第74回:トヨタRAV4(後編) ―これは堕落か? 洗練か? 話題を呼ぶ6代目の是非を問う―
2025.06.25 カーデザイン曼荼羅 拡大 |
先代のワイルドなイメージは鳴りを潜め、より落ち着いたイメージで仕上げられた6代目「トヨタRAV4」。この変化は堕落か? 洗練か? ふたたびのイメージチェンジの背後にある、トヨタのねらいとは? カーデザインの識者と、新型RAV4の是非を考える。
(前編に戻る)
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明快さを抑え、幅広い層にアピール
webCGほった(以下、ほった):……そんなわけで、先代RAV4はなかなかの快作で、渕野さんがもといた自動車メーカーでも、そのデビューは多大な衝撃をもって受け止められたと。
清水草一(以下、清水):販売台数も、世界第2位くらいまでになった!
ほった:われわれカーマニアとは関係ないところで、スゴいことが起きていたわけです。で、ここでようやく、話が新型の6代目に至るわけですが。
渕野健太郎(以下、渕野):私が新型を見て思ったのは、先代がアウトドアテイストを前面に出してるのに対して、今度はコンセプト的に、もう少し幅広いお客さんに訴求したいんじゃないか? ということでした。「カローラ クロス」まではいかないにしても、先代RAV4より、もう少し落ち着いたところをねらってると思います。先代のアドベンチャーフィールは踏襲していますが、メッセージ性はあれほど明快ではない。
清水:全体的に落ち着いたし、断然都会的になりましたね。
渕野:そう、落ち着いて見えますよね。スリーサイズもタイヤの位置もほとんど一緒なのに、印象が違って見えるのは興味深い。もちろん、違うところは確かに違って、新型ではフロントからリアドアぐらいまでのドアプラン(断面)が、割と普通なんですよ。先代は明快に、前がいちばんワイドで、それをぎゅーって絞ってきたところにリアの塊がドン! ……ってくる感じでしたけど(前編参照)。
清水:ただ、部分的にはスゴい造形をしていますね? リアフェンダー前の絞りは、新型もかなりダイナミックに感じますけど。
渕野:あれは絞っているんじゃなくて、部分的にボディーを削って、そこにバンとリアフェンダーをつけているんですよ。ショルダーラインを見ると、そこまで大胆に絞り込まれてはいませんから。部分的な手法で、ダイナミックさを出しているんです。
成功作の“次”をつくる難しさ
渕野:先代はボディーを左右から絞ったうえで、その後ろにリアまわりの大きな塊がくっついていて、それで安定感を出していましたよね。でもこの新型は、下まわりをかなり削ることで、リアフェンダーの“出しろ”を強調している。
ほった:リアドアの下とか後ろの部分ですね。
渕野:そうです。カーデザインでは、プランビュー(俯瞰)のダイナミックさは全体のダイナミックな表現に直結します。先代はそこで勝負をしていましたが、新型は、こう言ってはなんですけれど、ちょっと小さなところでデザインをしている雰囲気があります。
ほった:器がちっちゃくなったんですね(全員笑)。
渕野:そこまでは言わないですよ。
清水:僕は新型のほうが断然好きだけどなぁ。
ほった:いやぁ、ワタシはちょっと……。なんか世相に迎合しすぎな気がするんですよ。先代は「今から、ここから、俺たちがクロスオーバーSUVの新しいトレンドをつくっていくんだ」っていうリーダー感があったじゃないですか。4代目までの自身を含め、世のSUVがみんな乗用車的なデザインに流れていくなかで、5代目RAV4は「俺はこっち行くからサ」っていう感じで登場したわけですよ。それと比べると、志が低いというかなんというか。
清水:それは違うな。単にほった君がアウトドア派で、オレは都会派だってことでしょ。オレは首都高専門。ほった君は山里専門(笑)。
ほった:清水さんも夜の首都高にばっか出撃してないで、たまにゃ奥多摩にでも出かけたらどうですか?
渕野:いや。ほったさんの言うことも一理あって、先代はやっぱりチャレンジャーだったんですよ。トヨタとしては、おそらく「ここにお客がいる」って計算があってのデザインだったんでしょうけど、それでも、これまでとは全然違うテイストに挑戦して、なおかつそれで大ヒットしたわけです。
ただ、そうして大成功したモデルの次って、基本的につくるのが難しいじゃないですか。新型RAV4には、ちょっとそういう雰囲気があるかなとは思います。最近のトヨタのモデルチェンジや新型車には、すごい納得感があったんですけど、今回はちょっとモヤモヤしますね。
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フロントの造作が細かすぎる
清水:渕野さんは新型RAV4のデザイン批評で、ハンマーヘッド型のフロントフェイスがイマイチだと書かれてましたよね。 僕はとっても合ってると思うんですけど。
ほった:これが?
清水:そう。グラデーショングリルもイイじゃない。レクサスみたいで(笑)。
渕野:うーん……。自分が違和感を覚えたのは、フロントマスク単体にというより、フロントとリアのイメージの違いになんですよ。新型RAV4は、リアではかなり“塊感”を重視しているんです。リアゲートのガラスとリアコンビランプがシームレスにつながっていて、その下のボディーにも、ひとつの塊を削り出したような強さ感がある。ここについては、これまでのRAV4より車格が上がったようにも感じます。
いっぽうで、フロントはコの字型のヘッドランプのおかげで、ちょっと全体にごちゃついている。面がシンプルじゃなくなっている。これだったら、リアと同じく、塊感や強さ感を追求したデザインでフロントも統一したほうがよかったんじゃないかと。
清水:新型RAV4のフロントマスクって、ごちゃついてます? スッキリ都会的に見えますけど。
ほった:んなことないでしょ。渕野さんがよく使う言葉を借りると、なんかビジーな感じですよ。
渕野:そうですね。で、そのいちばんの原因になっているのが、このハンマーヘッドなんです。新型RAV4では、このモチーフがフロントまわりの強さ感をスポイルしている気がします。ボンネットとヘッドランプの間に段差があって、コの字ランプとその間から突き出たノーズに段差があって、ランプの形状自体にも段差があって、さらにランプとバンパーの間にも段差がある。とにかく顔が段差だらけなんですよ。ここはもっとシンプルにできたはずなんですけど……。
正直、このフロントマスクには、「ハンマーヘッドを使わなきゃ!」っていうデザインの縛りがあったように感じられます。コの字型のヘッドランプ自体が悪いわけではないんですが、どれもこれも同じモチーフにするんじゃなくて、クルマに合わせてデザインの幅をもたせたほうが、よりおのおのにフィットしたデザインになるんじゃないかと。
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ウソをつくならもっと上手に
ほった:そういう細かいところもそうなんですけど、クルマ全体のイメージとしても、どうなんですかね、これ。カッコいいのかなぁ? ぱっと見の印象、なんか昔のアニメに出てくるロボットの足みたいだなと思ったんですけど。
渕野:それは、リアドアのあたりが原因ですかね?
ほった:(写真を凝視)……主には、きっとそうですね。そこのプレスラインの入り方とか、さっき話していた“削り”の部分とか。今どきのクルマなんで、この辺の造形に機能が伴っていないのは百も承知ですけど、それにしたってウソっぽすぎる。なまじ機能的な雰囲気を出しているところがあるぶん、なんか気になるんですかね。
渕野:この辺は画像で見た感じより、実車のほうがマイルドには見えましたよ。特に下まわりのダイナミックな動きっていうのは……私も会場でしか見てないから、外光の下で見るとどうなのかわかんないですけど、画像ほどクドい感じではないですね。
清水:これくらい当たり前では?
渕野:先代モデルがなかったら、「より上質に見せたかったんだな、こういう進化なんだな」くらいなんですけど……先代が先代だけに。
清水:そんなに先代の評価が高いのかぁ。ビックリだなぁ。
ほった:都会派の清水さんの趣味じゃないでしょうけど。
清水:いや、オレも「ランクル“70”」とか“250”は大好きだよ。逆に、あれくらい本格派じゃないなら、SUVは都会派が好き。
ほった:ややっこしいですねぇ。
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路線変更は“あのクルマ”のデビューの前触れか
渕野:……とまぁ、ここまでいろいろ話しましたけど、やっぱり先代と新型って、基本的なところはあんまり変わっていないんですよね。
ほった:えっ、そうなんですか?
渕野:サイドビューのシルエットを見ると、大きく違うのはリアゲートぐらいかな。新型は、先代に比べてリアゲートがだいぶ立ってるんです。このあたりを見ると、明らかにスポーティーな方向から、使える高級車、使えるSUVの方向に転向したんでしょう。ただ、パッケージはほぼ一緒。新旧のサイドビューを比べてみると、フロントガラスにしろボンネットにしろ、ほとんど同じに見えるでしょう? ぱっと見は違って見える新型ですけど、その辺は、意外なほど変わってないんです。
ほった:だったら、先代のワイルドさを残しつつ、より使えるSUVにシフトする道もあった気がするんですけどねぇ。
この間、某SUV試乗会でアウトドアファッション系のメディアさんと一緒になったんですが、今どきのアクティブ層って、マジで直感重視、デザインと色が自分の感性に合うかどうかで、クルマを選ぶそうですよ。嗜好(しこう)は違えど、店先の「ミラジーノ」や「ムーヴラテ」をひと目ぼれで買っていった、平成のお姉さま方と一緒ですよね。で、そうした層には今のRAV4は非常に人気があるそうですが……。新型のデザインに、そこまでの一撃必倒のパワーがあるかっていうと、ワタシは正直ビミョーな気がするんですよ。
清水:ターゲットが変わったんだよ。都会派の自分としては、街の風景の一部として、新型はとてもスマートでステキになったと思うな。新型のデザインこそSUVの王道でしょう。
渕野:そういえば、発表会場で耳にしたんですけど、ランクルのちっちゃいやつが出るみたいじゃないですか。だからすみ分けとして、ラギッドなのはそっちに任せて、RAV4は街に帰ろうっていう戦略なのかもしれませんよ。
清水:それでいいと思います。RAV4は都会派! 新型のデザイン支持!
ほった:SUVに興味ないくせに(笑)。
(語り=渕野健太郎/文=清水草一/写真=トヨタ自動車、webCG/編集=堀田剛資)
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渕野 健太郎
プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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