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第37回:魂動デザインの未来を問う(前編) ―「マツダCX-80」にただよう危険な香り―

2024.08.28 カーデザイン曼荼羅 渕野 健太郎清水 草一
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マツダがようやく……ホントにようやく新型クロスオーバー「CX-80」を発表! FRベースのプラットフォームを用いた新時代の旗手を、カーデザインのプロはどう見るか? 次世代商品群の第1陣が出そろったタイミングで、新時代のマツダデザインを語り尽くす。

デザインにおけるコストパフォーマンスは世界最強!

webCGほった(以下、ほった):今回のテーマはマツダのデザインについてでございます。いや~、ようやく日本でも発表されましたね! CX-80。

渕野健太郎(以下、渕野):今回はCX-80を軸としつつ、基本的にはマツダ全体の話をすればいいですね?

ほった:そんな感じでお願いします。

渕野:私がマツダで一番思うのは、デザインにコスパというものがあるとすれば、一番高いメーカーだと思うんですよ。

清水草一(以下、清水):確かにコスパが高いですよね。あれだけ質感が高くて、デザイン料は実質タダですから。

ほった:配送料無料みたい(笑)。

清水:本当はデザインはタダじゃないんだけど、マツダはタダでいいデザインが買える。

渕野:マツダは特にプロポーションにこだわってるんですよね。プロポーションで違いを出そうとしてるメーカーって、ほかは欧州のプレミアムブランドぐらいしかないんですよ。いつも言ってますけど、ボルボとかポルシェとかランドローバーとか、あとはメルセデスぐらい。そういう視点で見ると、マツダはすごくコスパがいい。誰が見ても高品質に見える。

ここで言う「クルマのプロポーションがいい」っていうのは、単にスポーティーっていうだけじゃなくて、質感が高く見えるってことなんです。プレミアムブランドはそういうところにこだわって高く見せている。つまりマツダ車は“高見え”するんですよね。

清水:でもマツダは、お値段国産車レベルですからねぇ。

渕野:そういうマツダデザインがいつから始まったかというと……。

ほった:かれこれ10年以上は前ですね。

清水:前田育男さんがデザイン部門のトップに立ったのが2009年で、翌年コンセプトカーの「靭(SHINARI)」が発表されて、2012年に3代目「アテンザ」(その後「マツダ6」に改名)が出たという流れですね。

ほった:そうですね。製品としては、アテンザより先に初代「CX-5」が出ていますが。

欧州での世界初公開からおよそ4カ月……。ようやく日本でも発表された「マツダCX-80」。発売は2024年秋の予定だ。(写真:向後一宏)
欧州での世界初公開からおよそ4カ月……。ようやく日本でも発表された「マツダCX-80」。発売は2024年秋の予定だ。(写真:向後一宏)拡大
上から順に「CX-60」「CX-70」「CX-80」「CX-90」。CX-80の登場により、当初計画されていたラージ商品群は、すべてのモデルが出そろうこととなった。
上から順に「CX-60」「CX-70」「CX-80」「CX-90」。CX-80の登場により、当初計画されていたラージ商品群は、すべてのモデルが出そろうこととなった。拡大
マツダのデザインテーマ「魂動-Soul of Motion」を体現するコンセプトカーとして、2010年9月に発表された「靭(SHINARI)」。このクルマの登場が、マツダのデザイン改革のはじまりだった。
マツダのデザインテーマ「魂動-Soul of Motion」を体現するコンセプトカーとして、2010年9月に発表された「靭(SHINARI)」。このクルマの登場が、マツダのデザイン改革のはじまりだった。拡大
2012年10月に受注開始、同年11月に発売された3代目「アテンザ」。前年発表のコンセプトカー「雄(TAKERI)」をベースとした、ダイナミックなデザインが特徴だった。
2012年10月に受注開始、同年11月に発売された3代目「アテンザ」。前年発表のコンセプトカー「雄(TAKERI)」をベースとした、ダイナミックなデザインが特徴だった。拡大
2016年のロサンゼルスオートショーより、コンセプトカー「RXビジョン」と前田育男氏。
2016年のロサンゼルスオートショーより、コンセプトカー「RXビジョン」と前田育男氏。拡大
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ライバルはポルシェか、アストンか

渕野:今のラインナップを見ても、「マツダ2」とか「CX-3」は、もうデビューから結構たってますよね。

ほった:長いですねぇ。マツダ2と同型の最終型「デミオ」が2014年9月発売だから、今年で10年選手です。

渕野:だけど今でもかなり魅力的でしょう。前に清水さんが、「レクサスLBX」の回(その1その2)で「マツダCX-3のほうがカッコイイ!」って言ったじゃないですか。自分もこのクルマはすごく好きで、いまだにカッコいいなと思うんですよ。マツダ2もあれだけコンパクトでありながら躍動感があって、プロポーションもすごくよくて、インテリアの質感も高いですよね。そう考えると、タイムレスな魅力がある。やっぱりデザインの本質的なところが優れているんだと思います。ただ自分にとって1番は、「マツダ3ファストバック」です。これには衝撃を受けましたよ。

清水:カーデザイナーとして。

渕野:この、なだらかなCピラーからリアフェンダーにかけての流れ。普通、Cピラーとフェンダーは分けてデザインするのが常とう手段なんですけど、こんなにつなげて見せるんだなっていうところが……。実際にはマツダ3も分かれてるんですよ。でも分かれていないようになだらかに見せつつ、プロポーションにすごく寄与してる。「こんなことできるんだな」って、カーデザインの新たな可能性を感じました。アストンマーティンが隣にあっても遜色ない存在感がある。

清水:私は常々、「ロードスター」はあのサイズで、「アストンマーティンDB11」に匹敵するデザインだって思ってます! マツダデザインはアストンっぽいのかも。

ほった:大きく出ましたね。

渕野:マツダ3はレンタカーやカーシェアリングでもよく見ますよね。こんなデザインのクルマが、そんなに普通に借りられるっていうのが、そもそもコスパがいい。

清水:アストンはレンタカーじゃ無理ですから!

渕野:「CX-30」もマツダ3と似たような感じですけど、このクルマもやっぱりシルエットに特徴がある。高速道路で遠くからシルエットだけ見えたとき、「『ポルシェ・マカン』かな?」と思ったんです。それくらいキャビンからロアボディーにかけてぐっと張り出してる。これもやっぱりプロポーションがすごくいい。

清水:比較対象はアストンやポルシェなんですねぇ。

2014年9月に受注が開始された4代目「デミオ」。2019年の一部改良に伴い、日本でも車名が海外名の「マツダ2」に改められた。
2014年9月に受注が開始された4代目「デミオ」。2019年の一部改良に伴い、日本でも車名が海外名の「マツダ2」に改められた。拡大
2014年のロサンゼルスオートショーで発表され、翌年2月に日本で発売された「CX-3」。こちらも車齢はすでに満9年を数える。
2014年のロサンゼルスオートショーで発表され、翌年2月に日本で発売された「CX-3」。こちらも車齢はすでに満9年を数える。拡大
今見ても斬新なスタイリングの「マツダ3」。「ワールドカー・オブ・ザ・イヤー」の部門賞で、その年にデビューしたクルマのなかで最も美しいクルマを選出する「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」を受賞している。
今見ても斬新なスタイリングの「マツダ3」。「ワールドカー・オブ・ザ・イヤー」の部門賞で、その年にデビューしたクルマのなかで最も美しいクルマを選出する「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」を受賞している。拡大
2015年に登場した4代目「ロードスター」。あまりにデザインの評価が高いことから、2023年10月の大幅改良(発売は2024年1月)では、「いかにデザインを変えないか」という、通常とは逆の問題で苦労したとか。
2015年に登場した4代目「ロードスター」。あまりにデザインの評価が高いことから、2023年10月の大幅改良(発売は2024年1月)では、「いかにデザインを変えないか」という、通常とは逆の問題で苦労したとか。拡大
これまたプロポーションがナイスなコンパクトSUV「CX-30」。マツダは欧州のプレミアムどころと並んで、プロポーションで勝負しているメーカーなのだ。
これまたプロポーションがナイスなコンパクトSUV「CX-30」。マツダは欧州のプレミアムどころと並んで、プロポーションで勝負しているメーカーなのだ。拡大

新時代の“ラージ商品群”に覚えた違和感

渕野:……で、今回のCX-80なんですが、これは「CX-60」のストレッチ版って立ち位置なので、まずはそのCX-60のデザインから考えてみましょう。皆さんどう感じますか?

清水:今どき、こんなロングノーズ付けてること自体がカッコイイじゃないですか。カッコつけてて、それがサマになってる。

ほった:わたしゃ前のCX-5のほうがカッコイイと思ったなぁ。CX-60も十分ステキなんですが、CX-5や「CX-8」のデザインが輝きすぎているんですよ、私のなかでは。

渕野:CX-60をマツダがFRにした理由ってなんでしたっけ?

ほった:(指で円マークをつくりつつ)お金でしょう……って言ったら言い方が下世話ですけど。マツダはブランドの上級移行をもくろんでますし、つくり手の手間に見合った、ちゃんとお金をとれるクルマをつくりたかったっていうことです。なんだかんだ言っても、高級車=後輪駆動って信仰は強いですからね。

渕野:っていうことは、やっぱり「FRである」っていう事実もそうだけど、それに付随するデザイン、FRらしいプロポーションのデザインであることも、大きいってことですよね。

ほった:デザイナーさんはすっごく苦労したみたいですけど。

渕野:私はCX-60のデザインをぱっと見て、上質だしFRのプロポーションもすごくいいと思ったけれど、これまでのマツダデザインから見ると“勢い”がやや足りないなって感じたんです。

ほった:そうなんです。勢いがないんですよ。

清水:勢い、ない?

ほった:俺らからしたら、魂動デザインっていったらこれじゃないですか(コンセプトカー「靭(SHINARI)」の写真を見せつつ)。既存のマツダのSUVもコンパクトも、ノッポな車形だけどその流れをちゃんとくんできたわけですよね。それからすると、やっぱり落ち着いちゃってる。

渕野:ですね。これがCX-60で、こっちがCX-5、そしてCX-8ですけど(写真を並べる)、CX-5やCX-8は、顔がもうちょっと低いんですよ。そのぶんフードの流れに“タメ”がある。よそでも、例えばトヨタの「クラウン スポーツ」(その1その2)あたりは、極端すぎるぐらいにそれをやってるんですよね。グリルやランプを低い位置にして、そのぶんフードのタメをしっかり付けてるから、キュンって流れを感じる。

CX-60は、そこがこれまでのマツダデザインとは違っている。このクルマをフロントクオーターから見たときに、顔のデカさがバンときて、まずは“絶壁感”を覚えるわけです。

2022年3月に世界初公開、同年6月に日本で受注が開始された「CX-60」。マツダのラージ商品群の第1弾モデルだ。
2022年3月に世界初公開、同年6月に日本で受注が開始された「CX-60」。マツダのラージ商品群の第1弾モデルだ。拡大
上から順に「CX-60」と「CX-5」「CX-8」のサイドビュー。他の2車種が前端にいくほどボンネットが低められていくのに対し、「CX-60」はフードのシルエットは比較的水平基調で、鼻先が高い位置にある。
上から順に「CX-60」と「CX-5」「CX-8」のサイドビュー。他の2車種が前端にいくほどボンネットが低められていくのに対し、「CX-60」はフードのシルエットは比較的水平基調で、鼻先が高い位置にある。拡大
「CX-5」のフロントまわりは、前端にいくにつれ低く抑えられていくボンネットのRで、“タメ”を表現。ボンネットからフロントフェンダーの上を通り、ドアパネルへと回り込むキャラクターラインも躍動的だ。
「CX-5」のフロントまわりは、前端にいくにつれ低く抑えられていくボンネットのRで、“タメ”を表現。ボンネットからフロントフェンダーの上を通り、ドアパネルへと回り込むキャラクターラインも躍動的だ。拡大
こちらは「CX-60」のノーズ。「CX-5」ほどのタメ感はなく、ヘッドランプの位置も高め。またキャラクターラインで躍動感を表現するような手法も取り入れられていない。 
ほった「躍動感より車格感とか、高級感を意識したんでしょうか」
こちらは「CX-60」のノーズ。「CX-5」ほどのタメ感はなく、ヘッドランプの位置も高め。またキャラクターラインで躍動感を表現するような手法も取り入れられていない。 
	ほった「躍動感より車格感とか、高級感を意識したんでしょうか」拡大
ほった「確かに、この顔でグイグイくる感じは、過去のマツダ車にはないものですね」 
清水「『CX-60』はそこがイイと思うんだけどなぁ」
ほった「確かに、この顔でグイグイくる感じは、過去のマツダ車にはないものですね」 
	清水「『CX-60』はそこがイイと思うんだけどなぁ」拡大

このデザインはマーケティングの要望か?

清水:絶壁感ですかぁ。CX-60はそこが魅力だと思うんだけどな。今どき絶壁って珍しいじゃないですか。すごく古典的なカッコよさがあると思うけど。

ほった:ワタシも嫌いではありませんが、やっぱCX-5の顔のほうが好きですね。

渕野:サイドビューでも、CX-60はその絶壁から高い位置で“軸”を通してるから、CX-5あたりに比べるとボディーの全部が高く感じられるんですよね。

もしかしたら、デザイン部門以外からの要望でこの顔の高さにしたのかもしれませんね。例えば北米や中国で存在感を出すのが目的だったり。自分も前の会社でよくそういう話がありました。顔を高くすることで車格以上にクルマを大きく見せようっていう意図が、CX-60にはある気がします。

清水:いや、自分が買う側に立ったら、顔が高いほうがいいですね。人とは違う雰囲気があるじゃないですか。「6発積めるんだぞ」っていう。L型積んだ「スカG」みたいな。

ほった:んでも実際には古いCX-5がまだまだ売れてるわけでしょ? CX-60が出ても、CX-5の人気は落ちてない。

清水:そう、CX-5は売れ続けてる。CX-5のデザインは、それはそれでいいわけですよね?

渕野:CX-5はいいです。ただ私としては、CX-8のほうがもっといい。なぜかというと、CX-5ではフロントからの流れ、勢いを、短いリアが止めてしまって見えるからです。後ろが長いCX-8では、そのままスパーってそれが流れていって、バランスがいい。むしろCX-8が“正”かなって思えるぐらいです。

清水:うーん、正直どっちでもいいというか、どっちもいいけど。

ほった:相変わらず、フロントマスク以外は興味なさそうっすね。

清水「今どき、これほど潔くフロントが絶壁なクルマはないよ!」 
ほった「私も絶壁顔は嫌いじゃないんですが、『CX-60』はキャビンから後ろのフォルムを思うと、もう少し低くてもいい気がするんですよねぇ」
清水「今どき、これほど潔くフロントが絶壁なクルマはないよ!」 
	ほった「私も絶壁顔は嫌いじゃないんですが、『CX-60』はキャビンから後ろのフォルムを思うと、もう少し低くてもいい気がするんですよねぇ」拡大
2代目「プリンス・スカイライン」に1965年から設定された「GT」。鼻先を200mm延ばし、無理やり2リッター直6エンジンを積んだ高性能モデルだった。 
ほった「『L型積んだ~』ってことは3代目以降のモデルなんでしょうが、スカGといえばこれだろ! と思うので、2代目の写真を使わせていただきました」
2代目「プリンス・スカイライン」に1965年から設定された「GT」。鼻先を200mm延ばし、無理やり2リッター直6エンジンを積んだ高性能モデルだった。 
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「CX-5」の人気は「CX-60」の発売以降も健在。2023年は60を僅差で抑えて“日本で一番売れたマツダ車”に。2024年上半期も「マツダ2」に次ぐ2位の位置につけている。
「CX-5」の人気は「CX-60」の発売以降も健在。2023年は60を僅差で抑えて“日本で一番売れたマツダ車”に。2024年上半期も「マツダ2」に次ぐ2位の位置につけている。拡大
3列6人・7人乗りのキャパシティーを確保する、長いキャビンを備えた「CX-8」。このキャビンはデザインの面でも奏功しており、フロントで生まれた勢いがそのままリアへと流れていく、伸びやかな意匠を実現していた。
3列6人・7人乗りのキャパシティーを確保する、長いキャビンを備えた「CX-8」。このキャビンはデザインの面でも奏功しており、フロントで生まれた勢いがそのままリアへと流れていく、伸びやかな意匠を実現していた。拡大

設計から突き付けられた厳しい要件

渕野:……で、ようやく今回のCX-80なんですが、これはCX-60よりホイールベースがだいぶ長くなってますよね? CX-60はフロントのオーバーハングは短く、リアは長く見せていてFRらしいプロポーションに感じられるのですが、CX-80は前後オーバーハングのバランスよりホイールベースの長さのほうが目について、ややダックスフントみたいなプロポーションに見える気がします。

ほった:ほうほう。

渕野:でも、北米専用の「CX-90」はそうは見えないんですよ。確かこれ、ホイールベースは一緒で、リアオーバーハングの長さが違うんですよね。CX-90はリアがしっかり長いんで、ダックスフント感がなくてスパーンと伸びやかに見える。それに対してCX-80は、リアを縮めている。なぜかというと、全長5mを切りたかったから。これもおそらく営業からの要望だろうと思います。

清水:まあ当然の要望でしょう。

渕野:そうなんです。そうなんですけど、マツダはここ10年、特にデザインコンシャスでやってきてて、マツダデザインに対するユーザーの支持がすごく高いですよね? もちろん営業要望は重要なのですが、それでデザインがやりたいことをピュアに表現できなくなるとしたら、本末転倒ってことになるかもしれません。

ほった:うむむ……。ダックスフントとか寸法の要件とかについては、マツダの人が事前取材会でそのとおりの話をしていましたね。それこそ、まったく同じダックスフントって言葉を使って。設計から仕様が届いたとき、最初は「俺はこのクルマやりたくないな。マツダデザインにできないし、カッコよくならない」って、そう思ったそうですよ。だから、これまでと全然違うデザインに挑戦されたとか(参照)。

新しい3列シートSUVの「CX-80」。マツダのデザイン主査で、同車のチーフデザイナーを務める玉谷 聡氏は「既存のマツダ車にはない“豊かさ”を見せることにチャレンジした」という。(写真:向後一宏)
新しい3列シートSUVの「CX-80」。マツダのデザイン主査で、同車のチーフデザイナーを務める玉谷 聡氏は「既存のマツダ車にはない“豊かさ”を見せることにチャレンジした」という。(写真:向後一宏)拡大
「CX-80」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4990×1890×1710mm(ルーフレールありの場合、なしの場合は全高=1705mm)。ホイールベースは3120mm。「CX-8」と比べると全長は+65mm、全幅は+45mm、全高は-25mm、ホイールベースは+190mmとなっている。前後・左右方向にサイズアップした格好だが、それ以上にホイールベースの伸長が著しい。(写真:向後一宏)
「CX-80」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4990×1890×1710mm(ルーフレールありの場合、なしの場合は全高=1705mm)。ホイールベースは3120mm。「CX-8」と比べると全長は+65mm、全幅は+45mm、全高は-25mm、ホイールベースは+190mmとなっている。前後・左右方向にサイズアップした格好だが、それ以上にホイールベースの伸長が著しい。(写真:向後一宏)拡大
北米で販売される「CX-90」のボディーサイズは全長×全幅×全高=5100×1994×1745mm。ホイールベースは「CX-80」と同等だが、全長はこちらのほうが110mm大きい。
北米で販売される「CX-90」のボディーサイズは全長×全幅×全高=5100×1994×1745mm。ホイールベースは「CX-80」と同等だが、全長はこちらのほうが110mm大きい。拡大
「CX80」のフロントビュー。日本の道路事情を考慮して全幅は1.9m未満に抑えられているが、それでも「CX-8」より拡幅したいっぽうで全高は下げられているので、真正面から見たらスタンスはむしろよくなっている。(写真:向後一宏)
「CX80」のフロントビュー。日本の道路事情を考慮して全幅は1.9m未満に抑えられているが、それでも「CX-8」より拡幅したいっぽうで全高は下げられているので、真正面から見たらスタンスはむしろよくなっている。(写真:向後一宏)拡大

ちょっと商売っ気が見えちゃってません?

渕野:そういうお話を聞いても、やっぱりマツダってこれまですごくトガってきてたのが、ちょっとずつ商売っ気が見えてきている気がするんですよ。

清水:厳しいなぁ。これはこれで全然いいと思うけど。ストレッチリムジン的な、間延びしたカッコよさがあるんじゃないですか?

ほった:ワタシは一足お先に実車を見ちゃったんですけど(自慢げ)、確かに堂々としていてカッコよかったです。さっきのような苦労話を聞いた後だと、せんえつながら「そんな厳しい条件のなかで、よくここまでカッコよくできたな!」って思うくらいに。

渕野:いや、質感はすごく高いですよ。でも私的には魂動デザインの期待値はもっと高いんです。

メルセデスやボルボなどのプレミアムブランドは、「全長をここまでにおさめろ」とか、あまり考えないですよ。長いクルマを買う人には長いクルマ、短いクルマを買う人には短いクルマって、それぞれモデルが分かれてるので。そういうプレミアムブランドと比べるのは酷ですが、日本のメーカーは「国内ではこう見せたいけど、米国だとこうしたい」とか、そうした異なる要望を、ひとつのクルマでかなえようとするんです。そうするとデザイン的に妥協点を探すことになります。今のマツダデザインはプレミアムブランドと比べても遜色ないと感じるくらい質感が高いですが、ジレンマも垣間見られますね。今でも、マーケットに応じてクルマをつくり分けたりはしているんですけど……。

清水:うーん。それでもCX-80は十分カッコイイですけどね。SUVは興味ないんで、だいぶ人ごとですけど。

ほった:人ごとじゃダメでしょ!

後編へ続く)

(語り=渕野健太郎/文=清水草一/写真=マツダ、向後一宏、webCG/編集=堀田剛資)

清水「ボクはストレッチリムジン的なカッコよさがあると思うんだけどなぁ」 
ほった「実際、カッコよかったですよ。ただパッケージングとの折り合いとかの苦労もしのばれて、なんか今までのマツダっぽくないというか、そのへんのアプローチはむしろ『……なんかスバルっぽいぞ?』って思っちゃいました」
清水「ボクはストレッチリムジン的なカッコよさがあると思うんだけどなぁ」 
	ほった「実際、カッコよかったですよ。ただパッケージングとの折り合いとかの苦労もしのばれて、なんか今までのマツダっぽくないというか、そのへんのアプローチはむしろ『……なんかスバルっぽいぞ?』って思っちゃいました」拡大
マツダの現行SUV/クロスオーバーの国内ラインナップ。 
ほった「これに加えて、日本未導入のモデルもあるわけでしょう。マツダも、ラインナップそのものは多いんですけどね」  
清水「マーケットに応じて『CX-80』『CX-90』とつくり分けているだけでも、大したものだよ」
マツダの現行SUV/クロスオーバーの国内ラインナップ。 
	ほった「これに加えて、日本未導入のモデルもあるわけでしょう。マツダも、ラインナップそのものは多いんですけどね」  
	清水「マーケットに応じて『CX-80』『CX-90』とつくり分けているだけでも、大したものだよ」拡大
渕野「クルマそのもののデザインは質感が高くていいんですけどね……」 
ほった「マツダのデザイン原理主義は変節しちゃったのか、それともそんなことはないのか。気になるところですねぇ」
渕野「クルマそのもののデザインは質感が高くていいんですけどね……」 
	ほった「マツダのデザイン原理主義は変節しちゃったのか、それともそんなことはないのか。気になるところですねぇ」拡大
渕野 健太郎

渕野 健太郎

プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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