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第7回:発表! 私的カーデザイン大賞(前編) ~デリカミニの挑戦、プリウスの達観~

2023.12.27 カーデザイン曼荼羅 渕野 健太郎清水 草一
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デザインの可能性と限界を示したクルマ

webCGほった(以下、ほった):2023年もすっかり年の瀬。年またぎの2回は、各自の“2023年の推しグルマ”の話をしていきたいと思います。

清水草一(以下、清水):センスが問われるね。

ほった:さっそくですが、ワタシは三菱の「デリカミニ」です。

清水:センスいいね(笑)!

ほった:ワタシの推しグルマというより、今の時代を一番象徴するクルマかなと思うんですよね。軽のトールワゴンで、SUVテイストで、スゴい“キャラもの”感も強いじゃないですか。

渕野健太郎(以下、渕野):デリカミニは、語るべき素材ですよ。

ほった:そんな渕野さんには怒られちゃうかもしれないけど、デザインでできることの限界を示したクルマでもあると思うんです。東京オーサロンで出たときには「三菱のブースにこんなに人が来るなんて!」っていうぐらい注目されていたし、メディアの取り上げ方もスゴかったですけど、結局、工場のキャパシティーとかの問題もあって、直近でも販売台数は月販3777台(2023年10月単月)なんですね。ちょっと待て。「ホンダN-BOX」は2万3000台だぞって話なわけですよ。

渕野:確かに、デリカミニはまだあまり見かけませんね。

清水:それは「eK」シリーズを除いた、デリカミニだけの台数?

ほった:そうです。正直なところ、デリカミニの中身は「eKクロス スペース」そのままですから、「今の時代にデザインでどこまでやれるか?」のバロメーターだと思って見ていたんです。で、ああ、この辺が限度だったのかなぁと。もちろん、前年同期の「eKスペース/eKクロス スペース」の3倍以上売れているので、それでもスゴいことなんですけどね。

清水:そうだよ。僕はeKシリーズとの合算の数字しか分からないんだけど、それだと去年より1万台以上増えてるよ。

ほった:そうなんです。確かにそうなんですけど……11月時点で合計アバウト3万6000台というのは、N-BOXなら2カ月で、しかも単独でさばける数なんですよ(泣)。

webCGほったが2023年を象徴する一台に選んだ「三菱デリカミニ」。本会合の後で、同車が「日本カー・オブ・ザ・イヤー」(COTY)の「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたのには驚いた。 
ほった「自分の慧眼(けいがん)が怖い」
webCGほったが2023年を象徴する一台に選んだ「三菱デリカミニ」。本会合の後で、同車が「日本カー・オブ・ザ・イヤー」(COTY)の「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたのには驚いた。 
	ほった「自分の慧眼(けいがん)が怖い」拡大
一見、まったくの新型車に見える「デリカミニ」だが、実は中身は「eKクロス スペース」を完全に継承。車内に乗り込んでみると、それが分かりやすい。
一見、まったくの新型車に見える「デリカミニ」だが、実は中身は「eKクロス スペース」を完全に継承。車内に乗り込んでみると、それが分かりやすい。拡大
ちなみに「デリカミニ」は、CM総合研究所が主催する「BRAND OF THE YEAR」で、「消費者を動かしたCM展開 特別賞」も受賞している。 
ほった「水川あさみ効果ですかね」
清水「どう考えても、デリ丸。の手柄でしょ」 
(写真:峰 昌弘)
ちなみに「デリカミニ」は、CM総合研究所が主催する「BRAND OF THE YEAR」で、「消費者を動かしたCM展開 特別賞」も受賞している。 
	ほった「水川あさみ効果ですかね」
	清水「どう考えても、デリ丸。の手柄でしょ」 
	(写真:峰 昌弘)拡大
2023年の東京オートサロンで発表された「デリカミニ」。発売前に約1万6000台もの初期受注を集めていたが、工場の生産能力の都合か、はたまたその他の準備不足か、発売初月の販売台数は、なんとわずかに1433台だった。その後は次第に生産・納車の体制が整ってきたようで、2023年12月時点での納車待ちは、3~4カ月となっている。
2023年の東京オートサロンで発表された「デリカミニ」。発売前に約1万6000台もの初期受注を集めていたが、工場の生産能力の都合か、はたまたその他の準備不足か、発売初月の販売台数は、なんとわずかに1433台だった。その後は次第に生産・納車の体制が整ってきたようで、2023年12月時点での納車待ちは、3~4カ月となっている。拡大
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このデザインはガンバっている!

渕野:ほったさんは今、「デザインの限界を示した」って言いましたけど、逆にデザインでクルマの価値を変えられることを示せたのはスゴいと思いました。実際のところ、デリカミニはボンネットフードをベース車と共用してるんですよね。フェンダーも共用だと思うんですけど……。

清水:でも、eKクロス スペースとは、まったく別物のクルマになりました。

渕野:そうなんです。eKクロス スペースだと自分の趣味ではやや物足りないですが、これだったら乗ってみたいなと思わせますね。

ほった:ナルホド。

渕野:デザイン自体も、手を加えた箇所は確かに限られますが、そのやり方はとても凝っています。例えばフェンダーなどの黒い部分は、実は塗装なんですよ。先にブラックを塗装して、マスキングを貼ってからボディー色を塗っているということです(参照)。手間を考えると、量産でそこまでやるのはなかなか難しい。かといって、軽自動車なのでホントにモール類を付けるわけにもいかないし、これもよくやったなと思いました。

ほった:車両規定を数ミリでもはみ出したらもう、軽とは認められなくなっちゃいますからねぇ。

渕野:シールでも、多分なにかがマズかったんでしょう。とにかく、デリカミニはすごく手間がかかってる。

清水:ボディーの塗り分けって、大変なんですね?

渕野:これは大変だと思います。先ほども言ったとおり、最初に黒を塗ってからマスキングしてボディー色を塗るわけですが、マスクをするにもフェンダー部にはケガキ線みたいなものがないんですよ。わざわざ治具を使ってマスクしているんでしょうけど、「こんなことできるんだ、量産車で!」と思いました。

清水:それは、いわゆるツートンカラーより大変なんですか?

渕野:一般的なツートンカラーは、ルーフ部分とか、ピラーから上が別の色、というパターンが多いじゃないですか。そういう場合は、ちょうど継ぎ目のところを樹脂の黒いカバーで隠せたりして、塗り分けが比較的簡単なんですよ。デリカミニは、こんなに複雑な塗り分けを企画して、それに工場が対応できているっていうところがスゴい。「eKクロス」のフェンダーの黒い部分は、確か“貼りもの”じゃないでしたっけ?

ほった:あれはシールでしたね。

渕野:なぜデリカミニは塗装でやったかは、ちょっと分からないんですけど、本当にスゴいなと。

「デリカミニ」(写真左上)と、そのベースとなった「eKクロス スペース」(同右下)。
「デリカミニ」(写真左上)と、そのベースとなった「eKクロス スペース」(同右下)。拡大
ベース車とはまったく異なるイメージの「デリカミニ」だが、外装で大きく変わっているのは、実はこの“顔”のみ。より厳密にいえば、ヘッドランプとグリル、バンパーだけなのだ。あとはアンダーガードやテールゲートガーニッシュといった装飾類で、違いを表現している。
ベース車とはまったく異なるイメージの「デリカミニ」だが、外装で大きく変わっているのは、実はこの“顔”のみ。より厳密にいえば、ヘッドランプとグリル、バンパーだけなのだ。あとはアンダーガードやテールゲートガーニッシュといった装飾類で、違いを表現している。拡大
フェンダーなどの黒い箇所は、実はいずれも塗装である。先にこの部分を黒で塗り、乾いた後でマスキングをして、ボディー色を塗っているという。
フェンダーなどの黒い箇所は、実はいずれも塗装である。先にこの部分を黒で塗り、乾いた後でマスキングをして、ボディー色を塗っているという。拡大
清水「ドアのこのアンダーガードみたいなヤツは、シールですか? これは塗装じゃないですよね」 
渕野「はい。柔らかいシールでした。柔軟で厚みのある、昔風に言うとビトロみたいな感じの」
清水「ドアのこのアンダーガードみたいなヤツは、シールですか? これは塗装じゃないですよね」 
	渕野「はい。柔らかいシールでした。柔軟で厚みのある、昔風に言うとビトロみたいな感じの」拡大
一般的に、ボディーを複数の色で塗り分ける場合は、パネルによって色を変えたり、色の境をウィンドウやピラーで隠すなどして、境界となる部分を極力表に出さないようにしている。塗り分け箇所の仕上げに(あまり)気を使わないで済むからだ。
一般的に、ボディーを複数の色で塗り分ける場合は、パネルによって色を変えたり、色の境をウィンドウやピラーで隠すなどして、境界となる部分を極力表に出さないようにしている。塗り分け箇所の仕上げに(あまり)気を使わないで済むからだ。拡大

もうムリに“顔”をそろえる必要はないんじゃない?

清水:フロントフェイスは別物ですよね。樹脂部分をそっくり変えて。

渕野:そう、本当に前の部分だけで「お、これスゴいよな」と思わせてます。素直にカッコいいですよ。

清水:それと、「ダイナミックシールド」を骨抜きにした点がいいと思うんですよ。

ほった:骨抜きって(笑)。

清水:最初にダイナミックシールドを見たときは(参照)、クセになるエグさだなって思ったんだけど、初登場からずいぶんたって、「もう結構です」みたいになっていたので。

渕野:特徴的なものをずっと使い続けるのって、なかなか難しいんですよ。みんな、「なんのために顔のデザインを統一してるんだろう?」っていうのが、だんだん分からなくなっている。それよりも、クルマ個々の商品性が重要じゃないかな。このクルマも「アウトドア向けだけど、家族が乗るから親しみも必要だよ」っていうところで、こういうデザインになったんだと思います。

清水:とにかく、渕野さんのデリカミニのデザイン評価は高いわけですね。

渕野:いいと思います!

「デリカミニ」のフロントマスク。三菱は、黒い“J”の字のモールをして、このデザインを「ダイナミックシールドの一族」と表しているが……。
「デリカミニ」のフロントマスク。三菱は、黒い“J”の字のモールをして、このデザインを「ダイナミックシールドの一族」と表しているが……。拡大
もともと「ダイナミックシールド」は、太い“く”の字のメッキモールで、左右からバンパー中央部とロワグリルをぎゅっと挟んだものだった。写真は初めてダイナミックシールドが取り入れられた、2代目「アウトランダー」の後期モデル(2015年登場)。
もともと「ダイナミックシールド」は、太い“く”の字のメッキモールで、左右からバンパー中央部とロワグリルをぎゅっと挟んだものだった。写真は初めてダイナミックシールドが取り入れられた、2代目「アウトランダー」の後期モデル(2015年登場)。拡大
渕野「このクルマの外観からは、『アウトドアレジャーにも使われる、家族のためのクルマ』という用途やユーザー像が、よく伝わってくるんですよね。ホントにいいデザインだと思います」
渕野「このクルマの外観からは、『アウトドアレジャーにも使われる、家族のためのクルマ』という用途やユーザー像が、よく伝わってくるんですよね。ホントにいいデザインだと思います」拡大

スタイルがすべて プロポーションこそ命

清水:私は「トヨタ・プリウス」をぜひ取り上げたいんです。なにせフォルムがスゴいインパクトだったじゃないですか。このフロントウィンドウ、自分の「フェラーリ328」と並べても、角度が寝てるんですよ。

ほった:うへぇ! そうなんですか。

清水:フロントウィンドウの傾斜角は「カウンタック」とほぼ同じ。ものスゴいフォルムなんだけど……実はもう、どこか平凡だなと感じ始めてるんです。

ほった:飽きるの早!

清水:抑揚がなくつるーんとしていて、意外とインプレッシブじゃない。10年後に見たら「いまひとつだったね」ってなるのかもしれないなと思って、渕野さんの意見を聞きたいなと。

渕野:自分はいつも「プロポーションだ、シルエットだ」って言ってるじゃないですか。プロポーションとかシルエットで個性を出せたら、もうそれが一番強いんですよ。でも、なかなかそうはならないから、顔だとかボディーサイドだとか、立体構成とかで個性を出すわけです。でもカウンタックとかって、もうパッと見のプロポーションとあの断面、それだけで圧倒的な存在なわけです。プリウスはそういうものに通じるところがあって、だから「プロポーションで個性を出す」っていう点では、このクルマは100点だと思うんですよね。

清水:100点!?

 

清水草一が“今年の一台”に挙げた、新型「トヨタ・プリウス」。先述の「三菱デリカミニ」がCOTYの「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」受賞車なら、こちらはなんと今年のイヤーカー、すなわち「日本カー・オブ・ザ・イヤー」受賞車だ。これは本当に偶然か……?(写真:花村英典)
清水草一が“今年の一台”に挙げた、新型「トヨタ・プリウス」。先述の「三菱デリカミニ」がCOTYの「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」受賞車なら、こちらはなんと今年のイヤーカー、すなわち「日本カー・オブ・ザ・イヤー」受賞車だ。これは本当に偶然か……?(写真:花村英典)拡大
新型「プリウス」の特徴といえば、このスポーツカー然としたフォルム。フロントウィンドウの傾きは、なんと清水氏の所有する「フェラーリ328GTB」より寝ているという。(写真:花村英典)
新型「プリウス」の特徴といえば、このスポーツカー然としたフォルム。フロントウィンドウの傾きは、なんと清水氏の所有する「フェラーリ328GTB」より寝ているという。(写真:花村英典)拡大
スーパーカー世代にとって永遠の憧れである「ランボルギーニ・カウンタック」。 
清水「あの『プリウス』が、カウンタックと並んで語れる日がくるとは……」 
(写真:ランボルギーニ)
スーパーカー世代にとって永遠の憧れである「ランボルギーニ・カウンタック」。 
	清水「あの『プリウス』が、カウンタックと並んで語れる日がくるとは……」 
	(写真:ランボルギーニ)拡大

誰(た)がために鐘は鳴る

渕野:……ただ、オリジナリティーのある素晴らしいデザインなのですが、デザイナーの職業的視点で見ると「どういうお客さんのための、どんな使われ方をするクルマなのか?」というところが、このデザインは分かりにくいと思うんですよね。どういうオーナー像を想定してつくったのかな? と。

ほった:そういうのは、あまり感じないですね。

渕野:そもそもプリウスの購入層って、国内だと比較的年配の方も多いですよね。このデザインがそれにふさわしいかというと、疑問が残ります。実際のユーザーや使われ方を考えると……このデザインを評価するのは難しいですね。

清水:0点ってことでしょうか?

渕野:そうじゃないですが、幅広いユーザーに使われるクルマなら、見た目も使いやすそうなカタチにするべきかなとは思います。クルマって、カッコいいから買うってわけじゃないじゃないですか。どういうシチュエーションで、どういうことをするために買うかが大事で、それが全然見えてこないということなんです。

清水:カッコだけで買う場合も、あるとは思いますよ(笑)!

渕野:カッコだけ、そうですねぇ……。ただ、プリウスってハイブリッドの先駆者ですよね。そのハイブリッド技術が当たり前になった今、それ以外の価値を見いだしにくくなって、すでに偉大な一時代が終わったって感じがしていました。

清水:終わっていたんで、こうできたわけですよね。発表会でエラい人も、それっぽいことを言ってましたけど。

渕野:役割が終わっていたから、スゴく個性を出してきた。トヨタはすべて、百も承知でこれをやったわけです。

ほった:ああ。だからデザインからクルマの役割が伝わってこないんですね。クルマとしての使命を終えていて、かつメーカーもデザイナーも、それを承知でつくったもんだから。そう考えると、大きな達観の果てに至ったカタチに見えてきたなぁ。

ほった「これはトヨタがニュースサイトで公開している、『プリウス』の初期のキースケッチです」 
清水「ハナっからスポーティーというか、浮世離れしたデザインで突っ走る気だったのかねぇ」
ほった「これはトヨタがニュースサイトで公開している、『プリウス』の初期のキースケッチです」 
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ほった「こっちは最終レンダリング。プロジェクトチーフデザイナーの藤原裕司氏は、『ハイブリッドリボーンを合言葉に、数値や理屈だけでは語れない、一目ぼれするデザインを目指した』そうです」
ほった「こっちは最終レンダリング。プロジェクトチーフデザイナーの藤原裕司氏は、『ハイブリッドリボーンを合言葉に、数値や理屈だけでは語れない、一目ぼれするデザインを目指した』そうです」拡大
清水「ハイブリッド車が特別なクルマじゃなくなって、電気自動車や燃料電池車まで出てきちゃって、もう『21世紀に間に合いました』なプリウスの役割は終わっていたんだよ」
清水「ハイブリッド車が特別なクルマじゃなくなって、電気自動車や燃料電池車まで出てきちゃって、もう『21世紀に間に合いました』なプリウスの役割は終わっていたんだよ」拡大

なんだかんだでトヨタはスゴい

渕野:このクルマって、雰囲気的にはすごく空力よさそうだけど、どうなんですか?

ほった:先代より後退しているそうです。本当はルーフのピークが後ろ寄りじゃないほうがいいみたいで。いわゆる、おむすび型。

渕野:ルーフのピークが中央のピラーよりも後ろのほうにある。これって、最近のトヨタが結構採用しているパターンです。初代「レクサスNX」が最初だったかなと思いますが、あそこにピークを持ってくるのって、なかなか難しいんですよ。レクサスNXはすごく新しい提案をしていて、私達も大いに触発されて、そういうシルエットを描いて試行錯誤していました。プリウスはその完成形だと思います。

清水:これは単に、後席の頭上空間をとるためにこうしているわけではないんですか? 実際プリウスの後席って、見た目より頭上空間、あるんですよね。

渕野:それもなくはないですけど、今ではあらゆるトヨタ車がこうなってきてるんですよ。この間出たSUVの「センチュリー」、あれもリアのほうが高い。

ほった:「RAV4」もその気はありますよね。

清水:この間取り上げた「ランクル250」も。

渕野:ただ、ピークが後ろ寄りにあるクルマは、真後ろから見たときに“縦長”に見えがちなんです。そこをどうするかなんですけど、NXもプリウスも、全然不自然なところはないから、やっぱりトヨタのデザインチームのバランス感覚はスゴい。とにかくプリウスには“やりきった感”がありますね。

清水:個人的には、毒がないんじゃないかと思うんですよ。キレイすぎる。プリウスにそれを求めるのはムリがあるとは思いますが。

渕野:いや、個人的にはもっとピュアでもいいかなと思う。どうせだったらもっとシンプルに、このフォルムだけに徹したら、また全然違って、フューチャー感がすごく強くなったんじゃないでしょうか。

清水:なるほど、逆か……。いずれにしろ、10年後が楽しみです(笑)。

後編へ続く)

(語り=渕野健太郎/文=清水草一/写真=三菱自動車、トヨタ自動車、ランボルギーニ、峰 昌弘、花村英典、webCG/編集=堀田剛資)

「プリウス」のサイドビューを見ると、ルーフのピーク(一番高い部分)が後席の上あたりにきている。先代は車体の中央付近にピークがあったが、実はそのほうが空気抵抗は小さくて済む。この形状は“デザイン重視”のものなのだ。
「プリウス」のサイドビューを見ると、ルーフのピーク(一番高い部分)が後席の上あたりにきている。先代は車体の中央付近にピークがあったが、実はそのほうが空気抵抗は小さくて済む。この形状は“デザイン重視”のものなのだ。拡大
通常、ピークを後ろ寄りにしたクルマでは、リアビューがタテに伸びて見えがちなのだが、「プリウス」にはそうした違和感はない。
通常、ピークを後ろ寄りにしたクルマでは、リアビューがタテに伸びて見えがちなのだが、「プリウス」にはそうした違和感はない。拡大
2014年に登場した初代「レクサスNX」。トヨタの“後ろ上がり”なデザインは、このモデルから始まった。
2014年に登場した初代「レクサスNX」。トヨタの“後ろ上がり”なデザインは、このモデルから始まった。拡大
渕野「個人的には『プリウス』はよりシンプルに徹するべきだったと思います。ドアの下からリアに伸びる折れ線とかも、必要なかったんじゃないかな」
渕野「個人的には『プリウス』はよりシンプルに徹するべきだったと思います。ドアの下からリアに伸びる折れ線とかも、必要なかったんじゃないかな」拡大
清水「10年後、このクルマがどんな風に語られているか、楽しみだねぇ」
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渕野 健太郎

渕野 健太郎

プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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