ダイハツ車オーナーの本音は? 全車種出荷停止に発展した不正問題をこう考える
2024.01.11 デイリーコラムダイハツ車オーナーとして一言
ポート研磨にスロットルボア径拡張等、なんでもござれのダイハツ認証不正! 30年以上前からやってたっていうんだから驚きだ!(参照)
ダイハツディーラーには全国のユーザーから「このまま乗り続けていて大丈夫か」という問い合わせが殺到したとか。そこで私も、いちダイハツユーザー(2022年式「ダイハツ・タントスローパー」)としての所感を述べさせていただきます。
「なんとも思ってません」
インチキポート研磨などがあったのは1990年代の「ミラ」等。当時はまだパワー競争の時代でしたね。現在も長く大事に乗ってらっしゃるユーザーがいたとしても、実害は出ていないでしょう。
そういえば私、1990年式「ダイハツ・ハイゼット トラック ジャンボ」にも乗ってたんだっけ! 3年前25万円で買い、半年後に局地豪雨で水没。30年以上元気に走った末の、華々しい最期でした。
多くのユーザーは性能で軽を選んでない?
今回発見された不正(174件)の大部分は衝突安全関係だが、うち147件は、基準をクリアしていたにもかかわらず、より良い数値に改ざんしていたというもの。残る27件は、計測結果じゃなく目標値を書いたとか、量産部品が間に合わなくて別の部品を使ったといった「急いでいたのでズルしました」というケースだ。
確かにダイハツは認証で不正を行って新型車を販売したが、発売後にはJ-NCAPの衝突安全試験もある。うちのタントは2019年の試験で、100点満点中80.2点で4つ星を取っている。先代「ホンダN-BOX」は5つ星だったので、それには負けていたけれど、4つ星は先代「スズキ・スペーシア」と同じだ。
つまり、今回の不正は、基本的にはダイハツ社内の問題。上流側の国交省としては「あってはならない事例」でしょうが、下流側のユーザーにはほとんど実害はない。
いまダイハツ車の納車待ちをしている人は、納車が伸びるという実害があるのでお気の毒ですが、辛抱強く待つか、キャンセルして別のモデルを買うか、すでに検討済みのことと存じます。キャンセルする場合、新型N-BOXはあらゆる面で一歩抜けた完成度だと考えておりますのでオススメです。多くのユーザーは性能で軽自動車を選んでないと思いますが……。
実害を実感するのは極めて難しい
2016年に発覚した三菱自動車の燃費データ不正のときは、実害があった気がする。三菱が日産と共同開発した先代「eK」系は、他社製品に比べて明らかに低速トルクがなくて遅かった。トルクがないから燃費が悪化する。それで不正を働いた。実用上は、燃費より加速が悪いことのほうが実害が大きいように感じたけれど、他社製品と比較して初めてわかることなので、マイカーだけ乗っていればわからない。つまりこちらも、ユーザーが実害を実感するのは極めて難しく、みんな満足していたようだ。
なにせ不正発覚後も、先代eK系や「デイズ」系は、販売台数があまり落ちなかった。当時は「三菱自動車は芯まで腐っている」みたいに報道されたけれど、ユーザーには馬耳東風だったのですよ! 今回はもっと速攻で忘れられるだろう。
それより、神奈川・厚木のパチンコ店の駐車場で「フォルクスワーゲン・ゴルフTDI」から出火して、クルマが153台も燃えちゃった事故のほうがはるかに問題がデカい気がしてならない(2023年12月22日にリコール届け出)。ゴルフTDIの2リッターディーゼル、性能は最良だけど、製造からたった2年のクルマが燃えるのはイカン。クルマが燃えても「まぁしょうがないか」「そういうこともあるよね」と思えるのは、古いフェラーリやランボルギーニだけ!
(文=清水草一/写真=ダイハツ工業、清水草一、webCG/編集=櫻井健一)
![]() |
![]() |
![]() |

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
トランプも真っ青の最高税率40% 日本に輸入車関税があった時代NEW 2025.9.17 トランプ大統領の就任以来、世間を騒がせている関税だが、かつては日本も輸入車に関税を課していた。しかも小型車では最高40%という高い税率だったのだ。当時の具体的な車両価格や輸入車関税撤廃(1978年)までの一連を紹介する。
-
スズキが未来の技術戦略を発表! “身近なクルマ”にこだわるメーカーが示した問題提起 2025.9.15 スズキが、劇的な車両の軽量化をかなえる「Sライト」や、次世代パワートレインなどの開発状況を発表。未来の自動車はどうあるべきか? どうすれば、生活に寄りそうクルマを提供し続けられるのか? 彼らの示した問題提起と、“身近なクルマ”の未来を考える。
-
新型スーパーカー「フェノメノ」に見る“ランボルギーニの今とこれから” 2025.9.12 新型スーパーカー「フェノメノ」の発表会で、旧知の仲でもあるランボルギーニのトップ4とモータージャーナリスト西川 淳が会談。特別な場だからこそ聞けた、“つくり手の思い”や同ブランドの今後の商品戦略を報告する。
-
オヤジ世代は感涙!? 新型「ホンダ・プレリュード」にまつわるアレやコレ 2025.9.11 何かと話題の新型「ホンダ・プレリュード」。24年の時を経た登場までには、ホンダの社内でもアレやコレやがあったもよう。ここではクルマの本筋からは少し離れて、開発時のこぼれ話や正式リリースにあたって耳にしたエピソードをいくつか。
-
「日産GT-R」が生産終了 18年のモデルライフを支えた“人の力” 2025.9.10 2025年8月26日に「日産GT-R」の最後の一台が栃木工場を後にした。圧倒的な速さや独自のメカニズム、デビュー当初の異例の低価格など、18年ものモデルライフでありながら、話題には事欠かなかった。GT-Rを支えた人々の物語をお届けする。
-
NEW
第844回:「ホンダらしさ」はここで生まれる ホンダの四輪開発拠点を見学
2025.9.17エディターから一言栃木県にあるホンダの四輪開発センターに潜入。屋内全天候型全方位衝突実験施設と四輪ダイナミクス性能評価用のドライビングシミュレーターで、現代の自動車開発の最先端と、ホンダらしいクルマが生まれる現場を体験した。 -
NEW
アウディSQ6 e-tron(4WD)【試乗記】
2025.9.17試乗記最高出力517PSの、電気で走るハイパフォーマンスSUV「アウディSQ6 e-tron」に試乗。電気自動車(BEV)版のアウディSモデルは、どのようなマシンに仕上がっており、また既存のSとはどう違うのか? 電動時代の高性能スポーツモデルの在り方に思いをはせた。 -
NEW
第85回:ステランティスの3兄弟を総括する(その3) ―「ジープ・アベンジャー」にただよう“コレジャナイ感”の正体―
2025.9.17カーデザイン曼荼羅ステランティスの将来を占う、コンパクトSUV 3兄弟のデザインを大考察! 最終回のお題は「ジープ・アベンジャー」だ。3兄弟のなかでもとくに影が薄いと言わざるを得ない一台だが、それはなぜか? ただよう“コレジャナイ感”の正体とは? 有識者と考えた。 -
NEW
トランプも真っ青の最高税率40% 日本に輸入車関税があった時代
2025.9.17デイリーコラムトランプ大統領の就任以来、世間を騒がせている関税だが、かつては日本も輸入車に関税を課していた。しかも小型車では最高40%という高い税率だったのだ。当時の具体的な車両価格や輸入車関税撤廃(1978年)までの一連を紹介する。 -
内燃機関を持たないEVに必要な「冷やす技術」とは何か?
2025.9.16あの多田哲哉のクルマQ&Aエンジンが搭載されていない電気自動車でも、冷却のメカニズムが必要なのはなぜか? どんなところをどのような仕組みで冷やすのか、元トヨタのエンジニアである多田哲哉さんに聞いた。 -
トヨタ・ハリアーZ“レザーパッケージ・ナイトシェード”(4WD/CVT)【試乗記】
2025.9.16試乗記人気SUVの「トヨタ・ハリアー」が改良でさらなる進化を遂げた。そもそも人気なのにライバル車との差を広げようというのだから、その貪欲さにはまことに頭が下がる思いだ。それはともかく特別仕様車「Z“レザーパッケージ・ナイトシェード”」を試す。