ……というファンはいまだに多そうだが、渕野氏いわく、この意匠を今後も継続採用していくのは、難しい様子。空力や歩行者保護など、さまざまな要件で不利になるからだ。いや、カッコいいんですけどね……。拡大

元MINIのデザイナーが新しいBMWを描く

ほった:新型3シリーズはどうなる……っていうか、誰がデザインを描くのかな? 新体制の中身を見ると、おそらく小・中型担当のオリバーさんなんでしょうけど。あの人の経歴を見ると、以前はインテリアとかをやっていて、そこからMINIに進んだ感じなんですよね。MINIではかなりシンプルでポップなデザインを手がけているけど、BMWでどんなクルマをつくるか、想像がつかない。

渕野:まぁそこはデザイナーですから、市場の要望とかに合わせて変えてくると思います。MINIのときのように、細かいところで面白さを出してくれたら、それはそれでいい方向性なのかも、とも思いますけど。

ほった:BMWのセンターディスプレイにもスパイク君(MINIのインターフェイスを彩る犬のキャラクター)が出てきちゃったりして。

渕野:今のトレンドを見ていると、ちっちゃいほうのクルマは、そういうノリもいいかもしれませんね。ただエクステリアについては、やっぱりシンプルな方向、明快な方向に向かっていくのかなと思うんです。コテコテした感じよりかは。

ほった:確かに。セグメントを問わず、新人事ではそういうクルマをつくってきた人を選んでいる感がありますしね。

渕野:こういうデザイナーの人事って、自分は正直、全然わかんないです(笑)。国内のメーカーだと、過去の作品の評価よりも、仕事のやり方とか、マネジメント経験のほうが比重が高い感じだったりしますし。どういう役職についていたかとか。おそらくは信頼感を求めているのかなと。

いっぽうで、例えばデザイン専門の転職サイトやヘッドハンティングの様子を見ていると、中国のメーカーなんかは、具体的な実績をなによりも重視するみたいです。コンペで採用されたことがあるかどうかとか。……自分のような人間には、そっちのほうがありがたいですね(笑)。

で、BMWを含む欧米メーカーはおそらく、中国ほどじゃないにしても、日本よりもう少し実績主義寄りなんじゃなかろうかと。なので、確かにボルボとかポールスターでの実績とか、MINI時代にどんなものをつくっていたかとかは、完全に無関係ではないでしょうね。

2025年のコンクールデレガンス・ヴィラデステにて、「BMW M2 CS」をお披露目するBMW Mのフランク・ヴァン・ミールCEO(写真右)とオリバー・ハイルマー氏(同左)。ワタシ(webCGほった)のなかではいまだにMINIイメージが強いハイルマー氏も、今やすっかりBMWの人だ。
2025年のコンクールデレガンス・ヴィラデステにて、「BMW M2 CS」をお披露目するBMW Mのフランク・ヴァン・ミールCEO(写真右)とオリバー・ハイルマー氏(同左)。ワタシ(webCGほった)のなかではいまだにMINIイメージが強いハイルマー氏も、今やすっかりBMWの人だ。拡大
現行の「MINIクーパー」とハイルマー氏。MINI時代の彼は、シンプルななかに遊び心をちりばめたデザインを得意とし、また後述する「UXデザイン」にポジティブに取り組む人物だったが……。
現行の「MINIクーパー」とハイルマー氏。MINI時代の彼は、シンプルななかに遊び心をちりばめたデザインを得意とし、また後述する「UXデザイン」にポジティブに取り組む人物だったが……。拡大
現行「MINI」の丸いセンターディスプレイに住む、マスコットキャラクターのスパイク君。MINIオーナーのなかには、クルマとのコミュニケーションで、普段から彼(?)のお世話になっている人も多いかもしれない。
現行「MINI」の丸いセンターディスプレイに住む、マスコットキャラクターのスパイク君。MINIオーナーのなかには、クルマとのコミュニケーションで、普段から彼(?)のお世話になっている人も多いかもしれない。拡大
ハイルマー氏もそうだが、マクシミリアン・ミッソーニ氏も、プロポーションで勝負するシンプルな造形のクルマを手がけてきた人物だ。写真は2023年の上海オートショーより、「ポールスター4」を発表するミッソーニ氏。
ハイルマー氏もそうだが、マクシミリアン・ミッソーニ氏も、プロポーションで勝負するシンプルな造形のクルマを手がけてきた人物だ。写真は2023年の上海オートショーより、「ポールスター4」を発表するミッソーニ氏。拡大

かいわいでもてはやされるUXに思う

ほった:だとすると、新型3シリーズはやっぱりオリバーさんのセンスのクルマになるのかな? しかしオリバーさんの直近のMINIを見ていると、シンプルな外観と同じくらい「ボタンひとつでムードが変わる!」って演出のほうが強烈でしたけど。クルマのなかでプロジェクションマッピングやってるみたいな。

渕野:UX(ユーザーエクスペリエンス)の一例ですね。UXについてはいろんなメーカーが重視していて、今はそれ専用のデザイナーもいるくらいです。UXの体験価値を考えて、実際にアプリを用意したりとか、要は「サービスのデザイン」って言ってもいいのかもしれない。あとは、ディスプレイのGUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)を、内装のイルミネーションやグラフィックと連携させたり……。

清水:メルセデス・ベンツのアンビエントライトが、オーディオと同調して明滅する、みたいなヤツですね。

ほった:アウディは、クルマのシフトパドルで操作して遊ぶゲームを用意してましたよ。

渕野:ただ、それはクルマの根源的な価値というより、付随するものですよね。あくまで“脇”のことなんですよ。ハンドルもペダルもない完全自動運転のクルマとか、移動の在り方を根底から覆すものが出てこない限り、それがデザインの主役になるのは難しい。

ほった:それにUXを突き詰めるなら、「内装なんてプロジェクタースクリーンみたいに“のっぺらぼう”なのがいい」ってことになりそうですし。

渕野:そうですね。実は、最近増えている横基調のインストゥルメントパネルですけど、あれには「できるだけ圧迫感を抑えて、空間の一部みたいにインパネをデザインしよう」って意図もあるんです。ディスプレイを主にしたインテリアデザインがトレンドとしてあるのは、事実なんですよ。

だけど、だんだんそれも飽きてくる、飽きられてくるわけです。その反動ってわけではないのでしょうが、新型「BMW X3」は丸太を切って横向きに置いたような、存在感の強いダッシュボード形状をしていましたよね。あれは既存の流れとは大きく違うデザインで、新鮮でした。UXも大事ですけど、やはりもっと根源のことを考えないといけない。

現行「MINI」には「MINIエクスペリエンスモード」なる機能が搭載されており、モードに応じてUIのデザインや照明の色、ダッシュボードに投影される光の色・模様などが変化。各種操作音や走行時のサウンドなども切り替わるようになっていた。
現行「MINI」には「MINIエクスペリエンスモード」なる機能が搭載されており、モードに応じてUIのデザインや照明の色、ダッシュボードに投影される光の色・模様などが変化。各種操作音や走行時のサウンドなども切り替わるようになっていた。拡大
厚みがなく、センターディスプレイとステアリングホイール以外に目立つもののない「MINIクーパー」のインストゥルメントパネルまわり。これは極端な例だが、今日の自動車のインテリアデザインに、こうした“主張のなさ”を志向するトレンドがあるのは事実だ。
厚みがなく、センターディスプレイとステアリングホイール以外に目立つもののない「MINIクーパー」のインストゥルメントパネルまわり。これは極端な例だが、今日の自動車のインテリアデザインに、こうした“主張のなさ”を志向するトレンドがあるのは事実だ。拡大
いっぽうこちらは、現行型「BMW X3」のインストゥルメントパネルまわり。厚みがあり、丸くせり出したダッシュボード形状のボリュームがスゴい。
いっぽうこちらは、現行型「BMW X3」のインストゥルメントパネルまわり。厚みがあり、丸くせり出したダッシュボード形状のボリュームがスゴい。拡大

デザイナーが変わればデザインは変わる?

清水:それにしても、どうなんでしょうね? 欧州メーカーの場合、昔はもっと、トップのデザイナーが変わればデザインもガッと、明快に変わったと思うんですよ。BMWでいえば、クリス・バングルさんのときみたいな。でも最近は、よくわかんなくなってきちゃってません?

渕野:それについては、その会社におけるデザイナーの地位がどうなのかが関係するんですよ。役員なのかどうかってだけでも、全然違います。

ほった:JLRとかは、すごくわかりやすいですよね。ジャガーのデザインを大改革したイアン・カラムさんとか。ランドローバーをカッコよくしたジェリー・マクガバンさんも、かなり高い地位にいますし。

渕野:「高い」んじゃなくて、「高くなった」んじゃないかな? 日本のメーカーを見ても、日産なんかは、中村史郎さんからデザイナーの扱いが変わった気がします。

清水:アウディから起亜にヘッドハンティングされて、結局社長にまでなったペーター・シュライアーさんみたいな例もあるし。

渕野:逆に、デザイナーの発言権がすごくちっちゃくて、全然ダメなメーカーもあるんです。どことは言いませんが(笑)。そんなわけで、デザイナーの人事が実際のクルマにもたらす影響というのは、それぞれのメーカーによって違うわけです。BMWはどうなんだろう?

ほった:確かに、BMWもデカいイベントだとホーイドンクさんが出てきますけど、他のブランドほどデザイナーが表に立つイメージはないかなぁ。トヨタなんかは、ここ最近はずーっとサイモンさん(デザイン領域統括部長でチーフブランディングオフィサーのサイモン・ハンフリ-ズ氏)が登場するのがお約束だし、よそでもデザイナーやデザイン出身の人が発表会で主役を務める例も多いですけど。

それに、そもそも今回の組織改革でも、総大将のホーイドンクさんはそのままですからね。幕僚が変わった程度では、実際にクルマに表れる影響は小さいのかもしれません。

渕野:その辺は、実際にクルマが出てこないとわからないですね。

1992年から2009年まで、BMWのチーフデザイナーを務めたクリス・バングル氏。エイドリアン・ファン・ホーイドンク氏の前任者で、挑戦的なカーデザインでBMWに革命をもたらした。
1992年から2009年まで、BMWのチーフデザイナーを務めたクリス・バングル氏。エイドリアン・ファン・ホーイドンク氏の前任者で、挑戦的なカーデザインでBMWに革命をもたらした。拡大
クリス・バングル氏によるBMWデザイン改革の一例。写真は上が3代目(1994-2001年)、下が4代目(2001-2009年)の「7シリーズ」。
クリス・バングル氏によるBMWデザイン改革の一例。写真は上が3代目(1994-2001年)、下が4代目(2001-2009年)の「7シリーズ」。拡大
最近はメーカーやブランドの顔役として、デザイナーや元デザイン部門の人物が活躍する例も多い。写真はジャガーのブランド改革を解説する、JLRのジェリー・マクガバン氏。(2023年4月)
最近はメーカーやブランドの顔役として、デザイナーや元デザイン部門の人物が活躍する例も多い。写真はジャガーのブランド改革を解説する、JLRのジェリー・マクガバン氏。(2023年4月)拡大
傑作「アウディTT」を手がけたことで知られるペーター・シュライアー氏。フォルクスワーゲン・グループでの活躍の後、2006年に韓国のキアに移籍。世界的に高く評価されるキアのデザインの基を築き、後に同社の社長に就任した。
傑作「アウディTT」を手がけたことで知られるペーター・シュライアー氏。フォルクスワーゲン・グループでの活躍の後、2006年に韓国のキアに移籍。世界的に高く評価されるキアのデザインの基を築き、後に同社の社長に就任した。拡大

ひとつのブランドにいろんなデザインがあっていい

ほった:ただやっぱり気になるのが、BMWがこのタイミングで、デザインの体制とメンバーを刷新したことの意義なんですよ。大々的にアピールもしていたし、メーカーとして、なにかしらのメッセージがあるんですかね?

渕野:うーん。そこは政治の世界なんで、なんとも言えないです。でも、これだけニュースにするってことは……ひょっとして、BMWのデザインに対する、世間一般の不満みたいなものを感じていたのかもしれない。どうなんです? 最近のBMWのデザインの評判って。

ほった:いち編集記者の手応えでしかありませんけど、感覚的には「真っ二つ!」って感じです。日本では販売好調だし、実際のお客さんの反応も悪くはないようですけど、アンチも多分、過去最多なんじゃないかと(笑)。あの人のときと同じぐらい。

渕野:クリス・バングル?

ほった:そう。バングルさんの登場時と同じぐらい、ディスりの声も聞こえてきます。

渕野:でも賛否両論なんですよね。みんながみんな否定というわけではなく。

清水:俺みたいな支持派が声を上げづらい空気があるんだよ(全員笑)。カーマニアの典型って、こういう人だから(webCGほったを指して)。「目、大丈夫ですか?」とか攻撃してくるんだから。

ほった:デカデカ・ピカピカキドニーに関してだけは、ワタシは一歩も引きませんよ?

清水:とにかくさ、BMWも全部が全部よくなるというか、ベクトルが統一される必要はないでしょ。それぞれの人に1台か2台、「これはいいな、欲しいな」と思えるものがあれば。

ほった:ひとつのブランドのなかに、スバルとマツダが同居してるみたいな感じで、そこがいいところでもあるわけですからね。

清水:それでいいじゃない。全部買うわけじゃないんだからさ。

(語り=渕野健太郎/文=清水草一/写真=BMW、ボルボ、ポールスター、webCG/編集=堀田剛資)

新しい人事に加え、組織体制の変更も、今回のデザイン改革の大きなトピックだ。既述のとおり、BMWブランドでは“小・中型車およびMモデル”向けと、“上級車種およびアルピナモデル”向けに、スタジオを分化。いっぽうカラー/マテリアルに関しては、全ブランドを横断するかたちで部署が統合された。写真は「コンセプト スピードトップ」のインテリア素材を吟味する、エイドリアン・ファン・ホーイドンク氏とデザインチームのメンバー。
新しい人事に加え、組織体制の変更も、今回のデザイン改革の大きなトピックだ。既述のとおり、BMWブランドでは“小・中型車およびMモデル”向けと、“上級車種およびアルピナモデル”向けに、スタジオを分化。いっぽうカラー/マテリアルに関しては、全ブランドを横断するかたちで部署が統合された。写真は「コンセプト スピードトップ」のインテリア素材を吟味する、エイドリアン・ファン・ホーイドンク氏とデザインチームのメンバー。拡大
攻めたデザインで物議をかもす今日のBMWだが、世間の批判はクリス・バングル氏の時代もスゴかった。写真は「CS1」(写真手前)、「Xクーペ」(同左)、「Z9グランツーリスモ」(同右)と、3台のショーカーに囲まれてご満悦のバングル氏。2002年4月、コンクールデレガンス・ヴィラデステより。
攻めたデザインで物議をかもす今日のBMWだが、世間の批判はクリス・バングル氏の時代もスゴかった。写真は「CS1」(写真手前)、「Xクーペ」(同左)、「Z9グランツーリスモ」(同右)と、3台のショーカーに囲まれてご満悦のバングル氏。2002年4月、コンクールデレガンス・ヴィラデステより。拡大
清水氏が大好きで、webCGほったが非常に苦手な現行「X2」。 
ほった「……まぁ、こういうクルマがあってもいいんですけどね。全ラインナップが巨大キドニーになるんじゃなければ」 
清水「そうそう。同じブランドでも、全ラインナップのデザインを統一する必要はないよ」
清水氏が大好きで、webCGほったが非常に苦手な現行「X2」。 
	ほった「……まぁ、こういうクルマがあってもいいんですけどね。全ラインナップが巨大キドニーになるんじゃなければ」 
	清水「そうそう。同じブランドでも、全ラインナップのデザインを統一する必要はないよ」拡大
統一されたブランドイメージがあり、キドニーグリルやホフマイスターキンクなどのモチーフを共有するいっぽうで、実際のクルマのデザインは非常に振れ幅が大きく、さまざまな意匠の車種を取りそろえるのがBMWの特徴だ。読者諸氏の皆さまも、「ノイエクラッセ」(上)も「スカイトップ」(下)も、分け隔てなく愛(め)でていきましょう。
統一されたブランドイメージがあり、キドニーグリルやホフマイスターキンクなどのモチーフを共有するいっぽうで、実際のクルマのデザインは非常に振れ幅が大きく、さまざまな意匠の車種を取りそろえるのがBMWの特徴だ。読者諸氏の皆さまも、「ノイエクラッセ」(上)も「スカイトップ」(下)も、分け隔てなく愛(め)でていきましょう。拡大
渕野 健太郎

渕野 健太郎

プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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