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第77回:バイエルンのデザイン革命(前編) ―これは迷走か陰謀か? ごった煮で突っ走るBMWデザインの未来―

2025.07.16 カーデザイン曼荼羅 渕野 健太郎清水 草一
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2023年9月に発表されたBMWのコンセプトモデル「ビジョン ノイエクラッセ」。同車のデザインモチーフは、広く市販車にも取り入れられていくというが……。
2023年9月に発表されたBMWのコンセプトモデル「ビジョン ノイエクラッセ」。同車のデザインモチーフは、広く市販車にも取り入れられていくというが……。拡大

今まさに、大胆なデザイン改革を進めているBMW。しかしその中身を見ると、かたや「ノイエクラッセ」、こなた「スカイトップ」と、全然違うモチーフが同時多発的に提案されているではないか。ごちゃまぜで突き進むBMWデザインの未来を、有識者と考えた。

BMWでは、2024年10月付でデザイン開発の体制を刷新。小・中型車と上級車種とで責任者を分けるなどして組織を改編し、デザイナーを異動させた。
BMWでは、2024年10月付でデザイン開発の体制を刷新。小・中型車と上級車種とで責任者を分けるなどして組織を改編し、デザイナーを異動させた。拡大
それまでMINIブランドでデザインを指揮していたオリバー・ハイルマー氏は、BMWの小・中型車とMモデルのデザインを手がけることに。BMWの量販セグメントに、ポップでキャッチーなMINIの血が入るのかと思うと、ちょっと興味深い。
それまでMINIブランドでデザインを指揮していたオリバー・ハイルマー氏は、BMWの小・中型車とMモデルのデザインを手がけることに。BMWの量販セグメントに、ポップでキャッチーなMINIの血が入るのかと思うと、ちょっと興味深い。拡大
2025年の「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラデステ」で発表された「コンセプト スピードトップ」。
2025年の「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラデステ」で発表された「コンセプト スピードトップ」。拡大
「コンセプト スピードトップ」のインテリア。同車とオープントップの「コンセプト スカイトップ」は、ともに数量限定で販売される。台数は、スカイトップが50台、スピードトップが70台だ。
「コンセプト スピードトップ」のインテリア。同車とオープントップの「コンセプト スカイトップ」は、ともに数量限定で販売される。台数は、スカイトップが50台、スピードトップが70台だ。拡大
「コンセプト スカイトップ」(写真左)と「コンセプト スピードトップ」(同右)。
「コンセプト スカイトップ」(写真左)と「コンセプト スピードトップ」(同右)。拡大

またしてもBMW

webCGほった(以下、ほった):今回はまたまた、BMWの話でございます。

清水草一(以下、清水):またまた~(笑)。

ほった:またまた~なんですけど、今回は今までとは違って、現状の情報をもとに未来の話をしたいなと。例えばですけど、BMWではエイドリアン・ファン・ホーイドンクさんの下で働いていた偉いデザイナーさん方が、2024年10月付でみんな異動になったんですよね。最近のデザインがあまりに不評だったのか。

渕野健太郎(以下、渕野):そういうことなんですか?

ほった:わかりまへん(笑)。

渕野:単純な人事異動みたいですけど。

ほった:まぁそうなんでしょうけど。とにかく各部門のデザインのトップが入れ替わって、BMWのデザインはどうなる!? って妄想をするのも面白いかと。これからはBMWの小・中型車のデザインは、今までMINIをやっていたオリバー・ハイルマーさんが担当するそうですが、じゃああのノリがBMWにも広まっていくのか? とか。

清水:マニアックだなぁ。

ほった:あるいはコンセプトモデルの話ですよね。もうすぐ市販版がデビューするっていう「ノイエクラッセ」シリーズもそうですが、ほかにも、今度のコンクールデレガンスで「スピードトップ」ってコンセプトカーが出ましたよね。あれはまんま「スカイトップ」の顔でしたけど、今後、そっち系のデザインは他の市販車にも広まっていくのか? とか。個人的には、スカイトップ、スピードトップのフロントデザインは、すごくいいと思うんですけど。

渕野:(写真を探して)スピードトップというのは、これですよね? スカイトップもスピードトップも、純粋なショーカーではなくて少量生産するんですね。50台とか70台とか。基本はオープンカーかシューティングブレーク風かの違いで、あとは一緒なのかな? インストゥルメントパネルを見ると、中身は「8シリーズ」かと思いますけど。

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シンプルだけど丁寧にデザインされている

渕野:このスカイトップ、スピードトップのデザインって、すごくシンプルで明快ですよね。

清水:これはシンプルなんですか?

渕野:非常にシンプルです。この連載でも何度か話していますが、やっぱりカーデザインでは、シンプルで明快なのが一番いい。手数に頼らず、本質的な立体で勝負するのが。それが実現できていた、ちょっと前までのBMWの流れが感じられて、すごくいいと思います。ボリューミーな感じもあるし、それがエレガントにまとまっている。

清水:そんなにいいですか?

渕野:細かいディテールはとことんシンプル。先ほどほったさんが言っていた顔まわりの立体もシンプルです。ただ、そこでは実は、割と面白いこともやっているんですよ。ノーズの部分、グリルまわりは逆スラントですけど、バンパーサイドには別立体がついてるんですよね。ちょっと飛び出してるような感じに。このギャップが面白い。しかも、そういう技がシンプルに表現されている。つまり単純にシンプルっていうわけではなくて、細かいところまですごくデザインされているんです。

清水:どんぐりを頰張ったリスさんみたいだけど。

ほった:なんか文句つけたいみたいですね(笑)。

渕野:リアも、ダックテールとまでは言いませんけど、もともとあったBMWのモチーフを生かしながら、極力シンプルに仕上げています。

清水:ううーん……。正直、僕はスカイトップやスピードトップにはあんまり魅力を感じないんですよ。中高年には、ノイエクラッセのほうが断然刺さる。

渕野&ほった:ええー!!

清水:えっ、ふたりともダメ?

ほった:ノイエクラッセって、あの『Dr.スランプ アラレちゃん』のニコチャン大王みたいなヤツですよね? ありえんだがや!

「コンセプト スピードトップ」の3面図。 
ほった「いいですねぇ。昔ながらのBMWって感じで」 
渕野「個人的には、未来のBMWにはこちら側のデザインを取り入れていってほしいのですが……」
「コンセプト スピードトップ」の3面図。 
	ほった「いいですねぇ。昔ながらのBMWって感じで」 
	渕野「個人的には、未来のBMWにはこちら側のデザインを取り入れていってほしいのですが……」拡大
「コンセプト スカイトップ」のフロントマスク。顔まわりの意匠は、大きく逆スラントした面の向きと、ぐっと張り出した左右のエアインテーク部が目を引く。
「コンセプト スカイトップ」のフロントマスク。顔まわりの意匠は、大きく逆スラントした面の向きと、ぐっと張り出した左右のエアインテーク部が目を引く。拡大
後端をつまんで引っ張ったようなトランクフードの意匠に注目。シンプルでありながら、細かいところまで丁寧にデザインされている。
後端をつまんで引っ張ったようなトランクフードの意匠に注目。シンプルでありながら、細かいところまで丁寧にデザインされている。拡大
「コンセプト スカイトップ」(上)と「コンセプト スピードトップ」(下)のデザインスケッチ。
「コンセプト スカイトップ」(上)と「コンセプト スピードトップ」(下)のデザインスケッチ。拡大

このデザインはSUVには向かない?

渕野:ええと……ノイエクラッセっていっても、セダンとSUVがあるじゃないですか。

清水:ありますね。セダンが「ビジョン ノイエクラッセ」、SUVが「ビジョン ノイエクラッセX」。

渕野:まだセダンのほうは大丈夫なんですが、SUVはちょっと……。清水さんがいうのはセダンの話、これの話ですよね?(写真を出す)

清水:そう、これの話です。

渕野:で、SUVのノイエクラッセXはこれなんですけど……。

清水:こっちはまったく眼中にないです(全員笑)。

渕野:でも、時代的にはSUVがメインになってくるでしょう。ノイエクラッセXを見ると、大きな構成としては、やっぱり複雑なんですよ。そもそもボディーサイドのピークと前後のピークの位置が全然違う。

清水:確かに、サイドのピークがガッタンゴットンしてる。

渕野:ドア部のピークは結構下のところにありますけど、フロントとリアは普通のSUVみたいに高いところにある。ここがもうシンプルじゃない。だったら、このボディー中央のピークに合わせて前と後ろのプロポーションもそろえればいいのかというと、フロント/リアの“高さ感”で存在を見せたいSUVでは、やっぱりそれも厳しい。だから、そもそもこのモチーフ自体に「今の時代にどうなんだろう?」っていうのがあるわけです。

セダンはまだいいんですよ。フロントとリアに対してサイドのイメージがちょっと違うんですが、フロントの逆スラントから徐々に変化してサイドにつながっているので、チグハグな感じはまだ緩和されているんですが……。

清水:ノイエクラッセのこのデザインは、キャビンをルーミーに見せたかったのかな。こちらはキャビンが大きく見えてフレンドリーな印象じゃないですか。さっきのスカイトップやスピードトップは、キャビンが小さくてボディーがドンとデカいマッチョ系で、そこがまるで違う。

渕野:不思議ですよね。スカイトップとノイセクラッセ……特にSUVのノイエクラッセXを見ると、同じ時期のモデルとは到底思えない。

清水:それと、ノイエクラッセシリーズのなかでも、SUVのXはちっちゃなキドニーが独立して存在しているんですよね。

渕野:そうなんですよ。セダンは顔全体にキドニーが広がってるのに。

ほった:デザインの統一ができてない。もう収拾がつかなくなっちゃってるんですかね?

「ノイエクラッセ」シリーズには2台のコンセプトモデルが存在する。写真左がセダン「コンセプト ノイエクラッセ」、同右が「コンセプト ノイエクラッセX」。
「ノイエクラッセ」シリーズには2台のコンセプトモデルが存在する。写真左がセダン「コンセプト ノイエクラッセ」、同右が「コンセプト ノイエクラッセX」。拡大
「コンセプト ノイエクラッセX」のリアクオータービュー。サイドを見るとドアパネルのかなり低い位置にピークがある反面、その前後ではフェンダーが高く張り出しており、前後のピークはそれと同レベルの高い位置にある。見る角度や箇所によって、ピークの位置がチグハグなのだ。
「コンセプト ノイエクラッセX」のリアクオータービュー。サイドを見るとドアパネルのかなり低い位置にピークがある反面、その前後ではフェンダーが高く張り出しており、前後のピークはそれと同レベルの高い位置にある。見る角度や箇所によって、ピークの位置がチグハグなのだ。拡大
渕野「セダンのほうも、クルマの前後とサイドとで、ピークがずれているんですが……」 
ほった「前後のバンパーに、ドアのキャラクターを受けるラインが通ってますね」 
渕野「それに、フロントから徐々に変化しながらサイドにつながっていくデザインなので、そんなに気にならないんですよ」
渕野「セダンのほうも、クルマの前後とサイドとで、ピークがずれているんですが……」 
	ほった「前後のバンパーに、ドアのキャラクターを受けるラインが通ってますね」 
	渕野「それに、フロントから徐々に変化しながらサイドにつながっていくデザインなので、そんなに気にならないんですよ」拡大
清水「窓が大きくて、ボディー断面が末広がりになるこのデザインは、キャビンを広く見せたかったのかな?」 
ほった「かっこいいクルマの既成概念に対する挑戦を感じますよね。そこは好印象なんですけど……」
清水「窓が大きくて、ボディー断面が末広がりになるこのデザインは、キャビンを広く見せたかったのかな?」 
	ほった「かっこいいクルマの既成概念に対する挑戦を感じますよね。そこは好印象なんですけど……」拡大
同じ「ノイエクラッセ」シリーズの2台だが、フロントまわりの意匠は大きく異なる。セダンではランプを内包した2つの枠をキドニーグリルと見立てているのに対し、SUVではフロント中央に小ぶりなキドニーグリルが残されているのだ。
同じ「ノイエクラッセ」シリーズの2台だが、フロントまわりの意匠は大きく異なる。セダンではランプを内包した2つの枠をキドニーグリルと見立てているのに対し、SUVではフロント中央に小ぶりなキドニーグリルが残されているのだ。拡大

「マルニ」みたいなクルマをつくってほしい

清水:ノイエクラッセのセダンの顔は、キドニーグリルの新たな拡大方法でしょ。これはアリだと思うなぁ。

ほった:ワタシとしては、ニコチャン星にさっさと帰れの一心ですけど。

清水:いやいや、僕もこれをこのまんま出してほしいわけではないけど(全員笑)。中高年はこういうのに郷愁を感じるんですよ。日産がモーターショーに出した「510ブルーバード」っぽいコンセプトカー(2013年発表の「日産IDx」)ともども。

ほった:ああ。まぁ、なんとなく似てはいますよね。顔の存在感とか、全体のイメージとか。

渕野:そうなると、清水さんに響いてるのは、このデザインそのものっていうよりかは、コンセプト的なところなんですかね?

清水:そう。こういうBMWを出してほしいんです。「マルニ」(1966年登場の小型2ドアセダンシリーズ)ですよ、結局。逆スラントで、ボディーに対してキャビンが大きいのに速いというギャップ萌(も)え。

渕野:それは自分もなんとなくわかります。でも、だったらもっとシンプルに、ストレートにやったほうがいい。

ほった:確かに、ノイエクラッセには“その他の要素”が多すぎますね。

渕野:それに、ノイエクラッセのデザインはこれから広く展開されていくわけですよね。コンパクトセダンだけじゃなく、そのほかの車種にも。最近「5シリーズ」のフェイスリフト版だとか、新型「3シリーズ」だとかいわれているスパイショットが、いっぱい出ていますけど……。

ほった:ネットで「三菱ディアマンテ」っていわれているやつですね。

清水:ディアマンテ顔だけど、これはいいディアマンテじゃない?(笑) 今後、BMWのデザインは基本的にこっちのほうへいくのかな?

渕野:そのようですね。そうやって新しい顔まわりを模索しているんだと思います。ただノイエクラッセで気になるのは、顔まわりというより、むしろ基本的な立体構成なんですよ。

ほった:ボディーサイドのピークが下にくる、末広がりの台形デザインですね。

渕野:さっきも言ったとおり、やはりセダンだけじゃなくSUVもこの路線でやるとすると、結構難しいことになる気がします。(※写真キャプション参照

「コンセプト ノイエクラッセ」のデザインスケッチ。 
ほった「確かに、これと比べたら『ノイエクラッセX』のフロントデザインは、『日和(ひよ)ったな』って感じがしますね」
「コンセプト ノイエクラッセ」のデザインスケッチ。 
	ほった「確かに、これと比べたら『ノイエクラッセX』のフロントデザインは、『日和(ひよ)ったな』って感じがしますね」拡大
2013年に発表された「日産IDxフリーフロー」。
2013年に発表された「日産IDxフリーフロー」。拡大
「マルニ」とは、1966年より順次登場した、一連の小型2ドアセダンの総称。日本では、2リッターエンジンの高性能モデル「2002」や「2002ti」、ターボエンジンを搭載した「2002ターボ」などが有名。
「マルニ」とは、1966年より順次登場した、一連の小型2ドアセダンの総称。日本では、2リッターエンジンの高性能モデル「2002」や「2002ti」、ターボエンジンを搭載した「2002ターボ」などが有名。拡大
(※)2025年3月の年次総会で披露された、電動SUVの新型「iX3」。「ノイエクラッセ」シリーズ最初の市販モデルとして、2025年後半の生産開始が予定されているが……。 
ほった「あれ? ボディーサイドのデザインが……」 
渕野「やっぱり、『ノイエクラッセ』のドア面を市販のSUVに取り入れるのは、ムリがあったんですね」
(※)2025年3月の年次総会で披露された、電動SUVの新型「iX3」。「ノイエクラッセ」シリーズ最初の市販モデルとして、2025年後半の生産開始が予定されているが……。 
	ほった「あれ? ボディーサイドのデザインが……」 
	渕野「やっぱり、『ノイエクラッセ』のドア面を市販のSUVに取り入れるのは、ムリがあったんですね」拡大
1990年登場の初代「三菱ディアマンテ」。当時は逆スラントのフロントデザインをして「BMWっぽい」とやゆされたが、まさか三十余年を経て逆の現象が起きようとは、誰が予想できたでしょう?
1990年登場の初代「三菱ディアマンテ」。当時は逆スラントのフロントデザインをして「BMWっぽい」とやゆされたが、まさか三十余年を経て逆の現象が起きようとは、誰が予想できたでしょう?拡大

結局どこへいきたいのよ?

清水:でも、現行の最新ラインナップを見ると、新型「X3」なんかは別にノイエクラッセ感はありませんよね?(参照

渕野:X3はどちらかというと、スカイトップ的なデザインです。顔まわりにしてもかなりシンプルだし。のぺーっとしてますけど、街なかで見てもカッコいい。最近のBMWは、どれも結構コテコテしてたけど、X3はすごくボリュームで見せている。だから、将来のBMWは、X3やスカイトップ系の流れでいくといいな……と思っているんですよ。個人的には。

清水:結局、BMWのデザインは、どこへいくのかよくわかんなくてハラハラしますね。

渕野:先が見えづらいですね、まだ。

ほった:常識的に考えたら、ノイエ系とX3系の併存ですよね。ちまたでは『電気(自動車)がノイエ系で、エンジン車はまた違うデザインになる』って報道もありますし。まぁワタシとしては、例の巨大キドニーに終止符が打たれれば、ひとまずなんでもいいですよ。

清水:あのキドニーグリルの巨大化は、とってもよかったと思うんだけど。

ほった:目、大丈夫ですか?

清水:目はおかしいよ(笑)。白内障の手術したし。でもさ、巨大キドニーはやっぱりすごく刺激的だったでしょ? あれを「やめます!」ってなったら外野のカーマニアは大喜びだろうけどさ。でも、ちゃんと今どきのBMWを買っていた人たちは、あれがあったからうれしかったんだよ。あれがなかったら喜びもないわけよ(笑)。巨大キドニーはすごくBMWの味つけを濃くしてくれた。そのときはおいしかったと思うんだ。

ほった:そんな濃い味が好きな人は、みんな高血圧でヤラれてしまえばいいんですよ。

2024年に登場したばかりの現行型「X3」。シンプルで塊感のある意匠は既存のBMWにはないものだったが、いっぽうで「ノイエクラッセ」とも異なるイメージでもある。
2024年に登場したばかりの現行型「X3」。シンプルで塊感のある意匠は既存のBMWにはないものだったが、いっぽうで「ノイエクラッセ」とも異なるイメージでもある。拡大
ほった「BMWは、『X3』に取り入れたこのデザインコンセプトをどうするつもりなんですかね? まさか一台・一世代でお役御免ってことはないでしょうし」
ほった「BMWは、『X3』に取り入れたこのデザインコンセプトをどうするつもりなんですかね? まさか一台・一世代でお役御免ってことはないでしょうし」拡大
次世代のBMWデザインといえば、近年過激化の一途をたどっていた巨大キドニーグリルの行方も気になるところだ。写真は「XM」。
次世代のBMWデザインといえば、近年過激化の一途をたどっていた巨大キドニーグリルの行方も気になるところだ。写真は「XM」。拡大
イルミネーション入りでギラギラ光る「7シリーズ」のキドニーグリル。カーマニアからは大ひんしゅく、ファンの間では拍手喝采だった巨大キドニーの、明日はどっちだ?
イルミネーション入りでギラギラ光る「7シリーズ」のキドニーグリル。カーマニアからは大ひんしゅく、ファンの間では拍手喝采だった巨大キドニーの、明日はどっちだ?拡大

確信犯なのか、迷走しているだけか

ほった:それに、デカデカキドニーの行き着く先がノイエクラッセなんじゃないんですか? 顔全部キドニーグリル、みたいな。

渕野:タテだったものをヨコにして。

ほった:そうそう。で最終的には、トヨタの「ヴォクシー」みたいに、グリルのなかにヘッドランプも入れちゃう。

清水:実際、目がキドニーに入ったよね、ノイエクラッセのセダン。でもあれは上品で控えめだと思うんだ。シンプルだし。

渕野:あれがシンプルかどうかはともかく、巨大キドニーに関しては、好きな人は好きだったわけですよね。

清水:そう。好きな人は好きだった。というか、全然気にしなかった。売れ行きも落ちてないし。とにかくBMWのデザインは振れ幅がデカい。どこいくかわかんない。それが面白いんだよね。カーマニアとして食いつける。

ほった:ですね。そういえば、渕野さんに「今回のテーマは『BMWの次世代デザイン』です」って伝えたら、「webCGはほんとにBMWが好きですね(笑)」って言われたんですよ。ただこれは、「webCGはBMWが好き」っていうより、そもそもBMWって、そうやって話題をつくるのがすごくうまいんじゃないかと。コンセプトカーも市販モデルも、必ずこうやってかんかんがくがくになる。それでいて販売も好調なんだから大したもんです。

清水:うまいのかな? やっぱ迷走してるだけじゃないの? そういう陰謀論みたいな話じゃなく、単にいろんなのが出てきちゃってるだけじゃないかな。

ほった:いやいや。一種の陰謀ですよ。こうやって話題を振りまいて、世論を操るんです。ワタシたちはみんな、クヴァント家の手のひらの上……。

清水:ほった君って、そっちの人だったのか。

ほった:そうですよ。普段は思考を読まれないように、頭にアルミホイルを巻いてますから。

後編へ続く)

(語り=渕野健太郎/文=清水草一/写真=BMW、日産自動車、トヨタ自動車、webCG/編集=堀田剛資)

ほった「……というか、巨大化するキドニーグリルの終着点が『ノイエクラッセ』のこの顔なのでは?」
ほった「……というか、巨大化するキドニーグリルの終着点が『ノイエクラッセ』のこの顔なのでは?」拡大
「BMWコンセプト ノイエクラッセ」では、顔の上半分がすべてキドニーグリルとなり、ヘッドランプもその内側に収まるかたちとなった。
「BMWコンセプト ノイエクラッセ」では、顔の上半分がすべてキドニーグリルとなり、ヘッドランプもその内側に収まるかたちとなった。拡大
もはやグリルじゃない部分を探すほうが難しい面構えとなった、現行「トヨタ・ヴォクシー」。上部の細いランプは車幅灯&デイライトで、いわゆるヘッドランプ(ロービーム/ハイビーム)は、グリルの内側に配されている。
もはやグリルじゃない部分を探すほうが難しい面構えとなった、現行「トヨタ・ヴォクシー」。上部の細いランプは車幅灯&デイライトで、いわゆるヘッドランプ(ロービーム/ハイビーム)は、グリルの内側に配されている。拡大
上から順に、「BMWコンセプト スカイトップ」と「ビジョン ノイエクラッセ」「ビジョン ノイエクラッセX」のデザインスケッチ。コンセプトが統一されないデザインの林立は、BMWの迷走の表れか? あるいは……。
上から順に、「BMWコンセプト スカイトップ」と「ビジョン ノイエクラッセ」「ビジョン ノイエクラッセX」のデザインスケッチ。コンセプトが統一されないデザインの林立は、BMWの迷走の表れか? あるいは……。拡大
渕野 健太郎

渕野 健太郎

プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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