スバルは「スバリスト」 他ブランドの熱狂的ファンは世界でどのように呼ばれているのか?
2024.12.04 デイリーコラムスバリストは紳士たれ
う~む。スバリスト以外にどんなのがあるか? う~む。全然知らない。そもそもどうしてスバル愛好家のことをスバリストと呼ぶのか? ググってみた。すると、『スバコミ』というウェブサイトの「SUBARUトリビア」というコーナーの「スバリスト」の項にこう書いてあった。
「この言葉が最初に使われたのは、SUBARU発行の情報誌『カートピア』の1975年31号。東京農業大学名誉教授の後閑暢夫さん(当時は助教授)が「スバルは紳士の乗り物」という投稿でこの呼称を提唱したのが始まりでした」
後閑さんの投稿の内容を要約するとこんな感じだ。自分はスバルを常々「知識人のクルマ」「紳士のクルマ」だと主張している。スバルのハンドルを握るときは、「紳士的」でないことに多くの原因があるらしい自動車事故を起こさないようにし、スバルをして道路のエリートとして際立たせたいと念じている。ついては全国のスバリスト諸兄姉、この趣旨にご賛同されんことを。
この投稿の最後のほうに、「全国のスバリスト諸兄姉(スバルオーナーに呼称を提唱します)」とある。トヨタのクルマにもあった「イスト(ist)」は、「~する人」という意味の接尾辞で、吉永小百合のファンをサユリスト、栗原小巻のファンはコマキストと呼ぶようになったのがいつかは不明ながら、1975年ごろではあるまいか。サユリストを自称するタモリの上京がウィキペディアによると1975年。時代はコミュニストの次の、スタイリストとかアーティストを求めていた。かもしれない。
ともかく、スバリストには、われ、道路のエリート、紳士たらん、という思いが込められていたのだ。
拡大 |
アルフィスタとフェラリスタ
一方、アメリカのスバリストは愛車のことを「Subie(スービー)」、または「Scooby(スクービー)」と呼んで、家族のようにかわいがっているという。スービーという愛称はスーザンをスージーと呼ぶみたいなことだろうから、特に意味はないのではあるまいか(あったら、すいません)。スバちゃん、とかスバッチ、というようなニュアンス。でもそれはスバル車のことで、スバル愛好家のことではない。そっちはフツウに「スバルファン」「スバルエンスージアスト」「スバルマニア」と呼ぶみたいで、スバリストはいまのところ、JDM(日本国内専用)のようである。それはでも、高邁(こうまい)な理想込みで、アメリカでも使われるようになる可能性を否定するものではない。
余談ながら、『スバル・ドライブ』というスバル・オブ・アメリカのサイトの、「スービー・ニュース」と題した記事のなかに、コリン・マクレーが持っていた1998年型「インプレッサ22B STi」(日本では「22B-STiバージョン」)が2023年8月、シルバーストーンで開かれたオークションに出品され、48万0500英ポンド(60万6042米ドル)で競り落とされた、というのがあった。ざっと9200万円! だれが落としたかは不明ながら、これを買ったスバリストは本物の紳士かも……。
アルファ・ロメオの愛好家を「アルフィスタ」、フェラーリの愛好家を「フェラリスタ」と呼ぶけれど、これらは英語のアルフィスト、フェラリストのイタリア語変換にすぎない。すぎないけれど、ピアニスタとかデンティスタとかアーティスタみたいにアルファする人、フェラーリする人というのだから、そのブランドへの熱狂、集中具合にはただならぬものがある。マセラティスタやランボルギーニスタがあってもよい気もするけれど、寡聞にして筆者は目にしたことがない(マセラティクラブの会長でもある越湖信一さんが「マセラティスタ」と使っていたのを除く)。フィアッティスタという言葉を聞いたことがないのは、フィアットがやっぱり大衆車だから、だろう。
ポルシェビキはメンシェビキ
フランスは「シトロエニスト」にトドメをさす。クルマのブランド+イストだけで、ああ、そういう人ですね、と思わせるには、そのクルマ、ブランドによほど個性がなければならない。スバリスト、アルフィスタ、フェラリスタ、シトロエニストというだけで、人物像がなんとなく浮かんでくる。
では、ポルシェは? ポルシェの愛好家を「ポルシェビキ」と呼んだのは、筆者の知る限り、『CG』創刊編集長の小林彰太郎さんだと思う。もちろんこれはロシア革命でレーニンが率いた多数派、「ボルシェビキ」と「ポルシェびいき」をかけたシャレで、完全JDM。国内でしか通用しない。そもそもポルシェのファンの大多数はソーシャリストではないだろうから、その国内でもこの呼称を使う人はメンシェビキ(少数派)。ポルシェ好きのヘンタイも思い浮かばない。
ポルシェの愛称というと、なじみ深いのは「さんごろう」である。「さんごろうさん」、とさん付けで呼ぶ人もいる。「ポルシェ356」はそれほど愛されている。「911」の「ナロー」とか「ビッグバンパー」なんてのはどっちかというと分類で、愛称とはいえないのではあるまいか。ポルシェ愛好家、ポルシェストは世界中にたくさんいるのに、ある種の知性派というか、ポルシェも好きだけど、ほかにも趣味とか仕事を趣味のようにしているとか、そういうタイプの人々がオーナーのように思われる。だから、なのかもしれない。オーナーを煩わせない信頼性こそ、ポルシェなのだからして。
(文=今尾直樹/写真=スバル、ステランティス、フェラーリ、ポルシェ/編集=藤沢 勝)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
-
「スバルBRZ STI SportタイプRA」登場 500万円~の価格妥当性を探るNEW 2025.11.26 300台限定で販売される「スバルBRZ STI SportタイプRA」はベースモデルよりも120万円ほど高く、お値段は約500万円にも達する。もちろん数多くのチューニングの対価なわけだが、絶対的にはかなりの高額車へと進化している。果たしてその価格は妥当なのだろうか。
-
2025年の一押しはコレ! 清水草一の私的カー・オブ・ザ・イヤー 2025.11.24 この一年間で発売されたクルマのなかで、われわれが本当に買うべきはどれなのか? 「2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤー」の正式発表に先駆けて、清水草一が私的ベストバイを報告する!
-
みんなが楽しめる乗り物大博覧会! 「ジャパンモビリティショー2025」を振り返る 2025.11.21 モビリティーの可能性を広く発信し、11日の会期を終えた「ジャパンモビリティショー2025」。お台場の地に100万の人を呼んだ今回の“乗り物大博覧会”は、長年にわたり日本の自動車ショーを観察してきた者の目にどう映ったのか? webCG編集部員が語る。
-
「アルファ・ロメオ・ジュニア」は名門ブランド再興の立役者になれるのか? 2025.11.20 2025年6月24日に日本導入が発表されたアルファ・ロメオの新型コンパクトSUV「ジュニア」。同ブランド初のBセグメントSUVとして期待されたニューモデルは、現在、日本市場でどのような評価を得ているのか。あらためて確認してみたい。
-
「レクサスLSコンセプト」にはなぜタイヤが6つ必要なのか 2025.11.19 ジャパンモビリティショー2025に展示された「レクサスLSコンセプト」は、「次のLSはミニバンになっちゃうの?」と人々を驚かせると同時に、リア4輪の6輪化でも話題を振りまいた。次世代のレクサスのフラッグシップが6輪を必要とするのはなぜだろうか。
-
NEW
第855回:タフ&ラグジュアリーを体現 「ディフェンダー」が集う“非日常”の週末
2025.11.26エディターから一言「ディフェンダー」のオーナーとファンが集う祭典「DESTINATION DEFENDER」。非日常的なオフロード走行体験や、オーナー同士の絆を深めるアクティビティーなど、ブランドの哲学「タフ&ラグジュアリー」を体現したイベントを報告する。 -
NEW
「スバルBRZ STI SportタイプRA」登場 500万円~の価格妥当性を探る
2025.11.26デイリーコラム300台限定で販売される「スバルBRZ STI SportタイプRA」はベースモデルよりも120万円ほど高く、お値段は約500万円にも達する。もちろん数多くのチューニングの対価なわけだが、絶対的にはかなりの高額車へと進化している。果たしてその価格は妥当なのだろうか。 -
NEW
「AOG湘南里帰りミーティング2025」の会場より
2025.11.26画像・写真「AOG湘南里帰りミーティング2025」の様子を写真でリポート。「AUTECH」仕様の新型「日産エルグランド」のデザイン公開など、サプライズも用意されていたイベントの様子を、会場を飾ったNISMOやAUTECHのクルマとともに紹介する。 -
NEW
第93回:ジャパンモビリティショー大総括!(その2) ―激論! 2025年の最優秀コンセプトカーはどれだ?―
2025.11.26カーデザイン曼荼羅盛況に終わった「ジャパンモビリティショー2025」を、デザイン視点で大総括! 会場を彩った百花繚乱のショーカーのなかで、「カーデザイン曼荼羅」の面々が思うイチオシの一台はどれか? 各メンバーの“推しグルマ”が、机上で激突する! -
NEW
ポルシェ911タルガ4 GTS(4WD/8AT)【試乗記】
2025.11.26試乗記「ポルシェ911」に求められるのは速さだけではない。リアエンジンと水平対向6気筒エンジンが織りなす独特の運転感覚が、人々を引きつけてやまないのだ。ハイブリッド化された「GTS」は、この味わいの面も満たせているのだろうか。「タルガ4」で検証した。 -
ロイヤルエンフィールド・ハンター350(5MT)【レビュー】
2025.11.25試乗記インドの巨人、ロイヤルエンフィールドの中型ロードスポーツ「ハンター350」に試乗。足まわりにドライブトレイン、インターフェイス類……と、各所に改良が加えられた王道のネイキッドは、ベーシックでありながら上質さも感じさせる一台に進化を遂げていた。





































