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第51回:俺たちのデザイン・オブ・ザ・イヤー(前編) ―レクサスの底力と「ランクル“70”」の問題提起―

2024.12.25 カーデザイン曼荼羅 渕野 健太郎清水 草一
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「トヨタ・ランドクルーザー“70”」(右上)と3代目「レクサスGX」(左下)。
「トヨタ・ランドクルーザー“70”」(右上)と3代目「レクサスGX」(左下)。拡大

さよなら2024年、おいでませ2025年ということで、今冬も年末年始で「俺たちのデザイン・オブ・ザ・イヤー」を大激論! まずは元カーデザイナーの渕野氏とwebCGのほった編集部員が、それぞれのベスト・オブ・ベストを披露する。2人が推す2024年の一台とは?

2023年6月に世界初公開された3代目「レクサスGX」。それからはや1年半が過ぎ、海外ではとうに発売されたというのに……日本ではいまだに販売されていない、幻のクルマだ。
2023年6月に世界初公開された3代目「レクサスGX」。それからはや1年半が過ぎ、海外ではとうに発売されたというのに……日本ではいまだに販売されていない、幻のクルマだ。拡大
「レクサスGX」の3面図。 
ほった「このフロントマスクですけど、一応これも『スピンドルグリル』だか『スピンドルボディー』なんですかね?」 
清水「全然そうは見えないけどね。それでもちゃんとレクサス車だってわかるデザインになっているのは、スゴいよ」
「レクサスGX」の3面図。 
	ほった「このフロントマスクですけど、一応これも『スピンドルグリル』だか『スピンドルボディー』なんですかね?」 
	清水「全然そうは見えないけどね。それでもちゃんとレクサス車だってわかるデザインになっているのは、スゴいよ」拡大
レクサスのSUVラインナップの頂点に君臨する「LX」。圧倒的なオフロード性能を誇る同車だが、ガラスエリアの意匠や丸みを帯びたボディー形状など、そのデザインはけっこう“乗用車寄り”だ。
レクサスのSUVラインナップの頂点に君臨する「LX」。圧倒的なオフロード性能を誇る同車だが、ガラスエリアの意匠や丸みを帯びたボディー形状など、そのデザインはけっこう“乗用車寄り”だ。拡大

いつになったら発売するのよ!?

webCGほった(以下、ほった):いろいろあった2024年も残りあとわずかとなりました。今年も“年またぎ”の2回で、「俺たちのデザイン・オブ・ザ・イヤー」を語らいたいと思います。誰からにいたしましょう?

清水草一(以下、清水):今回は渕野さんからがいいんじゃないかな?

渕野健太郎(以下、渕野):それでは。自分が選んだのは「レクサスGX」なんですが……でもこれ、まだ日本では発売されてないんですよね。本当はいつ発売だったんですか?

ほった:当初の発表だと(参照)、初版モデルが2024年6月、カタログモデルが今秋ってことでしたが。

渕野:発表は「ランドクルーザー“250”」より先だったのに(参照)、まだ日本に来ない。

清水:もう来ないのかな?

ほった:いや、さすがに来るでしょう(笑)。この期に及んで「やっぱ入れません」じゃ、トヨタの沽券(こけん)にかかわりますよ。しかし、なぜ今年のデザイン1等賞はレクサスGXなんです?

渕野:僕はいつも、新型車の写真を最初にスマホで見るんですよ。まずGXは、そのちっちゃい画像で見ても「おお、これはカッコいい!」って感じたんです。それに「レクサスがこれを出すんだ」っていう驚きもあった。「LX」とは全然違って、カタチ的にもゴツゴツとしたクロカンがレクサスから出るわけで、レクサス車の選択肢が広がったわけです。正直、やられたなって思いました。商売うまいなぁと(笑)。

ほった:確かに武骨系のレクサスって、これが初めてかも。LXは「ランクル“300”の豪華版」みたいな印象で、中身はともかくカタチ的には泥<都会って感じでしたしね。

渕野:最近のブームを敏感にとらえてのコレでしょう? 消費者が欲しがっているものをぱっと出せるところが、やっぱりトヨタはすごい。

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クロカンらしさとレクサスらしさの融合

渕野:それに、以前も言いましたけど(参照)、デザイン的にも姉妹車のランクル“250”よりレクサスGXのほうが、完成度が高いと思うんですよね。特にフロントは。面構成がシンプルだし、“強さ”がすごく感じられて、しかも違和感もない。スピンドルグリルも、LXみたいに単品でガーって見せるデザインとは違って、単純に大きな面を切り欠いてるだけなので、すごくしっくりくる。レクサスの質感、高級感を保ちながら、でも「本格クロカンだよ」っていうデザインになっているんです。

清水:そうですかねぇ……。

ほった:LXラブな清水さんは、同意できないみたいですね(笑)。

清水:ランクル“250”と違うのは、基本的に顔だけ?

ほった:まぁホイールとかテールランプも変わっていますが、基本的には外装は“顔だけ”と思って差し支えないかと。で、これも前に話が出ましたけど、“250”は横から見ると、顔がすごく遠くにある感じがするんですよね(写真参照)。

渕野:そうそう。

ほった:でもGXは、ヘッドランプがちゃんと横に回り込んでて、そういう違和感が解消されてるんです。

渕野:解消というか、正直、僕は“250”よりもGXのほうが先にデザインされた気がするんですよ。こっちがオリジナルじゃないかと。

ほった:なるほど。

渕野:それにランクル“250”は、顔の構成要素が細かく独立していてブロック状になっていることにより、ちょっと「FJクルーザー」的なおもちゃっぽさを感じるんですよね。本格クロカンである“ランクル”っていうブランドとしては、もっと武骨にしてよかったかなと。それに対してこっち(GX)は、明快な立体構成でシンプルかつスマートに仕上がっている。レクサスっていうブランドも含めて、これはまたまた売れちゃうんだろうなと。

ほった:売れるでしょうねぇ。

渕野:早く走ってるところを見てみたいですね。

「レクサスGX」(上)と「トヨタ・ランドクルーザー“250”」(下)は、基本設計を共用する兄弟車だ。エクステリアを見ても、フロントマスクを除くと基本デザインに大きな差異はない。
「レクサスGX」(上)と「トヨタ・ランドクルーザー“250”」(下)は、基本設計を共用する兄弟車だ。エクステリアを見ても、フロントマスクを除くと基本デザインに大きな差異はない。拡大
「レクサスGX」(上)と「トヨタ・ランドクルーザー“250”」(下)の“横顔”の比較。ヘッドランプの形状もあり、後者ではタイヤに対してフロントがやや遠くに、突き出て感じられる。
「レクサスGX」(上)と「トヨタ・ランドクルーザー“250”」(下)の“横顔”の比較。ヘッドランプの形状もあり、後者ではタイヤに対してフロントがやや遠くに、突き出て感じられる。拡大
「トヨタFJクルーザー」(写真左上)と「ランドクルーザー“250”」。FJクルーザーは2006年に北米でデビューした本格クロカンで、遊び心あふれるレトロデザインが特徴だった。
「トヨタFJクルーザー」(写真左上)と「ランドクルーザー“250”」。FJクルーザーは2006年に北米でデビューした本格クロカンで、遊び心あふれるレトロデザインが特徴だった。拡大
渕野「なんでこんなに発売が遅れちゃったんですか?」 
ほった「詳しくは知りませんが、例の認証不正問題のあおりみたいですよ」 
清水「なんだかなぁ」
渕野「なんでこんなに発売が遅れちゃったんですか?」 
	ほった「詳しくは知りませんが、例の認証不正問題のあおりみたいですよ」 
	清水「なんだかなぁ」拡大

顧客の要望をカタチにしたら……

清水:私は実は“250”のほうがカタチが好きなんだけど、こちらは完全にレトロデザインだし、評価の対象外みたいな部分はありますよね。“250”は好きだけど、これを2024年のナンバーワンに選んでしまうのはイカン気がする。やっぱり新しいデザインを評価しないとしょうがないので。その点レクサスGXなら、特に異論は……。

ほった:ないですね(笑)。

清水:ホッタくんはどう思うの?

ほった:クロカン好きの私ですが、正直、レクサスにはゴツゴツ系のクルマはムリだろう、出てこんだろうと、ずーっと思ってたんですよ。だからGXを見たら、もう素直に「お見それしました。私が悪うございました」ってなっちゃった。以前、富士スピードウェイのイベントで実車を拝む機会があったんですけど……実車を拝む機会があったんですけどっ(自慢)、現物はLXより断然自然な印象でしたよ。なので、渕野さんのおっしゃることには、いちいち納得です。

清水:ただね、フォルムはものすごく古典的じゃないですか。そのあたりはデザイナーとしてOKなんですか?

渕野:確かに古典的です。全然気をてらったところがない。強いて言えば、ルーフラインのピークが、トヨタの文法にのっとって車体の後半にきているぐらいかな? Cピラーのあたりにピークがあるのは特徴といえば特徴ですけど、その他の部分、基本的な立体構成は本当に素直にやっている。で、見たら「こういうふうに素直なデザインもいいな……」って思ってしまうわけです。レクサスやトヨタ、マツダって、デザインをこねくり回す傾向がありますけど(笑)、GXは「でもお客さんが求めてるのって、こうじゃない?」っていうのが、素直にかたちになってる。

清水:確かに、お客さんが求めてるのはこれなんでしょう。

ほった:……まずいですね。批判するところがない。(全員笑)

渕野:別に批判しなくていいでしょう(笑)。

清水:あえて言うと、定番すぎて新しさがないんじゃないかと思うけど、逆に、それがむしろ新しくも感じられるんだよなぁ。

渕野:多くのレクサス車がすっごい造形してますけど(笑)、こういうクルマも出せるんだから、やっぱりトヨタはすごいなと思います。

2023年9月の「LEXUS SHOWCASE」より、「レクサスGX」のプロトタイプ。(写真:荒川正幸)
2023年9月の「LEXUS SHOWCASE」より、「レクサスGX」のプロトタイプ。(写真:荒川正幸)拡大
清水「実物はどうだったの?」 
ほった「基本デザインが“250”なのでクロカンらしさは全開なんですが、それでいてちゃんとレクサス車にもなっている感じでした。『LX』よりモノとしてまとまっている印象でしたよ」 
(写真:荒川正幸)
清水「実物はどうだったの?」 
	ほった「基本デザインが“250”なのでクロカンらしさは全開なんですが、それでいてちゃんとレクサス車にもなっている感じでした。『LX』よりモノとしてまとまっている印象でしたよ」 
	(写真:荒川正幸)拡大
真横から見るとやや前傾姿勢で、ルーフのピークが後ろ寄りとなっている。この特徴は、昨今のトヨタ車、レクサス車に共通するものだ。
真横から見るとやや前傾姿勢で、ルーフのピークが後ろ寄りとなっている。この特徴は、昨今のトヨタ車、レクサス車に共通するものだ。拡大
「スピンドルボディー」と称される顔まわりの意匠をはじめ、新世代のレクサスのデザインコンセプトが随所に取り入れられたクロスオーバーSUVの現行「RX」(上)。「GX」(下)はずいぶん趣が異なっている。
「スピンドルボディー」と称される顔まわりの意匠をはじめ、新世代のレクサスのデザインコンセプトが随所に取り入れられたクロスオーバーSUVの現行「RX」(上)。「GX」(下)はずいぶん趣が異なっている。拡大
「こんな形のクルマもできるんだぞ!」という、レクサスデザインの地力を見せつけた「レクサスGX」。やはりトヨタ恐るべし。
「こんな形のクルマもできるんだぞ!」という、レクサスデザインの地力を見せつけた「レクサスGX」。やはりトヨタ恐るべし。拡大

デビュー40周年の問題児

清水さん:じゃあ、次はホッタくんで。

ほった:ワタシのイチ押しは「ランドクルーザー“70”」です。これ結構問題作だと思ってるんですけど(笑)、大丈夫でございましょうか。

清水:大丈夫もなにも、勝手にしてよ(笑)。

ほった:では勝手に(笑)。こやつを挙げた一番の理由は、単純に今年触れたクルマのなかで断トツにカッコよく見えたからです。みんな「古い!」って言いますけどね。

清水:今や「古いことはいいことだ!」じゃ?

ほった:いや。そもそも私の印象はちょっと違って、古いというより時代感がなんか不思議なクルマだなと思うんですよ(参照)。「見る角度によって~」とかそういう感じでもなくて、誕生からの40年の変化がただ雑多にツギハギされて、年輪みたいになってる。それはデザイナーさんが意図したことではなくて、単純に改良を重ねてきたからこそなのかなと。だから「40年前のクルマです」っていうのとも、もちろん今どきのクルマとも違う、このクルマだけの趣があると思うんですよね。

清水:増築を重ねた古い木造旅館みたいな感じはあるね。

ほった:「増築を重ねた」というと、現行型で盛り上がったボンネットもイカしてますよね。これも歴史が生んだ偶然。神がたもうた奇跡の造形ですよ。

清水:そうそう。これって10年前の「30周年記念車」まではなかったよね。それが現行型ではボンネットに段がついてるじゃない。これは、今回ディーゼルを積むために大きなラジエーターを押し込んだからって聞いたんだけど。

ほった:左様です。「1GD-FTV」を冷やすために大型のラジエーターを突っ込んだんですよ。で、斜めにしても空間が足りなくて、結局ボンネットを膨らませたっていう。

清水:それでよりレトロに見える気がするんだよ。

渕野:どんな形になってるんです?

ほった:真横から見るとわかりやすいです(写真参照)。現行型は全体にボンネットの嵩(かさ)が増してて、フロントウィンドウの前で元の高さに戻るんです。技術の人に聞いたら、「前半分ぐらいはラジエーターをなんとか押し込む要件で、後ろ半分は歩行者保護の要件」ということでした。

清水:そうだったんだ! 要件がふたつあったんだね。

渕野:理由はよくわかってなかったけど、確かにそう言われると、フードの厚さに“しっかり感”みたいなものが表れてる気がしますね。

清水:これがすごくカッコいいんだよね。重巡足柄みたいに。

ほった:ネームシップは妙高ですよ。

2023年11月に“再々販売”が開始された「トヨタ・ランドクルーザー“70”」。1984年から連綿と生産が続けられ、世界中で活躍している極地のワークホースだ。(写真:向後一宏)
2023年11月に“再々販売”が開始された「トヨタ・ランドクルーザー“70”」。1984年から連綿と生産が続けられ、世界中で活躍している極地のワークホースだ。(写真:向後一宏)拡大
40年の歳月を感じさせる“増築”の一例。“70”は2007年にV型エンジン搭載のためにフロントが拡幅されており、リアよりフロントのほうが95mmもトレッドが広くなった。結果、フロントの足もとは「ブリスターフェンダーの上に台形のオーバーフェンダー」という、R34 GT-Rもハダシで逃げ出す強引な造形をしているのだ。(写真:向後一宏)
40年の歳月を感じさせる“増築”の一例。“70”は2007年にV型エンジン搭載のためにフロントが拡幅されており、リアよりフロントのほうが95mmもトレッドが広くなった。結果、フロントの足もとは「ブリスターフェンダーの上に台形のオーバーフェンダー」という、R34 GT-Rもハダシで逃げ出す強引な造形をしているのだ。(写真:向後一宏)拡大
古いものと新しいものがごちゃ混ぜになっている点も、“70”の意匠の特徴。基本デザインは40年前のままなのに、ホイールはモダンなツートンカラーで、ヘッドランプはトヨタ自慢の「Bi-Beam LED」である。加えて、ゴツゴツと隆起したいかめしいボンネットも目を引くが……。(写真:向後一宏)
古いものと新しいものがごちゃ混ぜになっている点も、“70”の意匠の特徴。基本デザインは40年前のままなのに、ホイールはモダンなツートンカラーで、ヘッドランプはトヨタ自慢の「Bi-Beam LED」である。加えて、ゴツゴツと隆起したいかめしいボンネットも目を引くが……。(写真:向後一宏)拡大
横から見るとご覧のとおり。これも“増築”の一例で、エンジンの冷却性向上と歩行者保護のため、現行モデルではボンネットの嵩が上げられたのだ。首から後ろの設計に変更はないので、フロントウィンドウの直前で元の高さに戻されているのが面白い。(写真:向後一宏)
横から見るとご覧のとおり。これも“増築”の一例で、エンジンの冷却性向上と歩行者保護のため、現行モデルではボンネットの嵩が上げられたのだ。首から後ろの設計に変更はないので、フロントウィンドウの直前で元の高さに戻されているのが面白い。(写真:向後一宏)拡大
2014年に発売された30周年記念車(上)と、現在のモデル(下)との比較。こうして見ると、ボンネットの変化がわかりやすい。(写真:向後一宏<上>、郡大二郎<下>)
2014年に発売された30周年記念車(上)と、現在のモデル(下)との比較。こうして見ると、ボンネットの変化がわかりやすい。(写真:向後一宏<上>、郡大二郎<下>)拡大

デフォルメされたカーデザインに物申す

ほった:……で、ここからがもうひとつの理由なんですが、ランクル“70”って、今どきのクルマと違って、全然ポケモン化されてないと思うんです。

渕野:ポケモン?

清水:ポケモン!?

ほった:ポケモンです。ゆるキャラ化とか、マンガ化って言ってもいいかもしれない。渕野さんは常々、「遠くから見てもそれと識別できるデザインが重要」ってお話をされますけど、最近のクルマってそれを意識するあまり、なんかデザインがあざとくなってません? 誇張しすぎというか、わかりやすくしすぎというか。

清水:それは「アルファード」とか「ヤリス」のこと?

ほった:いや、もう全般に。ランクル“250”と“70”を並べたら、私の言いたいことが伝わるかも。“250”もすごくいいけど、どっちが大人の品評に耐えられるか、大人のオトコが生涯添い遂げたいと思えるかっつったら……マンガのキャラより黒木 瞳じゃあるまいかと思うんですよ。リアリティーとか素材感とか、カーデザインは進化の過程で大事なものを忘れちまったんじゃないか? “70”のこの人気は、今のカーデザインに対するカウンターパンチなんじゃないか? そういう点も含めて渕野さんの意見を聞いてみたいと思い、コチラのクルマを選んだ次第です。

渕野:そうですねぇ。カーデザインのポケモン化と言われても……。丸目ランプだとポケモンっぽくは見えますよね? だから“70”もポケモンでは?(全員笑)

ほった:いや、「丸目だからポケモンに見える!」ってわけではないと思うんですけど(写真参照)。……でも“70”の目玉は確かにポケモンだな。このヘッドランプだけは見ないでいただい(笑)。

渕野:まぁ確かに、今のクルマはデザインしすぎてるのかもしれません。ちょっとでも個性を出さないといけないという縛りがあるので、なかなか、こういう潔いデザインはしづらいですよね。

ほった:クロカン好きの目線で見ると、“250”もカッコいいけど、やっぱりちょっとポケモンだなって感じちゃうんですよ。

清水:五十歩百歩じゃないの?(全員笑) どっちもカッコいいよ。ポケモンうんぬんは抜きにして。

ほった:ポケモン論に賛同者出ずですか……。

「ランドクルーザー“70”」(上)と「ランドクルーザー“250”」(下)の比較。 
ほった「造形もそうなんですが、ボディーパネルの質感も、最近のクルマは“鉄板です!”って感じがなくなってて……。機械というよりぬいぐるみみたいなデザインになってる気がするんですよねぇ」 
(写真:向後一宏)
「ランドクルーザー“70”」(上)と「ランドクルーザー“250”」(下)の比較。 
	ほった「造形もそうなんですが、ボディーパネルの質感も、最近のクルマは“鉄板です!”って感じがなくなってて……。機械というよりぬいぐるみみたいなデザインになってる気がするんですよねぇ」 
	(写真:向後一宏)拡大
清水「僕らが尊崇する『スズキ・ジムニー』もポケモン化しちゃってるってこと?」 
ほった「いや、端々にわずかな影響は見て取れますが、それでもジムニーは持ちこたえているほうです。ポケモン化にあらがって、頑張ってますよ」
清水「僕らが尊崇する『スズキ・ジムニー』もポケモン化しちゃってるってこと?」 
	ほった「いや、端々にわずかな影響は見て取れますが、それでもジムニーは持ちこたえているほうです。ポケモン化にあらがって、頑張ってますよ」拡大
渕野「丸目ランプのクルマは総じて、ポケモンっぽくなるんじゃないですか?」 
ほった「いやいやいや。丸目でも“40”や“60”はポケモンじゃないでしょう? 最近のクルマは、全体にデフォルメされすぎてるじゃないかってことなんですよ。ワタシが言いたいのは」
渕野「丸目ランプのクルマは総じて、ポケモンっぽくなるんじゃないですか?」 
	ほった「いやいやいや。丸目でも“40”や“60”はポケモンじゃないでしょう? 最近のクルマは、全体にデフォルメされすぎてるじゃないかってことなんですよ。ワタシが言いたいのは」拡大
清水「ポケモンだろうとポケモンじゃなかろうと、“70”も“250”もカッコいいから、いいんじゃない?」 
ほった「確かに、その点については完全に同意なんですがねぇ」
清水「ポケモンだろうとポケモンじゃなかろうと、“70”も“250”もカッコいいから、いいんじゃない?」 
	ほった「確かに、その点については完全に同意なんですがねぇ」拡大

今の自動車は「デザインしすぎ」かも

ほった:渕野さんはいかがですか? “70”は。

渕野:いや別に……。

清水:特に意見はないと(笑)。

渕野:異論はないですけど(笑)。

清水:議論する対象じゃないみたいな(全員笑)。とっくにできあがってるものだからねぇ。

渕野:そうなんですよね。まずこのクルマって、ずーっと継続して生産されているわけですよね。それがまずスゴい。

ほった:スゴすぎます。

渕野:この時代のクロカンって、まだまだ結構走ってるじゃないですか。こういうのを欲してる人は確実にいるとは思いますけど、それを本当につくり続けてるってところがスゴい。ほかのメーカーもそういうのをやればいいのにと思ったりしますよ。実際、昔のクルマのほうが魅力的なところはあるかもしれないし。

ただ、“70”に関してひとつ気になる点を挙げるとすれば、ヘッドライトがただの円じゃなく、縁が「ちょ、ちょ、ちょ」ってなってるところですかね。

ほった:歯車みたいな?

渕野:これがちょっと気になる。

清水:ないほうがいいですか?

渕野:ないほうがいいですね。ほかの部分はすごい本格派なので、ここだけ線が細く感じられます。やるなら、もっとしっかり分厚いデザインでもよかった。

清水:いっそ、デイライトなんてナシにすればよかったと。

ほった:ですよねぇ。ここについては、ワタシは30周年車記念車のほうがいいと思ってるので。

清水:いや、歳月とともに改造を重ねた感じもいいんじゃないかな。

ほった:まぁ確かに。これも由緒ある木造旅館の増築部分ですし。

清水:とにかく今年のカーデザインは、ランクル系が主役だったってことだよね。俺も「“250”がベストかな」と思ったりしたし。

ほった:そういえばさっき、「これを選んでしまうのはイカン!」的なこと言ってましたね。

清水:うん。だから違うのにした。

ほった:では、それについてはまた次回。2025年に持ち越しということで。

後編へ続く)

(語り=渕野健太郎/文=清水草一/写真=トヨタ自動車、スズキ、荒川正幸、向後一宏、郡大二郎、webCG/編集=堀田剛資)

2023年8月に催された「ランドクルーザー“250”」および「ランドクルーザー“70”」再々販モデルの発表会より、会場を飾る歴代ランドクルーザー。うーむ、壮観!
2023年8月に催された「ランドクルーザー“250”」および「ランドクルーザー“70”」再々販モデルの発表会より、会場を飾る歴代ランドクルーザー。うーむ、壮観!拡大
1984年当時の「ランドクルーザー“70”」(写真向かって左奥)と、最新のランドクルーザー“70”(同右手前)。
1984年当時の「ランドクルーザー“70”」(写真向かって左奥)と、最新のランドクルーザー“70”(同右手前)。拡大
LED式の丸いヘッドランプ。妙に凝った意匠をしており、リング状のデイライトには内歯車よろしく内側に“歯”が付けられている。
LED式の丸いヘッドランプ。妙に凝った意匠をしており、リング状のデイライトには内歯車よろしく内側に“歯”が付けられている。拡大
渕野「ほかの部分がいかにも本格クロカン然としているのに、ヘッドランプだけ妙に造作が繊細なんですよね」
渕野「ほかの部分がいかにも本格クロカン然としているのに、ヘッドランプだけ妙に造作が繊細なんですよね」拡大
webCGほったが神とあがめる、2013年発売の「ランドクルーザー“70”」の30周年記念車。 
ほった「本当は日本未導入の、4.5リッターV8ディーゼルモデルだと最高なんですがねぇ」 
清水「それもう、デザインとは関係ないよね?」 
(写真:向後一宏)
webCGほったが神とあがめる、2013年発売の「ランドクルーザー“70”」の30周年記念車。 
	ほった「本当は日本未導入の、4.5リッターV8ディーゼルモデルだと最高なんですがねぇ」 
	清水「それもう、デザインとは関係ないよね?」 
	(写真:向後一宏)拡大
“2024年の私的デザイン・オブ・ザ・イヤー”がテーマだったのに、なんだか“ランクル回”みたいになってしまった今回。いっぽう後編では、「ランドクルーザー“250”」をあえて排し、清水氏が「俺のデザイン・オブ・ザ・イヤー」に推したクルマについて紹介する。次回も乞うご期待。
“2024年の私的デザイン・オブ・ザ・イヤー”がテーマだったのに、なんだか“ランクル回”みたいになってしまった今回。いっぽう後編では、「ランドクルーザー“250”」をあえて排し、清水氏が「俺のデザイン・オブ・ザ・イヤー」に推したクルマについて紹介する。次回も乞うご期待。拡大
渕野 健太郎

渕野 健太郎

プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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