第658回:いま買って満足できるお得な輸入Cセグメント中古車5選
2021.10.04 エディターから一言![]() |
もしも新車で国産Bセグメントモデルの購入を検討するのであれば、その予算で輸入Cセグメントの中古車が余裕で狙える。ブランドに歴史や伝統があり、特徴あるデザインや走りが楽しめる個性派が輸入車には勢ぞろい。いま買ってお得に楽しめるCセグ中古車を5台紹介する。
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注目すべきは新しめの中古車
自動車メディアにはしばしば、それまで1100万円ぐらいの価格であった車種の新型車が900万円ぐらいに設定された際、「今度の○×△はリーズナブルだ!」的なフレーズを用いた記事が出てくる。
この場合の900万円という価格が、英語で言うReasonable(Expensiveのひとつ下。「それほど高くない」「まあまあの」との意)であることを、頭では理解できる。だが、あくまで筆者個人の胸の内には「900万円か……買えねえな」という絶望と、「900万円がリーズナブルってどういう了見だよバカヤロー!」との感情が渦巻くことになる。
新車価格が900万円というと、おおむねEセグメントぐらいの輸入車が当てはまると思うが、筆者のごときド庶民が狙える輸入車といえば、“Dセグメントの中古車”か“Cセグメントの新車”あたりが現実的な線となろう。
さらに、Cセグのなかでも新車ではなく「新しめの中古車」でよしとするならば、庶民にとっての現実度はグググッと増す。具体的には「トヨタ・ヤリス クロス ハイブリッド」の新車をフルオプションで買うのとほぼ似たような予算感で、新車の香りが残っていそうな走行1万km台ぐらいの輸入Cセグがイケてしまうのである。
いま買ってお得に満足できる輸入Cセグモデルの中古車といえば、まずはなんといっても現行型「メルセデス・ベンツAクラス」であろうか。
スタイリッシュな現行モデルが狙える
初代および2代目のAクラスは個人的には「微妙……」と思っていたが、2012年に登場した3代目でAクラスは「運動神経抜群のイケメン」に大変身し、2018年登場の現行4代目は、その運動能力とモテそうなビジュアルはさらに高次なものへと進化した。相手にとって不足はないというか、庶民にとっては「ちょうどいい“ちょっと上の選択肢”」である。
仮に「AMG E53 4MATIC+」などを買ったとしても庶民は置き場に困る。あばら家の野っぱら駐車場や、アパート前の砂利を敷きつめた月決め駐車場にメルセデスAMGを止めるわけにもいくまい? つまり、それに似合うライフスタイルを持っていないのである。だがAクラスなら、なんとかなる(たぶん)。
ということで現行Aクラスの走行2万km台ぐらいまでの中古車相場を調べると……車両価格ではなく「支払い総額」で300万~350万円ほどを見ておけば、2018年式から2019年式「A180スタイル」のレーダーセーフティーパッケージ付きが狙えることがわかる。
釈迦(しゃか)に説法ではあろうが、A180スタイルというのは、過去のプジョーにおける「スタイル」のごとき廉価グレードではなく、逆に上級のグレードである。またこの予算帯で、さらに上級のパッケージオプションである「AMGライン」を装着している走行1万km台のA180スタイルを見つけることも十分に可能だ。
大量販売車種であるため「将来的に値上がりするかも!」みたいな“お得”はたぶんないが、購入してからの数年間を大変シアワセに生きることができるという意味で、総額300万円台前半の現行型メルセデス・ベンツAクラスの中古車は「お得である!」と判定したい。
しかしながら総額300万~350万円というのは「高っ!」と感じる方もいらっしゃるだろうし、筆者も、ごく正直なところを申し上げれば「もうひと声お安いと、家計的にはずいぶん助かるのだが……」と思っている。
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これぞCセグメントモデルの代表格
「さすがに300万円オーバーの予算はちょっと……」という場合には、「フォルクスワーゲン・ゴルフ」こそが素晴らしい候補となるだろう。もちろん、先日登場した新型のほうではなく先代、いわゆるゴルフ7の中古車である。そのなかでもゴルフ7.5とカーガイの間では呼ばれている2017年5月以降の後期型を選ぶのが、基本的には正解となるはずだ。
通称ゴルフ7.5とはヘッドランプがHIDからLEDになり、リアウインカーが流れるタイプとなり、さらにはACCの性能も向上。「TSIハイライン」と「GTI」には12.3インチの「アクティブインフォディスプレイ」がオプション設定され、純正ナビ「ディスカバープロ」も8インチから9.2インチに拡大された──という世代である。
そんなゴルフ7.5の中古車は今、走行1万km台の「TSIコンフォートライン」が総額160万~190万円程度であり、TSIコンフォートラインにはオプション設定がなかった前述のアクティブインフォディスプレイなどを追加した特別仕様車「TSIコンフォートライン テックエディション」でも、走行2万km台ぐらいの物件が総額190万~200万円ぐらい。
高いお金を出してキラキラしたゴルフ8の新車を買うのももちろんご自由だが、筆者としては「ゴルフって、そもそもこのぐらいで十分じゃね?」と心の底から思っている。
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中古車ならモデル末期でも気にならない?
メルセデスのAクラスもフォルクスワーゲンの(先代)ゴルフも素晴らしいCセグモデルであることは間違いないが、とはいえ「あまりにメジャーすぎる」と感じる方もそれなりに多いだろう。お気持ちはわかる。その場合には、さまざまな候補はあるが「プジョー308」の中古車がよろしいのではないかと思う。
ご承知のとおり308はすでに新型が発表されており、2022年には日本市場にも新型の308が導入されるはず。つまり今、(日本では)現行型の308はモデルライフの“ド末期”ということになる。
そういったド末期のクルマは一般的に「熟成されている!」などと褒めそやされることも多いわけだが、「じゃあオマエ、自分のカネを出してその新車を買うのか? 今このタイミングで?」と問い詰められたなら、筆者の場合は返答に困る。まぁ実際のところ、たぶん買わないだろう。だが“中古車”であれば話は別だ。
プジョー308の、なかでも特に素晴らしいディーゼルターボエンジンを搭載する「BlueHDi」系は、「アリュールBlueHDi」の場合で総額150万~220万円ほど、「GT BlueHDi」の場合で総額220万~250万円ぐらいというのが現在の相場。超激安ではないが、程よくお安い実力派Cセグとして、近いうちに型遅れとなることを承知のうえで買いたくなる選択肢である。
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オシャレなシューティングブレークも選択肢に
とはいえもう少しミーハーな……と言っては言葉が悪いか、ええと「華のあるクルマ」に乗りたいと考える人もいらっしゃろう。お気持ちはわかる。
その場合には「MINIクラブマン」がちょうどいいのではないかと思う筆者である。2007年に登場した第2世代のMINIをベースとする初代クラブマンは、その「ほんのちょっとだけ長い」というホイールベースと全長が果てしなくおしゃれだったわけだが、「ほんのちょっと」しか長くないため、シューティングブレークとしての実用性には若干の疑問もあった(おしゃれだから別にいいんですけどね)。
しかし2015年に登場した2代目MINIクラブマンは、その全長を初代より290mmほどグッと延ばしてつくられたシューティングブレークであるため、「おしゃれ感」という部分ではもしかしたら初代に分があるかもしれないが、こと実用性という部分では明らかに使いでのあるシューティングブレークへと進化した。
そんな2代目MINIクラブマンの中古車相場は、走行3万km台までの個体に限った場合で総額200万~560万円と幅広いが、これはハイパフォーマンスモデル「ジョンクーパーワークス」も含んでの数字なので、2016年式ぐらいの「クーパー」または「クーパーS」でよしとするならば、注目すべき価格帯は総額200万~250万円付近となる。ディーゼルや4WDなど、バリエーションが豊富なのもMINIクラブマンに注目する理由だ。
「トヨタ・ライズ」の新車を買うのも決して悪くはないと思うものの、筆者であれば、それとほぼ同予算でMINIクラブマンの低走行中古車を買うだろう。まぁハッキリ言っちゃえば「いいもの感」がまったく違いますからね。
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貴重なCセグFRモデルはいかが?
「いま買ってお得な輸入Cセグ中古車5選」といえば、おおむね以上のとおりであるだろうか──などと思いながら数えてみたら4車種しか挙げていなかったため、もう1車種足してみよう。ええと、「BMW 1シリーズ」の先代モデルはなかなかお買い得なのではないかと思う。
といっても2015年4月までの前期型は「おもしろフェイス」なのでアレだが、2015年5月のマイナーチェンジでシュッとした顔立ちに生まれ変わった後期型は、特に2017年8月以降のインテリアデザインがよりモダンになった世代は、なかなかよろしい。
BMW 1シリーズとしては「最後のFRレイアウト」ということで、操縦フィールは当然良好であると同時に、数年後に手放す際にも「最後のFRだから」ということで、それなりの付加価値があると評価される可能性も高いからだ。
そんな2017年8月以降のイケメン先代1シリーズは、走行3万km台までの物件が総額170万~200万円といったイメージ。威張れるクルマでも特に速いクルマでもないが(もちろん最高出力340PSの3リッター直6ターボを搭載する「M140i」とかは速いですけど)、この値段であれだけ素晴らしい操縦フィールが堪能できるのであれば、そんなことはどうでもいいのである。
(文=玉川ニコ/写真=メルセデス・ベンツ日本、トヨタ自動車、フォルクスワーゲン グループ ジャパン、グループPSAジャパン、BMWジャパン/編集=櫻井健一)

玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
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