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第113回:ホンダデザインにささぐ鎮魂歌(後編) ―「Honda 0」と「アフィーラ」の断捨離で見えてくる未来―

2026.05.20 カーデザイン曼荼羅 渕野 健太郎清水 草一
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ソニー・ホンダモビリティの手になる第1号車……になる予定だった「アフィーラ1」。米国で予約受注まで開始されたが……。
ソニー・ホンダモビリティの手になる第1号車……になる予定だった「アフィーラ1」。米国で予約受注まで開始されたが……。拡大

「Honda 0」の計画縮小と「アフィーラ」の開発中止で、すっかりネガティブな印象がついてしまったホンダデザイン。彼らの未来に再生の曙光はあるのか? というか、そもそもホンダ車のデザインって本当に迷走しているの? カーデザインの専門家と考えた。

前編へ戻る)

ソニーとホンダが協業を発表し、新会社ソニー・ホンダモビリティの設立を発表したのが2022年3月。2025年1月にはついに「アフィーラ1」の受注開始にこぎ着けたのだが、その市販車がお客の手にわたることはなかった。
ソニーとホンダが協業を発表し、新会社ソニー・ホンダモビリティの設立を発表したのが2022年3月。2025年1月にはついに「アフィーラ1」の受注開始にこぎ着けたのだが、その市販車がお客の手にわたることはなかった。拡大
ほった「……なんか、ついこの間まで話題のクルマだったのに、早くも形を忘れかけていますよね」 
清水「こうして見ても、『ああ、こんな形のクルマだったっけなぁ』って感じだよ」
ほった「……なんか、ついこの間まで話題のクルマだったのに、早くも形を忘れかけていますよね」 
	清水「こうして見ても、『ああ、こんな形のクルマだったっけなぁ』って感じだよ」拡大
インテリアも、2020年登場の「ホンダe」から進化を遂げた印象はない。ダッシュボード全面をディスプレイにしたメルセデス・ベンツや、30インチ超のシアタースクリーンを搭載したBMWが発売済みの今日にあっては、これを世に問うてもインパクトはなかっただろう。
インテリアも、2020年登場の「ホンダe」から進化を遂げた印象はない。ダッシュボード全面をディスプレイにしたメルセデス・ベンツや、30インチ超のシアタースクリーンを搭載したBMWが発売済みの今日にあっては、これを世に問うてもインパクトはなかっただろう。拡大
アフィーラのフロントには、オーナーや周囲の人とのコミュニケーションの一環として、フロントマスクに文字が表示される機能が用意されていた。
アフィーラのフロントには、オーナーや周囲の人とのコミュニケーションの一環として、フロントマスクに文字が表示される機能が用意されていた。拡大
5代目日産シルビア(1988-1993年)
5代目日産シルビア(1988-1993年)拡大

もうアフィーラの形が思い出せない!

webCGほった(以下、ほった):Honda 0についての結論がおおむね出たところで、同じくプロジェクトがとん挫したアフィーラ(参照)についても総括しましょうか。ソニーとホンダという、夢のタッグによる電気自動車(BEV)だったわけですが。

渕野健太郎(以下、渕野):アフィーラは……皆さん、どうですか?

清水草一(以下、清水):遅すぎたとはいえ、お蔵入りは賢明な判断でしょう。デザイン的にも、どっこもカッコよくない!

ほった:特別なコンセプトも感じ取れなかったですしねぇ。

清水:0シリーズは、渕野さんがおっしゃったように「アートにしたかった」とか「とにかくビックリさせたかった」とか、そういう意図を明確に感じられたけど、アフィーラにはなんにも感じなかった。あのデザインはカラッポだったと思います。

ほった:徹底して凡庸でしたね。恐らくは、意図的にそうしたんでしょうけど。

清水:でも、どういう経緯でああいうデザインになったのか、全然わかんないよ。ひたすら「なんで?」って感じ。

ほった:ですね。具体的なクルマのデザインも、もうフロントに文字が出るってことくらいしか覚えてないし……。

渕野:そこまでですか(苦笑)。

ほった:渕野さんはいかがでした?

渕野:最初にこれの実車を見たときは、レトロフューチャー的な狙いがあるのかなと思いました。しっかりしたショルダーの反面、フェンダーを強調しない基本デザインは最近あまりやらないですね。またフロントまわりは「日産シルビア」(S13)などの1980年代あたりのバランスに近い印象がして。最近は、若い人の間でも“ヤングタイマー”がはやっているじゃないですか。だから、逆にこれがトレンドなのかな? 若い層にもアピールしようとしているのかな? なんて考えたり。

清水:そ、それはちょっと、いいように解釈しすぎでは?

渕野:いやいや。これはいい意味だけではないんです。自分としては、そういうレトロフューチャーなイメージとソニーのイメージが、リンクしていない気がしていたので。皆、もっと先進的なものを期待してたんじゃないかと。機能的な部分も、あんまり感じられなかったですし。

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ここで止めたのは英断だった?

渕野:パッケージはHonda 0と共用だったんですかね?

ほった:そうじゃないですかね。さすがに車体をバラバラに開発するほど、ホンダも無謀ではなかったでしょう。

渕野:それでやりたいことができなかったのかなぁ。

ほった:いや……設計要件とかの問題だったのかな? これ。

清水:「Honda 0サルーン」のデザインがアフィーラで、アフィーラが0サルーンだったら、まだよかったんだけど。

渕野:そうですよね。そんな気はしました。

清水:それにしても、ホンダとソニーといえば昭和の日本の夢ですよ、夢と希望。そんな夢のコラボが、出た瞬間から「なんだこりゃ!」だった。んで、発売ギリギリで中止になった。まさに日本の夢が砕け散った!

渕野:アメリカでは、販社の巨大な施設がオープンしたばっかりでしたよね。

清水:そこまでたどり着いていながら中止とは、思い切りましたよね。でも、ここで思いとどまってくれたから、傷が小さくて済んだ。それは間違いない。

ほった:傷、ちっちゃくないですよ。血がドバドバです(その1その2)。

清水:いやでも、無理やり発売しちゃうよりはさ。事前予約した方へのデポジットは全額返金するってことだけど、一体何人が予約してたのかな? 多くても100人くらい? 傷は浅いよ!

渕野:SUVもつくってましたよね。そっちもなんだか。

清水:これ見ると「トヨタ・クラウン クロスオーバー」が思い浮かぶけど、これが現代の「ウォークマン」だったのかと思うと残念すぎる(泣)。

渕野:ホンダとソニーって、自分の就活の第1、第2希望だったんですよ。どっちも最終面接までいったけれど落とされて(笑)、留年して前の会社に入ったんです。

清水&ほった:ええー!

渕野:当時、ホンダとソニーはプロダクトデザイン界のトップ2みたいな存在でした。誰が見ても革新的だったんですよ。ソニー・ホンダモビリティは、その2社のコラボってことですごく期待していたんですが……。こうした協業って、やっぱり難しいんでしょうね。

「アフィーラ1」(上)と「Honda 0サルーン」(下)。 
清水「これ、Honda 0のクルマが上で、ソニー・ホンダモビリティのクルマが下だったほうが、まだブランドイメージとプロダクトの乖離(かいり)が小さかったのでは?」
「アフィーラ1」(上)と「Honda 0サルーン」(下)。 
	清水「これ、Honda 0のクルマが上で、ソニー・ホンダモビリティのクルマが下だったほうが、まだブランドイメージとプロダクトの乖離(かいり)が小さかったのでは?」拡大
米カリフォルニア州フリーモントにオープンした「AFEELA Studio & Delivery Hub」。「アフィーラ」専用の納車拠点として、2026年3月14日に開設されたばかりだった。
米カリフォルニア州フリーモントにオープンした「AFEELA Studio & Delivery Hub」。「アフィーラ」専用の納車拠点として、2026年3月14日に開設されたばかりだった。拡大
「CES2026」で発表されたSUVモデルのプロトタイプ「アフィーラ プロトタイプ2026」。基本的なモチーフは「アフィーラ1」と一緒で、よくも悪くも、とらえどころのないイメージをしていた。
「CES2026」で発表されたSUVモデルのプロトタイプ「アフィーラ プロトタイプ2026」。基本的なモチーフは「アフィーラ1」と一緒で、よくも悪くも、とらえどころのないイメージをしていた。拡大
「アフィーラ1」は日本でも一般向けに展示される機会があった。2026年3月20日から29日までは、東京・銀座の「G735ギャラリー」で、F1マシン「ホンダ272」とのコラボ展示も行われたが、会期の途中で展示は中止されてしまった。3月25日に、アフィーラの開発・販売計画中止が発表されたためだ。
ほった「それにしても、この展示はなんかアフィーラのイメージと違わなくないですか?」 
清水「そういうところも含めて、ソニー・ホンダモビリティは迷走していたんだよ」
「アフィーラ1」は日本でも一般向けに展示される機会があった。2026年3月20日から29日までは、東京・銀座の「G735ギャラリー」で、F1マシン「ホンダ272」とのコラボ展示も行われたが、会期の途中で展示は中止されてしまった。3月25日に、アフィーラの開発・販売計画中止が発表されたためだ。
	ほった「それにしても、この展示はなんかアフィーラのイメージと違わなくないですか?」 
	清水「そういうところも含めて、ソニー・ホンダモビリティは迷走していたんだよ」拡大

ホンダ内の統治能力が落ちてきている?

ほった:確かに、ホンダはF1でもアストンマーティンとのコラボがうまくいってませんよね。自主独立のイメージが強いメーカーだし、社風なのかなぁ。

渕野:ホンダというと本田宗一郎さんのエピソードもあって、情熱的でがむしゃらなイメージもありますよね。ただ、今はレースにしても市販車の開発にしても、「徹夜で頑張りました!」とかが美徳って時代ではないでしょうし……。それで最近は、うまく回ってないのかな?

清水:徹夜禁止がホンダの障害!?

渕野:まぁ今のはただの思いつきですけど(笑)。ただホンダに関しては、最近、「H」マークやロゴのデザインとか、使い方も変えたじゃないですか。

ほった:Honda 0と一緒に発表した新しいHマークを、四輪事業全体で使うことにしたんですよね(その1その2)。二輪でも、一般的な機種とフラッグシップモデルと電動モデルとでマークを使い分けるとか言い出して(参照)、まぁフクザツなことに(汗)。

渕野:Hマークの下に添えられる「Honda」のロゴも変わりましたよね。だから、「あれ、それじゃあの赤い企業ロゴも変えるのかな?」って、そのときは思ったんです(掲載写真参照)。

ホンダのHPにも載っている話なのですが、「HONDA」のあの赤いロゴって、実は本田宗一郎さんのいわくつきなんです。ホンダは「S500」で、日本の乗用車で初めて赤いボディーカラーを採用したんですけど、最初はお役所に「赤は消防車の色だから認められない!」って言われたらしいんですね。それを宗一郎さんが粘って、赤を認めさせたっていう。そういうところから、ホンダはコーポレートカラーも赤にしているんですよ。今回は、ついにそれとも決別するのかと思ったんですが……。

ほった:なんか、新しいロゴと古いロゴがそこここで併用される感じですよね。細字の「Honda」ロゴは、新しいHマークとセットで使われたり、四輪・二輪の電動車のバッジにも使われているみたいだけど……。これ、実際にはちゃんとルールがあるんですよね? どのロゴ、どのマークを何に使うのか、そもそもそれが全部で何種類あるのか、誰かに図解してほしい(笑)。

渕野:そうなんですよね。そのへんがわかりづらいというか……。正直、ホンダの統治能力が落ちてきてるんじゃないかと心配になりました。やっぱり問題は経営なんでしょうか?

ほった:ううーん……。

2026年シーズンにパワーユニットのサプライヤーとしてF1世界選手権に正式に復帰したホンダ。しかし、アストンマーティンとの共闘は今のところうまくいっておらず、完走できたら大喜び……という状況が続いている。
2026年シーズンにパワーユニットのサプライヤーとしてF1世界選手権に正式に復帰したホンダ。しかし、アストンマーティンとの共闘は今のところうまくいっておらず、完走できたら大喜び……という状況が続いている。拡大
F1マシンに描かれる、新デザインの「H」マーク(左)。よく見ると、“H”の下のロゴも従来のもの(右)から変更されている。かつては企業ロゴの「HONDA」の文字が描かれていたのだが、電動四輪車などに用いられる「Honda」のロゴになっているのだ。
F1マシンに描かれる、新デザインの「H」マーク(左)。よく見ると、“H”の下のロゴも従来のもの(右)から変更されている。かつては企業ロゴの「HONDA」の文字が描かれていたのだが、電動四輪車などに用いられる「Honda」のロゴになっているのだ。拡大
ちなみに、新しい「H」マークは四輪車のシンボルという扱いだが、細字の「Honda」ロゴは、四輪・二輪を問わず電動車に用いられるという。……というか、ホンダはこの手のロゴやマーク、エンブレムが多すぎません?
ちなみに、新しい「H」マークは四輪車のシンボルという扱いだが、細字の「Honda」ロゴは、四輪・二輪を問わず電動車に用いられるという。……というか、ホンダはこの手のロゴやマーク、エンブレムが多すぎません?拡大
こちらは既存の「HONDA」ロゴ。文字の色は「ホンダレッド」と呼ばれるコーポレートカラーで、それは日本の乗用車で初めて赤いボディーカラーを採用した「S500」に由来するものだった。
こちらは既存の「HONDA」ロゴ。文字の色は「ホンダレッド」と呼ばれるコーポレートカラーで、それは日本の乗用車で初めて赤いボディーカラーを採用した「S500」に由来するものだった。拡大
2026年5月14日の決算説明会/戦略説明会「2026ビジネスアップデート」の様子。どうやら、赤い「HONDA」の企業ロゴは今後も使用される様子だ。
2026年5月14日の決算説明会/戦略説明会「2026ビジネスアップデート」の様子。どうやら、赤い「HONDA」の企業ロゴは今後も使用される様子だ。拡大

ホンダ自体が沈下しているわけではない

ほった:最近のご世間さまの論調を見ていると、Honda 0とアフィーラのせいでホンダの全部が沈下しているような雰囲気ですけど、個人的には、それはそれでちょっと違う気がするんですよ。例えばですけど、皆さん新型「CR-V」のデザインはどう思います?

渕野:現行型が出たのは、グローバルではだいぶ前ですよね。北米では3年半ぐらい前かな。

清水:あのデザインは全然悪くないよ。そんなによくもないけど。

ほった:ありがとうございます。そんな感じで、これがけっこう評判がよさそうなんです。傑作じゃないけど実購入者のウケがいいって風に。ワタシも「ボルボXC90」っぽいというか、要は渕野さんが言うところの「コスパのいいデザイン」だと思いました。

清水:そのへんはちゃんとしてるよ。なにせ世界で2番目に売れてる乗用車だしね。「トヨタRAV4」に次いで。

渕野:前のCR-Vは、ボディーをグッと絞っていたせいで小さく見えましたが、現行型は北米でも立派に見えるようになりましたから。そもそもホンダって、いい意味で可もなく不可もなく、生活に根づいた存在だから、とりわけ主張するようなデザインは求められていなかったんだと思います。

ほった:ですよね。グローバルで見たら、むしろホンダはこういう当たり障りのないクルマが多いわけです。皆さん大好きなミニマルデザインがすべてでもないし、アフィーラやHonda 0みたいなのがデザインの代表例ってわけでもなくて。

渕野:ひょっとしたら、日本市場では特にミニマルなデザインを強調しているのかもしれません。アメリカとは受けるデザインが違いますから。

清水:そのへんはマーケットに合わせて調整するもんだからね。個人的には、日本では断然「ヴェゼル」だよ。CR-Vよりヴェゼルのほうがミニマルで美しく感じる。でも、そう考えると直近のホンダデザインで大外ししたのって、0シリーズとアフィーラだけな気もしてきた。

ほった:とにかく、あんまり悲観的にとらえすぎるのも、どうかと思いますよということで。

累計販売台数は1500万台を突破! 今や世界で一番売れているホンダ車といえば、ミドルサイズSUVの「CR-V」だ。
累計販売台数は1500万台を突破! 今や世界で一番売れているホンダ車といえば、ミドルサイズSUVの「CR-V」だ。拡大
有識者の間で評価の高いシンプルデザインのモデルや、「Honda 0」や「アフィーラ」のような尖(とが)ったモデルが目を引くホンダだが、実際には、こうしたオーソドックスなデザインの車種が世界的に支持され、販売を支えているのだ。
有識者の間で評価の高いシンプルデザインのモデルや、「Honda 0」や「アフィーラ」のような尖(とが)ったモデルが目を引くホンダだが、実際には、こうしたオーソドックスなデザインの車種が世界的に支持され、販売を支えているのだ。拡大
ホンダの「CR-V」(上)と、北欧のプレミアムSUV「ボルボXC90」(下)の比較。 
ほった「存在感とか、全然負けてないでしょう?」 
清水「こうして見ると、確かにCR-Vのデザインは“コスパがいい”のかも」
ホンダの「CR-V」(上)と、北欧のプレミアムSUV「ボルボXC90」(下)の比較。 
	ほった「存在感とか、全然負けてないでしょう?」 
	清水「こうして見ると、確かにCR-Vのデザインは“コスパがいい”のかも」拡大
日本で安定した人気を保っているコンパクトSUV「ヴェゼル」。同車のほかにも、販売台数ナンバーワンの「N-BOX」や、国産ミニバンで唯一の爽やか系「ステップワゴン」なども健在なのだから、一部の取り組みのつまずきをして「ホンダデザインはおしまいだ!」というのは、どうかと思う。
日本で安定した人気を保っているコンパクトSUV「ヴェゼル」。同車のほかにも、販売台数ナンバーワンの「N-BOX」や、国産ミニバンで唯一の爽やか系「ステップワゴン」なども健在なのだから、一部の取り組みのつまずきをして「ホンダデザインはおしまいだ!」というのは、どうかと思う。拡大

BEVの開発はかくもムズカシイ……

清水:ただ、いちばん気合を入れていたはずのBEVのデザインが全般にコケたというのは事実だよね。

ほった:デザインというか、BEVシフト自体がつまずいたって感じですが。

渕野:でも、確かにHonda 0の2車種とアフィーラは終わったけれど、「N-VAN e:」に「N-ONE e:」に「インサイト」に「スーパーONE」にと、ホンダは立て続けにBEVを出してきてますよね。今でも割と、BEVを本気でやりたいんじゃないかな。日本市場も含めて。

清水:ただ、インサイトのバッテリー容量や航続距離を見ると、トヨタや日産に性能面で大差をつけられてますよ。技術面は大丈夫なのかな?

渕野:そういえば、Honda 0はそのあたりのコンセプトも疑問でしたね。あれ、バッテリーが薄くて小さいのがひとつの特徴だったじゃないですか。それでも「長く走れます!」っていうんだったら感心しますけど、ホンダの説明は「バッテリーを薄くしたいので、航続距離は割り切りました」でしたからね(笑)。そりゃそうでしょうよと。そこにイノベーションはないわけです。

清水:アフィーラも、BEVとしての性能とかスゴい自動運転技術とかじゃなくて、「車内エンターテインメントで戦います」って話だったし。

渕野:前にほったさんも言ってたけど(参照)、スマホや「Nintendo Switch」を持ち歩いていれば済む話ですからね、そんなの。

ほった:とはいえ、移動中のエンタメ消費がひとつの大きな商圏になるんじゃないかって話は、今でもありますから。こないだ取材した某ドイツの高級セダンにも、デカいリアモニターが付いてましたよ。

清水:でもそれは、完全自動運転が普及した後の、はるか未来の話でしょ。

渕野:まあBEVという商品が、ガソリン車と比べて他社製品と差別化しづらいのは事実ですからね。なにを売りにするかが非常に難しくて、みんな試行錯誤しているのでしょう。

ほった:なんか最後は、テーマがカーデザインから脱線しちゃいましたね。

清水:いいじゃない、たまには。とにかく0シリーズとアフィーラを断捨離したことで、ホンダデザインの未来は明るくなった気がしますよ。ワタシは。

ほった:さっき話題に出たような、生活に根づいた人が中心のホンダデザインに、立ち戻れるといいですね。

(語り:渕野健太郎/文=清水草一/写真=本田技研工業、ソニー・ホンダモビリティ、webCG/編集=堀田剛資)

2026年5月に行われた、同年3月期の決算説明会および戦略説明会より。事業のスピードは減速させたとはいえ、ホンダはBEVをあきらめたわけではない。今後も新型車の開発・導入を進めていく予定だ。
2026年5月に行われた、同年3月期の決算説明会および戦略説明会より。事業のスピードは減速させたとはいえ、ホンダはBEVをあきらめたわけではない。今後も新型車の開発・導入を進めていく予定だ。拡大
現状、ホンダで最も新しく上級のBEVといえば、数量限定で受注が開始された新型「インサイト」だが、その実は2024年6月に中国で発売された「e:NS2」である。最新の「トヨタbZ4X」や「スバル・ソルテラ」、日産の「アリア」「リーフ」と比べると、性能面で水をあけられているのは否めない。
現状、ホンダで最も新しく上級のBEVといえば、数量限定で受注が開始された新型「インサイト」だが、その実は2024年6月に中国で発売された「e:NS2」である。最新の「トヨタbZ4X」や「スバル・ソルテラ」、日産の「アリア」「リーフ」と比べると、性能面で水をあけられているのは否めない。拡大
「Thin, Light and Wise(薄い、軽い、賢い)」という開発アプローチを掲げていた「Honda 0」シリーズ。「航続距離を追求して重厚長大なBEVをつくるのではなく、バッテリー搭載量を抑えて、賢くスマートなBEVをつくりましょう」という意図で、実際、プロダクトの航続距離は、このクラスのBEVとしては控えめな300マイル(約482km)を想定していた。
「Thin, Light and Wise(薄い、軽い、賢い)」という開発アプローチを掲げていた「Honda 0」シリーズ。「航続距離を追求して重厚長大なBEVをつくるのではなく、バッテリー搭載量を抑えて、賢くスマートなBEVをつくりましょう」という意図で、実際、プロダクトの航続距離は、このクラスのBEVとしては控えめな300マイル(約482km)を想定していた。拡大
移動中に提供される、サービスやコンテンツなどを手がけるクリエイターとの協業や、没入感を高める音響機器の開発などに注力していた「アフィーラ」だが……。 
清水「そういうのが商売として成り立つようになるのは、完全自動運転が現実味を帯びてからじゃないかな」
移動中に提供される、サービスやコンテンツなどを手がけるクリエイターとの協業や、没入感を高める音響機器の開発などに注力していた「アフィーラ」だが……。 
	清水「そういうのが商売として成り立つようになるのは、完全自動運転が現実味を帯びてからじゃないかな」拡大
2026年5月の決算説明会/戦略説明会で発表された、現在開発中のホンダのセダンおよびアキュラのSUV。これからもホンダデザインには要注目である。
2026年5月の決算説明会/戦略説明会で発表された、現在開発中のホンダのセダンおよびアキュラのSUV。これからもホンダデザインには要注目である。拡大
渕野 健太郎

渕野 健太郎

プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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