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第325回:カーマニアの闇鍋

2025.12.15 カーマニア人間国宝への道 清水 草一
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クロカンはディーゼルに限る

最近、自宅(東京・杉並)の近所にマンションができた。モロ昭和のマンションを取り壊して、今どきっぽいマンションに建て替えられたのである。

建設中から「億ションになる」といううわさは聞いていたが、実際いくらで売り出されたのか、チラシを見て仰天した。

約1億6000万円!(100平方メートルくらい)

そんな天文学的な価格のマンションの駐車場を見れば、レクサスとドイツ御三家ばっか! そんなカネ、みんなどうやって稼ぐのだろう。本当にお金持ちだな……。

先日、「レクサスGX」に乗る機会があった。弊社スタッフの安ド二等兵が広報車を借りてきたので、ついでに私も首都高で試乗させてもらったのだ。後で調べたら、グレードは「GX550“オーバートレイル+”」というヤツでした。

GXのベースは「ランドクルーザー“250”」。ワイルドかつカジュアルで、実に魅力的なクルマだった。飾り気のない直線的なデザインは、カーマニア的な美徳のカタマリ。エンジンが2.8リッター直4ディーゼルターボってのもイイ(2.7リッター直4自然吸気もアリ)。こういうクルマはディーゼルに限る(私見です)! あれで520万円からってのも、今どきとしてはお買い得である。

GXはそのレクサス版。グリルをはじめ、顔がだいぶ違う。その他の違いについては、ほとんど予備知識がないまま試乗に臨んだ。カーマニアの闇鍋だ。

夜の首都高で「レクサスGX550“オーバートレイル+”」に試乗した。GXはレクサスのラインナップでは「LX」と「RX」の間に位置づけられるSUVで、「ザ・プレミアム・オフローダー」が開発コンセプトとされる。
夜の首都高で「レクサスGX550“オーバートレイル+”」に試乗した。GXはレクサスのラインナップでは「LX」と「RX」の間に位置づけられるSUVで、「ザ・プレミアム・オフローダー」が開発コンセプトとされる。拡大
「レクサスGX」として国内で販売されるのは今回が初。グローバルでは3代目となり、「ランドクルーザー プラド」のレクサス版として知られてきた。
「レクサスGX」として国内で販売されるのは今回が初。グローバルでは3代目となり、「ランドクルーザー プラド」のレクサス版として知られてきた。拡大
水平基調のシンプルなデザインでまとめられたインストゥルメントパネル。14インチのディスプレイは低めに配置されており、オフロード走行時の視認性確保に余念がない。
水平基調のシンプルなデザインでまとめられたインストゥルメントパネル。14インチのディスプレイは低めに配置されており、オフロード走行時の視認性確保に余念がない。拡大
「レクサスGX」にも「レクサスLX」や「トヨタ・ランドクルーザー」で定評のあるGA-Fプラットフォームを採用。アプローチアングル26°、デパーチャーアングル23°、ランプブレークオーバーアングル24°を実現している。
「レクサスGX」にも「レクサスLX」や「トヨタ・ランドクルーザー」で定評のあるGA-Fプラットフォームを採用。アプローチアングル26°、デパーチャーアングル23°、ランプブレークオーバーアングル24°を実現している。拡大
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ランクル250のほうが断然ステキ

愛車のちょいワル特急こと「プジョー508」の隣に置かれたGXは、小山のように大きかった。なんてデカいんだ……。ランクル250もこんなにデカかったっけ? 508がお子さま用に思える。

エンジンをかける。音はガソリンエンジンのようだ。というか、後で調べたらレクサスにはディーゼルの設定がゼロ! 全モデルを通じて皆無! そうだったのね~。

レクサスGXは、ランクル250と比べると、確かにレクサスっぽい高級車になっていた。静かだし、乗り心地がとってもフラット。インテリアの高級感も違う。しかしまあ、それだけといえばそれだけで、まるで違うクルマとまではいかない。

ガソリンエンジンはスペック不明(不勉強)ながら、体感的にはランクル250の2.8リッター直4ディーゼルターボと大差なかった。正直「別にそんなに速くはないのね」と思いました。

後で調べたら、3.4リッターV6ツインターボで、最大トルクは650N・m。対するランクル250のディーゼルは500N・m。車両重量160kgの差を考えると、「加速はそんなに違わない」という私の体感は正しかったようである。

そんな感じで首都高・辰巳PAに乗り入れ、クルマをまじまじと眺めたが、あんまり魅力的には思えなかった。デザインは飾り気のないランクル250のほうが断然ステキ! 乗り味は、確かにランクル250より高級だけど、それほど差があるようには感じないし、逆にランクル250の持つワイルドさが薄らいだぶん、中途半端に思えた。

愛車のちょいワル特急こと「プジョー508」と「レクサスGX550“オーバートレイル+”」の2ショット。大きさの違いが如実にわかる。
愛車のちょいワル特急こと「プジョー508」と「レクサスGX550“オーバートレイル+”」の2ショット。大きさの違いが如実にわかる。拡大
愛車のちょいワル特急こと「プジョー508」の隣に置かれた「レクサスGX550“オーバートレイル+”」は小山のように大きく、508がまるでお子さま用に思える。
愛車のちょいワル特急こと「プジョー508」の隣に置かれた「レクサスGX550“オーバートレイル+”」は小山のように大きく、508がまるでお子さま用に思える。拡大
「レクサスGX550“オーバートレイル+”」は最高出力353PS、最大トルク650N・mの3.4リッターV6ツインターボを搭載。「ランクル250」にはディーゼルエンジンもラインナップされるが、レクサスにディーゼル車の設定はない。
「レクサスGX550“オーバートレイル+”」は最高出力353PS、最大トルク650N・mの3.4リッターV6ツインターボを搭載。「ランクル250」にはディーゼルエンジンもラインナップされるが、レクサスにディーゼル車の設定はない。拡大
「GX550“オーバートレイル+”」のボディーサイズは4970×2000×1925mmで、ホイールベースは2850mm。前後の電動式スタビライザーを独立制御し、路面追従性を向上させる「E-KDSS(Electronic-Kinetic Dynamic Suspension System)」を搭載する足まわりも同モデルの特徴だ。
「GX550“オーバートレイル+”」のボディーサイズは4970×2000×1925mmで、ホイールベースは2850mm。前後の電動式スタビライザーを独立制御し、路面追従性を向上させる「E-KDSS(Electronic-Kinetic Dynamic Suspension System)」を搭載する足まわりも同モデルの特徴だ。拡大

フェラーリ以外は300万円が限度

そんなわけで、当連載の首都高試乗史上、コーフン度は最低レベルに終わった。もう原稿書くのもやめようか、くらいに思った。

そんなGXをやっぱり取り上げることにしたのは、今ごろになって価格を調べ、大驚愕(きょうがく)したからである。

1195万円! ランクル250の倍以上やんけ~~~~~~~~~~っ!! なんでなんで? どうしてこんなに高いの? 

そもそも私は、フェラーリ(とランボルギーニ)を除けば、300万円以上のクルマを買ったことがない。フェラーリ以外は300万円が限度! と思っているのだ。

そりゃまぁ、レクサスGXみたいな人気モデルは、下取りが超高い(ヘタするとプレミアがつく?)ので決してソンではないのでしょう。市場経済における価値は、フェラーリみたいなものなのでしょう。それはわかりますが、それにしても高い! そんな高いクルマを争って買うなんて、世の中どうなってんだ!

長年デフレが続いた日本でも、ついに物価が上がり始めている。もうマヨネーズの値段は下がらないのである。東京のマンションの値段も下がらない。同じくクルマの値段も下がらない。それどころがどんどん上がる。

マヨネーズやマンションの値段が上がるのは理解できるが、クルマの値段がこんなに上がるのは、カーマニアとしてどうしても受け入れられない。「クルマは300万円以下だろ(フェラーリを除く)!」という固定観念が、骨の髄までしみついているので。収入も減る一方ですし。涙。

(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一)

テールゲートはガラス面のみの開閉も可能。荷室容量は後席使用時が1063リッター、後席を格納すると最大で2225リッターに拡大できる。「GX550“バージョンL”」は3列シートの7人乗りだが、「GX550“オーバートレイル+”」は2列シートの5人乗りとなる。
テールゲートはガラス面のみの開閉も可能。荷室容量は後席使用時が1063リッター、後席を格納すると最大で2225リッターに拡大できる。「GX550“バージョンL”」は3列シートの7人乗りだが、「GX550“オーバートレイル+”」は2列シートの5人乗りとなる。拡大
スクエアなシルエットや大きく張り出したフェンダーが印象的な「レクサスGX550“オーバートレイル+”」のサイドビュー。ホイールは前後とも18インチサイズとなる。
スクエアなシルエットや大きく張り出したフェンダーが印象的な「レクサスGX550“オーバートレイル+”」のサイドビュー。ホイールは前後とも18インチサイズとなる。拡大
2024年4月に発売された「ランドクルーザー“250”」。今回試乗した「レクサスGX」よりも、デザインは飾り気のないランクル250のほうが断然ステキ!
2024年4月に発売された「ランドクルーザー“250”」。今回試乗した「レクサスGX」よりも、デザインは飾り気のないランクル250のほうが断然ステキ!拡大
「レクサスGX550“オーバートレイル+”」の価格は1195万円。同じ5人乗りの「ランドクルーザー“250”GX」が520万円だから、価格はなんと2倍! でも、人気モデルだから下取りが超高いので決してソンではないのでしょう。
「レクサスGX550“オーバートレイル+”」の価格は1195万円。同じ5人乗りの「ランドクルーザー“250”GX」が520万円だから、価格はなんと2倍! でも、人気モデルだから下取りが超高いので決してソンではないのでしょう。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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