第685回:セルフカバー的なリバイバルモデル5選
2022.05.09 エディターから一言 拡大 |
いつのころからか自動車業界、なかでも長い歴史を誇るブランドでは、往年の名作をリバイバルさせるのがひとつのビジネススタイルとして定着した。今回は、そんなセルフカバー的コンセプトを成功させた代表的な5モデルをセレクトし、その元ネタとあわせてご紹介することにしよう。
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アルファ・ロメオ・グランスポルト クアトロルオーテ ザガート(1966年/イタリア)
「往年の名車をセルフカバー」というビジネススタイルを開拓したのは、いつごろのどんなモデル? という疑問を抱いた筆者は、脳内記憶や手持ちの文献などで調べた結果、1966年にイタリアの自動車専門誌『クアトロルオーテ』と名門カロッツェリア・ザガート、そして当時は国営企業だったアルファ・ロメオの3社コラボにて製作されたクラシカルなレプリカ風スポーツカー「アルファ・ロメオ・グランスポルト クアトロルオーテ ザガート」という結論をひねり出した。
元ネタとなったのは、1930年前後のヴィンテージ期にアルファ・ロメオとザガートによって製作された伝説の名作「アルファ・ロメオ6C1750グランスポルト」である。
このプロジェクトは、歴史・格式ともにイタリアが世界に誇る『クアトロルオーテ』が誌面にて提案。アルファ・ロメオとザガートがそれに応えるかたちで発足した、と公式には伝えられている。しかし実際には、『クアトロルオーテ』誌の創業者ジャンニ・マゾッキ氏が、同じミラノ在住の友人、エリオ・ザガート氏と夕食をともにした際の雑談からスタート……というのが定説のようだ。
同車はアルファ・ロメオから供給された「ジュリアTI」のエンジンなど、主要コンポーネンツを使用。ザガート社内に保管されていた6C1750グランスポルトの図面からデザインを起こしたボディーを、セルフカバーとして架装することになった。
もともとは50台のみの製作を予定していたとされるものの、結局1965年から1967年までの2年間に、想定の2倍近い92台が製作されたのだから、当時の限定車としてはなかなかのヒット作だったともいえよう。
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フォルクスワーゲン・ニュービートル(1998年/ドイツ)
現代に至る、セルフカバームーブメントの実質的なパイオニアとなったのは、1994年1月に米デトロイトモーターショーにてコンセプトカー「コンセプト1」としてショーデビューののち、1998年に正式リリースされたフォルクスワーゲンの「ニュービートル」とみていいだろう。その元ネタとなったのは、言わずと知れた「フォルクスワーゲン・タイプ1」、通称「ビートル」である。
1938年に「KdF」としてデビューしたビートルは、第2次大戦後に全世界で大ヒットを収めた。そして、40年後の1978年にドイツ本国での生産を終えたのちにも、ブラジルやメキシコなどで生産を継続。2003年7月30日、最後の一台がメキシコ・プエブラにあるフォルクスワーゲン・メヒコの工場からラインオフとなるまでに、総生産台数は約2153万台を達成したとされている。
そのデザインを現代的にアレンジし、オリジナルのRRから前輪駆動に変身したニュービートルも、プエブラ工場を唯一の拠点として生産されて成功を博した。一時は並行して生産されていた元祖ビートルの後継車としてその地位を確立するとともに、「MINI」や「フィアット500」などのフォロワーを生み出した。
2011年には、このコンセプトを継承しつつも、オリジナルのプロポーションをより忠実に再現した後継車「ザ・ビートル」が登場。こちらもプエブラ工場で生産されたのだが、2019年7月をもってフェードアウトした。それまで80年以上にわたって受け継がれてきた「ビートル」の名は、ここでついに途切れてしまうことになった。
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フォード・マスタング(2003年/アメリカ)
1964年のニューヨーク万博にてセンセーショナルなデビューを飾ったフォードの初代「マスタング」。同車は、簡潔で安価な実用車にスポーツカー然としたスタイリッシュなボディーを組み合わせ、エンジンを含む豊富なオプションを選ぶことで、しゃれたクーペやコンバーチブルにも、あるいはスポーツカーに負けない高性能車にも仕立てられるフルチョイスシステムを採用していた。この斬新な戦略はみごとにヒット。自動車史上まれにみる社会現象を巻き起こした。
その後もマスタングは4世代にわたって継続。2代目「マスタングII」以外は一定の成功を収めたのだが、今世紀初頭に登場した5代目では当時のフォードが進めていた「リビングレジェンド」戦略に基づき、偉大な初代マスタングをセルフカバーしたデザインをエクステリアとインテリアの双方に採用した。
5代目マスタングは2003年の米デトロイトモーターショーでデビューし、翌年の同じショーで生産モデルが正式リリース。初代のスタイリングを巧みに継承しつつモダンにアップデートされたエクステリアは、多くの支持を集めた。大規模なフェイスリフトが2009年および2012年に実施されたが、いずれも初代時代の大規模マイナーチェンジを意識したデザイン変更となっていたのは、とてもエンスー的といえよう。
この5代目マスタングの成功を横目で見ていたGMは「シボレー・カマロ」を、クライスラーは「ダッジ・チャレンジャー」を同様のコンセプトでリリース。いずれも現在に至るロングセラーモデルとなっている。
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ベントレー・コンチネンタルGT(2003年/イギリス)
2003年のデビュー以来、現在では3代目に進化。そのどれもが全世界で大成功を収めている「ベントレー・コンチネンタルGT」とそのファミリー。カタログなどメーカー発行のオフィシャルドキュメントにも印象的なシルエットが大きく描かれているのでご存じの向きも多いかもしれないが、コンチネンタルGTには精神的なモチーフとなった偉大な祖先がある。
それは、往年のベントレーが1952年から3年だけ製作した伝説のグランドツアラーで、コンチネンタルGTが登場するまではベントレーの最高傑作ともいわれていた「Rタイプ コンチネンタルH.J.マリナー スポーツサルーン」である。
初代コンチネンタルGTのデザインを手がけたベントレーのデザインチームは、なだらかなスロープを描くファストバックのテールラインやマッシブなフロントフェンダー、キックアップしたリアフェンダーなど、かつてRタイプ コンチネンタルを特徴づけていた優美きわまるボディーラインを巧みに引用。みごと21世紀のクーペとして結実させた。
また300km/hを超える最高速度や、4WDの特質を生かした全天候対応のスタビリティーなど、同時代のスーパースポーツにも匹敵するパフォーマンスを有するという点においても、Rタイプ コンチネンタルの精神を現代によみがえらせたものとして称賛されている。
そして誕生から18年を経た2021年1月26日には、通算8万台目となるコンチネンタルGTが、クルー本社工場からラインオフ。ベントレー史上最高のヒット作となったのだ。
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フィアット500(2007年/イタリア)
自社の成功作のセルフカバー的リバイバルというビジネススタイルにおいて、MINIと並んで最も大きなヒットとなったのは、やはりフィアット500(チンクエチェント)であろう。
その元ネタとなったモデル、今や『ルパン三世』が愛用するクルマとしても世界中で知られることになった「ヌオーヴァ500」は、1957年7月4日にデビュー。イタリアをはじめとする欧州諸国で大ヒットした。また今世紀に入ると、キュートで個性的なフォルムがファッションアイコンやアートのモチーフとしてももてはやされ、フォルクスワーゲンのニュービートルやMINIと同じく、フィアットにも往年の偉大な名作の現代版を求めるリクエストが数多く寄せられていたという。
その要望に応えるかたちで、前輪駆動ながらヌオーヴァ500を現代によみがえられたかのようなスタイルを持つコンセプトカー「トレピウーノ」が、2004年春のジュネーブモーターショーにて初公開された。日本を含む全世界のチンクエチェント愛好家から圧倒的な支持を得たことで、リバイバル生産プロジェクトが本格的にスタートする。
そして期待の新星フィアット500は、ヌオーヴァ500のデビューからきっかり半世紀後となる2007年7月4日、イタリア最大の民放テレビ局「Canal 5」のゴールデンタイムにライブ中継されながら、大々的に世界初公開された。
15年を経た現在も、新生フィアット500は歴史的なヒットを重ねつつ生産を継続中。また2020年には次世代モデルたるピュアEV「500e」も登場。今後はこちらが「チンクエチェント」の系譜を引き継ぐことになるという。
(文=武田公実/写真=武田公実、RMサザビーズ、ステランティス、フォルクスワーゲン、フォード、ベントレー モーターズ/編集=櫻井健一)

武田 公実
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