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第65回:ここがヘンだよ! 日本カー・オブ・ザ・イヤー(前編) ―その投票、真剣に選んでますか?―

2025.04.16 カーデザイン曼荼羅 渕野 健太郎清水 草一
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今回は、日本で最も権威のある自動車表彰制度と言っても過言ではない、「日本カー・オブ・ザ・イヤー」をテーマに取り上げる。
今回は、日本で最も権威のある自動車表彰制度と言っても過言ではない、「日本カー・オブ・ザ・イヤー」をテーマに取り上げる。拡大

1980年から続く、歴史ある「日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)」。最近はデザインに関する部門賞も設けられているのだが、識者からすると、どうにもそれが釈然としないという。権威ある自動車賞でのデザインの扱いは、本当にこれでいいのか? 真にいいデザインとは何か? 真剣に考えてみた。

COTYは1980年に始まった自動車の表彰制度だ。その年の最も優れたクルマを選ぶ「日本カー・オブ・ザ・イヤー」に加え、複数の部門賞があり、2024-2025には「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」「テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤー」、そして「実行委員会特別賞」が選ばれた。
COTYは1980年に始まった自動車の表彰制度だ。その年の最も優れたクルマを選ぶ「日本カー・オブ・ザ・イヤー」に加え、複数の部門賞があり、2024-2025には「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」「テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤー」、そして「実行委員会特別賞」が選ばれた。拡大
COTYでは、自動車メディアなどによる実行委員会が60人を上限として選考委員を指名。委託を受けた選考委員が、第一次選考(「10ベスト」のノミネート)、第二次選考(最終選考)、そして部門賞の選考投票を行う。
COTYでは、自動車メディアなどによる実行委員会が60人を上限として選考委員を指名。委託を受けた選考委員が、第一次選考(「10ベスト」のノミネート)、第二次選考(最終選考)、そして部門賞の選考投票を行う。拡大
「スバル・フォレスター」(従来型)と「マツダCX-5」のサイドビュー。 
渕野「デザインというのは機能やテクノロジーとのバランスでできていて、しかもその度合いは、メーカーによって違うんですよ」
「スバル・フォレスター」(従来型)と「マツダCX-5」のサイドビュー。 
	渕野「デザインというのは機能やテクノロジーとのバランスでできていて、しかもその度合いは、メーカーによって違うんですよ」拡大
ほった「機能とデザインのバランス度合いの違いについては、メーカーだけじゃなくて、車種や車形に関してもいえそうですね」 
清水「ミニバンよりスポーツカーのほうがカッコいいけど、必ずしもそっちのほうが『いいデザイン』とはいえない、みたいなね」
ほった「機能とデザインのバランス度合いの違いについては、メーカーだけじゃなくて、車種や車形に関してもいえそうですね」 
	清水「ミニバンよりスポーツカーのほうがカッコいいけど、必ずしもそっちのほうが『いいデザイン』とはいえない、みたいなね」拡大

いいデザインとは? いいクルマとは?

webCGほった(以下、ほった):今回は渕野さんの発案で、「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」についてお話しをしたいと思います。久々ですね、渕野さん発のテーマというのは。

渕野健太郎(以下、渕野):COTYのデザイン部門の表彰について、ちょっと思うところがありまして。

ほった:ほほぅ。ちなみにwebCGはCOTYに加盟してませんので、遠慮なくぶった切ってください。

渕野:いやいや(汗)。そういえば、ほったさんのメールを見たら、今回の議題が「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤーを粉砕する!」ってなってたじゃないですか(笑)。そういうつもりじゃないので。

ほった:ありゃあ言葉のアヤ、かわいいジョークですよ。

渕野:そうなんですか、安心しました。……うーん、そうですね。まずはCOTYの話をする前に、「いいデザインってなんだろう?」「いいクルマってなんだろう?」っていう、前提の話をしたいと思います。

伝わるかどうか、ちょっと難しいかもしれませんが、私は「いいクルマは、いいデザイン」だと思ってるんです。それも、単純にカッコよければいいって話ではない。デザインというのは感性的なものだけじゃなく、使いやすさなどの機能性と、テクノロジーなどとのバランスで成り立っているものだと思うので。

清水草一(以下、清水):デザイン(design)って、本当は「設計」って意味だもんね。

渕野:そうです。で、機能とテクノロジーとのバランスの度合いは、メーカーによって異なるわけです。例えばマツダだったら、よりプロポーションを追求しているし、スバルだったら、より機能性を追求している。そういう話なんですね。

ほった:ふむふむ。

渕野:次に“いいクルマ”ってどういうことだろう? ってことを考えてみましょう。COTYなどの賞は、いいクルマを表彰するわけですよね? こうした公の自動車賞では、自分は「他人におすすめできるクルマ」がいいクルマだと思うんです。けっして評価者の好き好きではない。……これが、まず前提の話です。

清水:すいません。自分が選考委員やってたときは、ほぼ好き嫌いで選んでました。

ほった:あらら。

デザインは自動車の大事な要素じゃないの?

渕野:で、ここまでの前提を踏まえてCOTYの話をしていきたいのですが……今回(2024-2025)のCOTYのカー・オブ・ザ・イヤー、要は2024年の“いちばんいいクルマ”は、「ホンダ・フリード」ってことになりましたよね。(参照

ほった:ですね。

渕野:で、デザイン・カー・オブ・ザ・イヤーは、「三菱トライトン」でした。

清水:そうだったの!?

渕野:そうだったんです。自分としても、トライトンはすごくよくできてるなと思ってるんですけど……。いや、その話はあとにしましょう。

この結果についてなんですけど、カー・オブ・ザ・イヤーの選考って、「どの選考委員がどのクルマに投票したか」というのが、COTYのオフィシャルサイトで見られるようになってるんですね。選考委員は、「10ベスト」って呼ばれる最終選考に残った10車種のなかから、ひとりにつき3車種を選んで、それぞれに点数をつける。「このクルマは10点、これは何点……」って。その中身が、全部公開されているわけです。

それは部門賞のデザイン・カー・オブ・ザ・イヤーのほうも同じです。こちらは各人が「これぞ」と思う一台を選んで投票しているわけですけど……。

ここからが問題なんですが、今年は選考委員が59人いたんですが、カー・オブ・ザ・イヤーで推した3台とは違うクルマをデザイン・カー・オブ・ザ・イヤーに選んだ人が、52人いました。7人しか評価がかぶっていないんですよ。これはどういうことだと?(全員笑)

ほった:なるほどヘンだ。皆、別にデザインがいいとは思ってないクルマを、イヤーカーに推してたことになる(笑)。

渕野:そこが疑問なんですよ。皆さん、カーデザインとクルマの評価を、分けて考えてんじゃないのかと。デザインも、クルマを構成する大事な要素のひとつじゃないのかと。ちなみに、カー・オブ・ザ・イヤーをとったフリードをデザイン・カー・オブ・ザ・イヤーに推した人は、1人でした。(全員笑)

ほった:マジかよ。

渕野:で、ですよ。逆にトライトンはカー・オブ・ザ・イヤーの最終選考で何位だったかというと……10台中10位なんです。(全員笑)

清水:もう笑うしかないですね。カーデザインのオマケ扱いぶりに!

渕野:これって、自分としてはすごく違和感があるんですよ。ちょっと待ってよってなる。今回は、要はそういう話なんです。

直近の「2024-2025 日本カー・オブ・ザ・イヤー」の結果がこちら。イヤーカーには「ホンダ・フリード」が輝いた。
直近の「2024-2025 日本カー・オブ・ザ・イヤー」の結果がこちら。イヤーカーには「ホンダ・フリード」が輝いた。拡大
いっぽう、部門賞の「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」は「三菱トライトン」が受賞。読者諸氏のなかでも、この結果に「え?」と思った人は、少なくないだろう。
いっぽう、部門賞の「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」は「三菱トライトン」が受賞。読者諸氏のなかでも、この結果に「え?」と思った人は、少なくないだろう。拡大
COTYでは、まずは前年の11月1日から当年の10月31日までに日本国内で発表/発売されたすべての乗用車(ただし、普通の人が普通に買えるクルマ)を選考対象車として、選考委員が投票を実施。得票数の多かった10台が最終選考の対象車種、いわゆる「10ベスト」となり、そこからその年のイヤーカーが選出される。
COTYでは、まずは前年の11月1日から当年の10月31日までに日本国内で発表/発売されたすべての乗用車(ただし、普通の人が普通に買えるクルマ)を選考対象車として、選考委員が投票を実施。得票数の多かった10台が最終選考の対象車種、いわゆる「10ベスト」となり、そこからその年のイヤーカーが選出される。拡大
袖ケ浦フォレストレースウェイで行われた「10ベスト」の合同試乗会より、「ホンダ・フリード」の取材エリア。
袖ケ浦フォレストレースウェイで行われた「10ベスト」の合同試乗会より、「ホンダ・フリード」の取材エリア。拡大
同じく「10ベスト」の合同試乗会より、サーキットを走る「三菱トライトン」。
同じく「10ベスト」の合同試乗会より、サーキットを走る「三菱トライトン」。拡大

確かに「トライトン」はカッコいいけれど……

清水:……ていうか、こういう結果だったんですね、今回のデザイン・カー・オブ・ザ・イヤー。注目してないんで知らなかった。

渕野:僕もホームページを見て調べただけなんですけど、そういう結果でした。デザイン・カー・オブ・ザ・イヤーは、最終選考の10車種のなかからじゃなく、その年にノミネートされたすべての車種が対象なので、10ベストじゃないところから選んでる人もいます。まぁそういう人はしょうがないのかなって気もしますけど。

清水:それはもう、オマケのオマケかも(笑)。

渕野:ただ、それでも結構な割合で、例えば「『MINI』のデザインがいい」っていってデザイン賞にMINIを選んだ人でも、カー・オブ・ザ・イヤーの3選にはMINIは入れてないとか、そんな例が見られるんですよ。それはちょっと違うんじゃないかなと。

清水:自動車デザイナーとして看過できない!! ですね?

渕野:やっぱりそう思うじゃないですか。それに、トライトンがデザイン・オブ・ザ・イヤーに選出された……要は最多得票を得たという結果に関しても、ホントにこれでよかったのかなって感じる部分はあるんです。

自分としても、トライトンはすごくよくできてるなと思います。やっぱり三菱って、ああいうラダーフレームの本格的なクロカンに強いなと。シルエットもスポーティーで素晴らしいし、顔まわりもシンプルな面構成で、グラフィックで個性を出してますよね。で、いちばん効いてるのは下まわりのしまい込みです。サイドシルからフロントまわり、リアまわりにかけて、裾が内側に入ってるじゃないですか、きちんと裾が絞り込まれてる。こういうところは、SUVの“強さ”を出すために非常に重要で、とてもそつなくまとまってます。

ほった:確かに、カッコいいですもんね、あのクルマ。

清水:そんなに評価が高いんだ……。

渕野:ただ、「COTYにおけるデザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」って視点で見ると、どうでしょう? これ、ピックアップトラックじゃないですか。国内で売られてるライバルは、実質「トヨタ・ハイラックス」しかないんですよ。その2つしか、横並びで比較ができない。そういうクルマを「デザインに関して今年を総括する一台」と言ってしまうのは、ちょっとムリがある気がするんです。

「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」の選考対象は「10ベスト」には限定されないので、なかには「フィアット600e」や、「フェラーリ・プロサングエ」を選んだ人もいた。
「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」の選考対象は「10ベスト」には限定されないので、なかには「フィアット600e」や、「フェラーリ・プロサングエ」を選んだ人もいた。拡大
「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」で、10人の選考委員が票を入れていた「MINIクーパー」。「日本カー・オブ・ザ・イヤー」の最終選考でも善戦し、トップと48点差(172点)の3位の票を集めた。
「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」で、10人の選考委員が票を入れていた「MINIクーパー」。「日本カー・オブ・ザ・イヤー」の最終選考でも善戦し、トップと48点差(172点)の3位の票を集めた。拡大
ちなみに、当連載でもグッドデザインの好例として取り上げたことのある「ボルボEX30」は、「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」でも7人の投票を集めて健闘。しかし本賞の最終選考では、得票30票のブービー賞となってしまった……。いや、実際には『10ベスト』に選ばれたって段階ですでに、大したことなんですけどね。
ちなみに、当連載でもグッドデザインの好例として取り上げたことのある「ボルボEX30」は、「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」でも7人の投票を集めて健闘。しかし本賞の最終選考では、得票30票のブービー賞となってしまった……。いや、実際には『10ベスト』に選ばれたって段階ですでに、大したことなんですけどね。拡大
現状、日本で正規に販売されているピックアップトラックは、「三菱トライトン」(写真右下)と「トヨタ・ハイラックス」(同左上)のみで、ほかに横並びで比較できる車種はない。そんなニッチなジャンルのクルマを「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」としてしまうのは、ちょっと無理があるのでは?
現状、日本で正規に販売されているピックアップトラックは、「三菱トライトン」(写真右下)と「トヨタ・ハイラックス」(同左上)のみで、ほかに横並びで比較できる車種はない。そんなニッチなジャンルのクルマを「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」としてしまうのは、ちょっと無理があるのでは?拡大

それ、真剣に選んでます?

渕野:それに、個人的にはカー・オブ・ザ・イヤーに輝いたフリードが、デザイン・オブ・ザ・イヤーでたったの1票だったというのも気になります。

清水:フリードのデザインに関しては、高く評価してましたもんね(その1その2)。

渕野:それもあるんですけど……。例えば、デザイン賞を受賞したトライトンって、かなり特殊なクルマじゃないですか。ピックアップトラックっていうだけで、日本だと特別な存在ですよね。アメリカや東南アジアではピックアップは主力車種でしょうけど。

ほった:日本だとスーパーカー並みにぶっ飛んだ存在ですよ。それに、パラメーターをカッコよさにドーンと振れる、スポーツカーみたいなところもあるし。

渕野:それに対してフリードは、まさに日本のマーケットで“ど真ん中”のクルマなわけです。ライバルも多いし、外部からの注文も、制約も多い。そうしたクルマで、あれだけ優れたパッケージングを実現して、そのうえで外装を魅力的にデザインするのって、相当大変なわけですよ。そこの評価はどうなってるんだと。

ほった:デザインは、「機能性やテクノロジーとのバランスで成り立ってる」わけですからね。

清水:本来なら、カー・オブ・ザ・イヤーで1位のクルマがデザイン・カー・オブ・ザ・イヤーでも1位でしょうしね。“デザインは設計”なんだし。

ほった:ワタシはそこまでかたくなではないですけど……。でも確かに、“1票”って結果が順当だったのか? って気にはなってきますね。

清水:(COTYのオフィシャルサイトを見つつ)そもそも、COTYにデザイン・オブ・ザ・イヤーができたのって2020年からみたいだけど、歴代受賞車を見ると見事にマイナー車ばっか。メインの賞では引っかかんないようなのばっかりだよ。やっぱり皆、オマケで入れたからですよ。

ほった:それは、「本賞の3台には入れなかったけど、こっちの賞では投票しましたからね」って、メーカーにアピールしたいってことですか?

清水:これにもちょっと賞をあげとこう、みたいなね。私も5年間ぐらいCOTY選考委員をやりましたけど、やっぱり人間なんで、どうしてもみんなにいい顔したいんですよ。大切な仲間ですから(笑)。僕は仲間外れだったし、そういうのが嫌だったから辞めましたけど、仲間なら「何かあげとかないと」って思ったりもしますよね。手土産くらい置いていこう、みたいな。

ほった:お歳暮じゃないんだから、そういうのは賞の外でやってくださいよ。

めでたく「日本カー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた「ホンダ・フリード」だが、「デザイン・オブ・ザ・イヤー」に投票した人はまさかの1人! このギャップはどういうことだろう?
めでたく「日本カー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた「ホンダ・フリード」だが、「デザイン・オブ・ザ・イヤー」に投票した人はまさかの1人! このギャップはどういうことだろう?拡大
想像すればわかるとおり、マーケットのど真ん中に位置するクルマであればあるほど、デザインに対する制約は大きくなる。実用車には多くの厳しい設計要件が課せられるし、売れなければならないクルマゆえ、マーケティング等からの要望も増えるからだ。
想像すればわかるとおり、マーケットのど真ん中に位置するクルマであればあるほど、デザインに対する制約は大きくなる。実用車には多くの厳しい設計要件が課せられるし、売れなければならないクルマゆえ、マーケティング等からの要望も増えるからだ。拡大
前回までの歴代「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」の面々がこちら。上から「マツダMX-30」(2020-2021)、「BMW 4シリーズ」(2021-2022)、「BMW iX」(2022-2023)、「三菱デリカミニ」(2023-2024)。 
ほった「これらについても、後編で掘り下げますか?」 
清水「うーん。どうしようかなぁ……」
前回までの歴代「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」の面々がこちら。上から「マツダMX-30」(2020-2021)、「BMW 4シリーズ」(2021-2022)、「BMW iX」(2022-2023)、「三菱デリカミニ」(2023-2024)。 
	ほった「これらについても、後編で掘り下げますか?」 
	清水「うーん。どうしようかなぁ……」拡大

もうちょっとデザインについて知ってほしい

ほった:正直、COTYの選考委員にも知っている人はたくさんいるし、皆が皆「忖度(そんたく)しました!」なんてことはないと思いますけど……。ただこうして話してると、選考委員の皆さんが、カーデザインってものについてどういう考えを持っているのかは、気になってきますね。

渕野:そうですね。例えば前回(2023-2024)のデザイン・カー・オブ・ザ・イヤーは、同じ三菱の「デリカミニ」でしたよね。これも確かに、自分もすごくよくできたクルマだったと思ってるんです。ベース車の「eKクロス スペース」から外装を仕立て直すことで、全然違う価値を提案したのは素晴らしい。デザイナーの腕の見せどころ。デザインの、ある意味真骨頂ですよね。だけど実際にやってることはカスタムメーカーとあんまり変わんないわけで(全員笑)、いやカスタムがダメというわけではなくて、賞のジャンルが違う気がするんですよ。例えば「企画賞」とか、もしくは「カスタム賞」だったらわかるんですけど……。

ほった:そういや、竹下さん(元『webCG』デスク&元『CAR GRAPHIC』編集長の竹下元太郎氏)も似たようなこと言ってたな。MINIの発表会で会ったときに。

清水:自分と同じで、自動車デザインは顔が命! って思ってる人が、多いのかな。

渕野:まぁ、自分らもこの連載で取り上げましたけどね。「私的カーデザイン大賞」っていって。(参照

ほった:選んだのはワタシですね(笑)。かなり主観的で、問題提起的な意味合いを込めての発案でしたけど。

渕野:そうでしたね。ただそういうのはやっぱり、「カーデザイン曼荼羅」っていういちメディアの座談企画だから許されると思うんですよ。COTYは公な賞なわけですから……。せんえつながらって話ですけど、もうちょっと選者の皆さんには、デザインについていろんなことを知ってほしいと思います。

清水:現状は本当に、明確に、オマケ扱いですからね……。

後編に続く)

(語り=渕野健太郎/文=清水草一/写真=日本カー・オブ・ザ・イヤー、BMW、スバル、トヨタ自動車、フェラーリ、ボルボ、本田技研工業、マツダ、三菱自動車/編集=堀田剛資)

2023年のCOTYで「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたのは、SUV風の軽スーパートールワゴン「三菱デリカミニ」だったが……。
2023年のCOTYで「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたのは、SUV風の軽スーパートールワゴン「三菱デリカミニ」だったが……。拡大
皆さんご存じのとおり、「デリカミニ」の実態は、「eKクロス スペース」(写真)のスキンチェンジモデルである。
皆さんご存じのとおり、「デリカミニ」の実態は、「eKクロス スペース」(写真)のスキンチェンジモデルである。拡大
「2023-2024 日本カー・オブ・ザ・イヤー」の最終選考会場となった東京ポートシティ竹芝にて、他のノミネート車と肩を並べる「三菱デリカミニ」。話題性があり、昨今の日本の自動車トレンドを象徴するクルマでもあったデリカミニだが……このクルマが受賞するにふさわしい賞は、本当に「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」だったのだろうか?
「2023-2024 日本カー・オブ・ザ・イヤー」の最終選考会場となった東京ポートシティ竹芝にて、他のノミネート車と肩を並べる「三菱デリカミニ」。話題性があり、昨今の日本の自動車トレンドを象徴するクルマでもあったデリカミニだが……このクルマが受賞するにふさわしい賞は、本当に「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」だったのだろうか?拡大
渕野 健太郎

渕野 健太郎

プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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