第119回:デザイン目線で大総括! 2026年上半期のニューモデル ―「日産リーフ」「トヨタ・ランドクルーザー“FJ”」その他もろもろ編―
2026.07.08 カーデザイン曼荼羅 拡大 |
2026年の上半期に登場したニューモデルを、カーデザインの識者とともに大総括。「日産リーフ」「トヨタ・ランドクルーザー“FJ”」「トヨタRAV4」などをお題に、いつもの3人が激論(?)を交わす! 上半期ベストデザインの栄冠に輝くのは、このクルマだ!
(前編に戻る)
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遠くから見ても一目で分かる存在感
webCGほった(以下、ほった):えー。前回に続きまして、2026年上半期の振り返りです。続いては(候補車のリストを見る)……日産リーフがいいですかね。
清水草一(以下、清水):大丈夫なの? 受注開始は2025年10月だけど。
ほった:前回も申しましたが、別に権威のある自動車賞とかじゃないからOKでしょ(笑)。それにリーフの納車開始は2026年に入ってからで、2025年のクルマってイメージは、全然ないですしね。
渕野健太郎(以下、渕野):それはよかった。個人的に、この上半期で一番デザインが優れていたのはリーフだと思っていたので。
ほった:ほほぅ。確かになんか、このデザインは玄人好みっぽそうだなとは思っていました(笑)。専門家の目線だと、どのあたりが加点ポイントですか?
渕野:まずプロポーションがよくできてます。どっから見てもしっかりした塊感やスタンスがある。街でも存在感があって、兄貴分の「アリア」とあんまり差がなく見えるんですよ。
清水:そんなにいいですかねぇ?
渕野:欠点としては、ルーフラインがつるっとしすぎているから、後席のヘッドクリアランスがちょっと足りないんですよね。アリアみたいに、リアスポイラーを付けつつ、すっと後ろに抜いたほうが、機能との両立という点ではよかったかもしれない。
それでも、これはすごくよくできたデザインですよ。タイヤも四隅でしっかり踏ん張ってる。オーバーハングが短いし、プロポーションをタイヤにまとわりつかせているんです。
ほった:実際、アピールは強いですよね。遠くから見ても結構存在感がある。
渕野:ただ、水色の訴求色がちょっとね。このデザインをいちばん表現できる色は、これじゃないんじゃないかなぁ。もっと立体が分かりやすいボディーカラーのほうが、高品質感が出たと思うけど。
清水:「フェラーリ・ルーチェ」が似たような水色で登場して、「リーフみたい」って注目を集めたっていう偶然の功績はあるけど(笑)。
ほった:リーフは何色がいいんですかね?
渕野:シルバー系なら立体が分かりやすいでしょう。
このアンバランスさはむしろ個性だ!
清水:ううーん。リーフは全然引っかからないけどなぁ、私には。
ほった:アグリー好きな清水さんには、物足りないかもですね。
清水:顔もフォルムも空気みたいで、なにも感じないよ。
ほった:風に舞う落ち葉ですか(笑)。逆に、清水さんはどのクルマがビビビっときたんです?
清水:断然、トヨタ・ランドクルーザー“FJ”だね! これはすごくいいと思う。そんなに小さくしたわけじゃないのに、“250”(ランドクルーザー“250”)と比べて断然おもちゃっぽくなっていてかわいらしい。存在感があるよね!
渕野:そうですね。
ほった:自分は正直、「もうちょっとなんとかならんかね」って思ったクチなんですが。
渕野:どこがです?
ほった:このクルマってタイ生産で、プラットフォームも他のランドクルーザーと違って「IMV」(トヨタの新興国向けのラダーフレーム)じゃないですか。それもあってか、ランクルと呼ぶにはあまりに造形が別物すぎる。それに、フロントオーバーハングも長すぎでしょ、これは。
清水:それでおもちゃっぽい個性が出てるんじゃん!
ほった:でもデザインスケッチの段階ではかなりのショートオーバーハングでしたよ。この顔は妥協の産物です! そもそも“300”(ランドクルーザー“300”)あたりもそうですけど、トヨタのクロカンって、顔がデカすぎる。横から見たときのバランスが悪いんですよ。「60系」のころの美しさを思い出せ!
清水:だからそれが個性なんだって!
渕野:それにランクル“FJ”も、フロントオーバーハングそのものは短いほうですよ。ただホイールベースが短いので、相対的にフロントセクションが長く見えるんです。確かに、まっとうなカーデザインからするとバランスはいまひとつですが、このクルマに関してはそれが個性になってるし、キャラクター的にはいいかなって思います。
清水:ですよね!
渕野:フロントはかなり絞られてるので、斜め前から見るとバランスも悪くない。確かに真横から見ると長いんですけどね。
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おもちゃっぽい外見の是非を問う
清水:自分が思っているのは、最近のクルマはどれもこれもホイールベースが長すぎるんじゃないかってことなんです。ロングホイールベースでオーバーハングが短いのがカッコいいっていう法則が、自動車デザインを支配してるでしょ。トレッドは限界ギリギリ、なるべく広くとか。どのクルマもそんな感じで、なんか暑苦しいんだよね……。でもこのクルマはその反対をいってる。ちょっと懐かしいし、この不安定な感じがいい。
渕野:あと、このクルマって決して小さくはなくて、車高はむしろ“250”よりもデカいんです。そのぶん車内は頭上空間が広いでしょうし、なにより街なかで見たら、存在感もおそらく強い。
清水:「チョロQ」っぽいですよね。
渕野:与えられたパッケージのなかでどうやって仕上げようかって工夫を、すごく感じます。結果的にとても個性的に仕上がっています。
ほった:いやぁ、ワタシのように既存のランクルを尊崇する人間からしたら、ガチャピンに見えますよ。
清水:ガチャピンはすごいんだぞ。スカイダイビングやモトクロスだってできるんだから。それに、“FJ”だって十分本物でしょ? 悪路走破性も高いだろうし。
ほった:そりゃぁ、性能はバケモンみたいに高いんでしょうけど。
清水:本物じゃん。
ほった:先生、本稿はカーデザインの連載ですぜ? 中身は本物なんでしょうに、デザインに本物みがないって話ですよ。皆だって、ゴリゴリのピュアスポーツがガチャピンみたいなガワ被ってたら、嫌でしょ。
清水:この議論は平行線だねぇ。
ほった:ですね。次いきましょ。
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世界的ベストセラーのカーデザインに思う
ほった:続いて、これまた本物感の薄い新型トヨタRAV4でございます。もう街なかでもちょくちょく見かけますよね。ほとんど目に留まりませんけど。
渕野:存在感が薄くなっちゃったのかな。
清水:今のトヨタは、この手のグラデーショングリルが定番ですよね。悪くはないけど、パッと見、車種が分からない。
ほった:新型は先代を水で薄めて、顔にそのグリルをくっつけただけでしょう。まさに商業主義の権化。昔の「80点主義」を思い出させるカーデザインじゃないですか。先代が持ってた「SUVのカーデザインをリードしてやるぜ!」って志は、完全に消え失せましたね(参照:その1、その2)。
渕野:やっぱり成功したモデルの次は難しいですよ。前の型のイメージを残しながら、商品性を高めないといけないっていうジレンマを感じます。
ほった:マーケティング的には、おそらく100点満点のところに収まってるんでしょう。実際、売れるみたいですし。でも、かつての2代目とか3代目のRAV4と一緒で、全然記憶に残らないクルマになるんじゃないかな。無難の塊みたいで。
清水:いやー、これはこれでいいんじゃないかな。なにしろ世界で1番とか2番に売れてる乗用車なんだから。「ホンダCR-V」ともども、無難になるのはしょうがない。
ほった:そうか。これって世界一売れてるクルマのカーデザインなんだ。だったらなんか、ますます分からなくなる(笑)。
渕野:ただ現行CR-Vのほうは、先代よりぐっと存在感が出ているし、いい意味での無難だと思います。北米では3年以上前に出たクルマですけどね。
ほった:ワタシもCR-Vのほうが断然質感が高いと思うんですけど(参照)。どちらもマーケットインでカーマニア的には圏外のクルマなんですが、RAV4はますます電波の届かないところに去ってった感じ。オサラバです。
清水:仕方ないよ。何度も言うけど、世界一を争う量販車だから。
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上半期のベストデザインは「日産リーフ」……でOK?
ほった:じゃ、そろそろ2026年上半期のベストデザインを発表しましょうか。渕野さんは、お話の感じ日産リーフですよね。
渕野:ですね。リーフは街なかでちゃんとした存在感が出てるのがいい。あの、ちょっとキモいイルミネーショングリルも含めて(笑)。
清水:私はランクル“FJ”。
ほった:ワタシは、個人的嗜好を除くと日産リーフで、嗜好全開だと「ホンダ・スーパーONE」ですかね。
清水:どっちなの?
ほった:どっちもです(笑)。
清水:渕野さんがリーフだから、多数決だとリーフか。
ほった:ですね。非常に日本的で、民主主義的でよろしいかと(笑)。
渕野:でもスーパーONEもランクル“FJ”もすごくいいですよ。自分が買うとしたら、リーフじゃなくてスーパーONEか“FJ”だな。
清水:ええっ!
ほった:選考が混乱してきました(笑)。
渕野:どうせ買うなら、ちょっとキャラクターが立ったやつが欲しいじゃないですか(笑)。でもそういうのを抜きにして、カーデザインとしてよくできてるなと思ったのがリーフなんです。
清水:じゃ、欲しくはないけどいいデザインのリーフが、今年上半期のベストデザインということで(笑)。
ほった:なんちゅう結論ですか。
(語り:渕野健太郎、清水草一、webCG堀田剛資/まとめ=清水草一/写真=JLR、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業/編集=堀田剛資)
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渕野 健太郎
プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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