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第72回:「オートモビル カウンシル」回顧録(後編) ―マツダ史上最高傑作が喚起する「魂動デザイン」への期待と不安―

2025.06.04 カーデザイン曼荼羅 渕野 健太郎清水 草一
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「オートモビル カウンシル2025」より、マツダブースに展示されたコンセプトモデル「ビジョン クーペ」。
「オートモビル カウンシル2025」より、マツダブースに展示されたコンセプトモデル「ビジョン クーペ」。拡大

ヘリテージカーの祭典においてさえ、ひときわ輝いて見えたマツダのコンセプトカー群。「オートモビル カウンシル2025」に出展された2台の快作に、カーデザインの識者はなにを思ったのか? 「魂動デザイン」の未来に寄せる、期待と不安を語り合う。

前編へ戻る)

「マツダ3」の原型となった「魁(かい)コンセプト」。「ビジョン クーペ」とともに、2017年の東京モーターショーでお披露目された。
「マツダ3」の原型となった「魁(かい)コンセプト」。「ビジョン クーペ」とともに、2017年の東京モーターショーでお披露目された。拡大
渕野「やっぱり『魁コンセプト』は、マツダのなかでも最高傑作だと思うんですよね」
渕野「やっぱり『魁コンセプト』は、マツダのなかでも最高傑作だと思うんですよね」拡大
本稿には全く登場しないが、コンセプトモデルとしては2005年発表の「先駆(せんく)」も展示されていた。4シーターのロータリースポーツというふれこみだった。
本稿には全く登場しないが、コンセプトモデルとしては2005年発表の「先駆(せんく)」も展示されていた。4シーターのロータリースポーツというふれこみだった。拡大
「ジウジアーロが来る!」ということで、マツダが用意したであろう「S8P」。初代「ルーチェ」の原型となったモデルで、手がけたのはもちろん、ベルトーネ時代のジウジアーロ氏だ。ほとんどお目にかかる機会のない秘蔵のプロトタイプだが、ふたりのお眼鏡にはかなわなかったようだ。
「ジウジアーロが来る!」ということで、マツダが用意したであろう「S8P」。初代「ルーチェ」の原型となったモデルで、手がけたのはもちろん、ベルトーネ時代のジウジアーロ氏だ。ほとんどお目にかかる機会のない秘蔵のプロトタイプだが、ふたりのお眼鏡にはかなわなかったようだ。拡大
ほった「一応、ガンディーニの『ランチア・ストラトス ゼロ』なんかも来てたんですけどね」 
清水「そういう高尚なのは、よそのメディアに任せよう」
ほった「一応、ガンディーニの『ランチア・ストラトス ゼロ』なんかも来てたんですけどね」 
	清水「そういう高尚なのは、よそのメディアに任せよう」拡大

「ストラトス ゼロ」よりマツダが気になる

webCGほった(以下、ほった):今回のオートモビル カウンシルの目玉は、ジウジアーロさんの来場と関連展示でしたけど、ほかにおふたりが注目したものは、なにかありました?

渕野健太郎(以下、渕野):自分はマツダの展示ですね。

清水草一(以下、清水):私もです!

ほった:あらら。なんかご高名なクラシックカーとかショーカーが出てくるかと思ってたんですが。「ランチア・ストラトス ゼロ」とかじゃなくていいんですか? 写真いっぱい用意したんだけど。

清水:そういうご高名なのは、よそのメディアに任せよう。

渕野:スゴいクルマでしたけど、この連載で話すようなことは、あまりなさそうですしね。で、マツダの話なんですけど、今回のオートモビル カウンシルにも、いつものように国内の自動車メーカーが出展していましたよね。それで、「過去が見た未来」って共通テーマに合わせたのか、みんなそろって古いショーカーを持ってきてた。トヨタは「4500GT」、三菱は「HSR-II」っていう具合で。

ほった:ゴーイング・マイ・ウェ~イなホンダは除いて(笑)。

渕野:そうでしたね(笑)。しかし、なかでもマツダは気合が入ってました。彼らだけは、古いのに加えて最近のショーカーも2台持ってきてたんですよね。「ビジョン クーペ」と、「マツダ3」のベースになった「魁(かい)コンセプト」。特に後者は、マツダの最高傑作なんじゃないかと思うんですよ。初めて見たとき、「こんなの出しちゃって、これから先どうするんだ!?」って思うぐらい(笑)、ハッとさせられました。

ほった:マツダの展示っていったら、ブースにはジウジアーロさんにつくってもらった往年のプロトタイプもあったんですけど、それより最近のショーカー2台ですか。

渕野:最近の2台です。この連載でも散々触れてきましたけど、最近のマツダ車のデザイン、その表情の変化みたいなものは、やっぱりスゴいと思うんですよ。そういうものの原点になっているのが、この2台なんです。

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今の「魂動デザイン」はSUVには不向きでは?

渕野:ブースでは「マツダデザインヒストリー」っていう解説展示もありましたけど、魂動の前のデザインコンセプトってなんだったっけ? って思って見たら、「流(NAGARE)」だったんですよね。3代目「プレマシー」とかの。あれはちょっとグラフィック頼りで短絡的すぎた感じがありますけど。

清水:「水の流れです」って言って、波紋みたいなラインをボディーサイドに入れられてもねぇ。

渕野:基本的にはシルエット全体で流れを感じさせるコンセプトだったんだと思いますけど、クルマのシルエットって、そう都合のいいものにはできないじゃないですか。それに対して、その後の魂動デザインは、シルエットにかかわらずいろんなものに適応するようにできていた。やっぱり、ここがひとつの到達点だったと思うんですよ。

ほった:それはもう、マジで同意ですけど……。ただ今回あらためてビジョン クーペを見て思ったんですけど、最新のマツダ車に取り入れられてる魂動デザインって、やっぱり背が低いクルマに最適化されたものなんじゃないですかね?

清水:魂動デザインのなかでも、ちまたで第2世代だとか第2フェーズだとかって言われてるやつね。

ほった:そうそう。コンセプトカーはスポーツカー(RXビジョン)とセダン(ビジョン クーペ)だからよかったけど、あのモチーフをそのままSUVに使っちゃったから、「CX-60」とか「CX-80」はボディーが厚すぎるというか、タテ方向にちょっと冗長に見える気がするんですよ。

渕野:そうですね。期待値としては、やっぱりビジョン クーペぐらいの緊張感を求めてしまいますね。

清水:いやぁ、それはしょうがないじゃん! 世界的にSUVしか売れないんだから。それを言ったら酷でしょ。

ほった:それはそうなんですけど、世の潮流がSUVだってのは、とうの昔にわかってたことじゃないですか。だったらハナっから、SUVでもハマるデザインを用意しときなさいよって話なんです。

2006年11月のロサンゼルスショーで発表されたコンセプトモデル「流(ながれ)」。北米のデザインスタジオで製作されたモデルだった。
2006年11月のロサンゼルスショーで発表されたコンセプトモデル「流(ながれ)」。北米のデザインスタジオで製作されたモデルだった。拡大
マツダは一時、自然界の動きやエネルギーなどを造形やラインで表現する、「流(NAGARE)」デザインを標榜(ひょうぼう)していたが、このコンセプトは市販車への導入が中途半端で、長続きしなかった。写真は3代目「プレマシー」(2010-2018年)。
マツダは一時、自然界の動きやエネルギーなどを造形やラインで表現する、「流(NAGARE)」デザインを標榜(ひょうぼう)していたが、このコンセプトは市販車への導入が中途半端で、長続きしなかった。写真は3代目「プレマシー」(2010-2018年)。拡大
2015年の東京モーターショーで発表された「RXビジョン」。今日のマツダの市販車にも導入される、いわゆる第2世代の「魂動デザイン」を体現した最初のショーカーだった。
2015年の東京モーターショーで発表された「RXビジョン」。今日のマツダの市販車にも導入される、いわゆる第2世代の「魂動デザイン」を体現した最初のショーカーだった。拡大
2017年発表の「ビジョン クーペ」。第2世代「魂動デザイン」を具現したショーカーは国内外で高い評価を集めたが、いずれも“背の低いクルマ”だった。
2017年発表の「ビジョン クーペ」。第2世代「魂動デザイン」を具現したショーカーは国内外で高い評価を集めたが、いずれも“背の低いクルマ”だった。拡大
2022年に満を持してデビューした「CX-60」。大きくえぐりこまれたドアパネルなどに「RXビジョン」「ビジョン クーペ」のモチーフが見られるのだが……。
2022年に満を持してデビューした「CX-60」。大きくえぐりこまれたドアパネルなどに「RXビジョン」「ビジョン クーペ」のモチーフが見られるのだが……。拡大

ショーカーが喚起した期待に市販車が届いていない?

渕野:それに、マツダって今、「次のモデルチェンジをどうするんだろう」っていうのが非常に気になるんですよ。さっき挙げたマツダ3とか、特に。

ほった:あそこまでやり切った感があって、次またなにか出せるのかな? さらに突き抜けてほしいって期待感もありつつ、不安もありつつ。

清水:確かにマツダ3みたいなモデルがあって、その前にすごいショーカーもいくつかあったけど、現状の市販車でさえ俯瞰(ふかん)すると期待値に届いてないのが実情だよね。販売の中心がSUVだからなのもあると思うけど。

渕野:もちろん、すばらしいものもありますけどね。マツダ3と「CX-30」はめちゃくちゃスゴいと思いますし、「デミオ/マツダ2」も、もうデビューからずいぶんたつのに全然新鮮さを失ってない。あと、やっぱり「ロードスター」。そのあたりは純粋なデザインをしているんだけど……。CX-80とか、最近中国で出た「EZ-6」なんかを見ていると、ちょっとずつ「そうはいっても商売ですから」っていうのが、出てきている気がするんですよ。

ほった:それ、前にもおっしゃってましたね。(その1その2

渕野:もちろん、これはビジネスとのバランスの話ですし、必ずしもショーカーがよくて市販車がダメっていうことじゃないです。さっき言ったCX-30なんか、あの値段であの質感が出せるんですから、いい流れはあるんですよ。それがこの先どうなるのか、どう商売と折り合いをつけていくのか……。

ほった:それで今までのクルマを超えるものが、本当に出てくるのか?

清水:それは難しいかもって思ってしまうねぇ。それに、今のマツダはデザインも大事だけど、メカのほうも頑張っていただかないと。特にパワートレイン!

ほった:SKYACTIV-Z」にはゼッタイに成功してもらわないとマズいですよね。「X」はなかったことにして……。

渕野氏が「これはスゴい!」と太鼓判を押す現行マツダ車。まずは、本稿でも何度も登場している「マツダ3」。
渕野氏が「これはスゴい!」と太鼓判を押す現行マツダ車。まずは、本稿でも何度も登場している「マツダ3」。拡大
コンパクトクロスオーバーの「CX-30」。
コンパクトクロスオーバーの「CX-30」。拡大
「マツダ2」は4代目「デミオ」だった時代も含めると、モデルライフが10年を超すご長寿カーだ。
「マツダ2」は4代目「デミオ」だった時代も含めると、モデルライフが10年を超すご長寿カーだ。拡大
そしてやっぱり、「ロードスター」である。
そしてやっぱり、「ロードスター」である。拡大
2024年4月の北京ショーでマツダが発表した「EZ-6」。長安マツダが開発・製造する4ドアセダンで、電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)が用意される。
2024年4月の北京ショーでマツダが発表した「EZ-6」。長安マツダが開発・製造する4ドアセダンで、電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)が用意される。拡大

“美”でピンチを乗り切るのにも限度がある

清水:SKYACTIV-Xは本当に大失敗だったね。あれだけのポカをメカのほうでいくつもやっていながら、いまだにブランドイメージは高いし、黒字も維持しているんだから、マツダはスゴい。それを支えているマツダのデザイン力もスゴいよ。確かにスゴいんだけど……やっぱりメカがね。マツダ3の形はすばらしいけど、走ってみると足もパワートレインもイマイチでしょ。「ホンダ・シビック」なんかと比べちゃうと(参照)。

渕野:そこはやっぱり、乖離(かいり)があるんですか?

ほった:うーん。イマドキのクルマなんで、単体で見てそこまでヒドいってことはないんですけど……。正直、あのデザインに比べると、走りのほうは見どころに乏しいですね。しかもライバルの進化がスゴすぎて、置いてけぼりを食ってる感じです。シビックなんかとじかに乗り比べたら、残酷だけど「やっぱ、あっちのほうが運転してて気持ちいいな」ってなっちゃう。

渕野:そういえば、マツダは今、高性能版みたいなものがないじゃないですか。「タイプR」みたいなのが。あれはスバルと一緒で、CAFE規制(※)とかでバランスをとらざるを得ないからですか?

ほった:それもあると思いますけど、もっと単純に、マーケットに買ってくれる人がいないって思ってるんじゃないかな。

渕野:マツダのファンはそういうのが好きな気がするんだけどなぁ。

ほった:どうなんでしょうね。昔は「マツダスピード アテンザ/アクセラ」なんてのもありましたけど、最後までマイナーだったし。

清水:そうだねぇ。それに、今は高性能版がどうこうじゃなくて、まずは普通のモデルのメカをもうちょっとなんとかしてほしい。これ以上デザインに頼るのは、もうムリだから。いくらカッコいいショーカーでイメージアップしても、自分のクルマがそうなるわけじゃないし。

渕野:それはもちろんそうです。実際、ショーカーなんてのはハリボテみたいなもので、自由なんですよ。量産となると全然レベルが違いますから。まぁそれでも、マツダは市販車でも頑張ってはいるんですけど。

※Corporate Average Fuel Efficiency=企業別平均燃費基準。メーカー別で平均燃費/二酸化炭素排出量を算出し、一定の基準を超えた場合は、マーケットによっては罰金が科せられたりする。

「SPCCI」という独自の燃焼技術により、ガソリンエンジンでありながらディーゼルエンジン並みの圧縮比を実現した「SKYACTIV-X」。複雑で高価なわりに恩恵が少なく、人気を得るには至らなかった。
「SPCCI」という独自の燃焼技術により、ガソリンエンジンでありながらディーゼルエンジン並みの圧縮比を実現した「SKYACTIV-X」。複雑で高価なわりに恩恵が少なく、人気を得るには至らなかった。拡大
最高出力264PSの2.3リッター直噴ターボエンジンを搭載した、過激なホットハッチ「マツダスピード アクセラ」。初代、2代目とアクセラに設定されたが、3代目以降のモデルに引き継がれることはなかった。写真は2代目。
最高出力264PSの2.3リッター直噴ターボエンジンを搭載した、過激なホットハッチ「マツダスピード アクセラ」。初代、2代目とアクセラに設定されたが、3代目以降のモデルに引き継がれることはなかった。写真は2代目。拡大
同じエンジンと4WDを組み合わせた「マツダスピード アテンザ」だが、こちらに至っては1世代で姿を消している。
同じエンジンと4WDを組み合わせた「マツダスピード アテンザ」だが、こちらに至っては1世代で姿を消している。拡大
マツダのファンに見られる「スポーツカーが好き」「スポーツドライビングが好き」というマインドと、「バカっ速いセダン/ハッチバックが好き」というマインドとは、似ているようで結構違うものなのかもしれない。写真は「ロードスター・パーティレース」の様子。
マツダのファンに見られる「スポーツカーが好き」「スポーツドライビングが好き」というマインドと、「バカっ速いセダン/ハッチバックが好き」というマインドとは、似ているようで結構違うものなのかもしれない。写真は「ロードスター・パーティレース」の様子。拡大

未来のマツダデザインはどこへ行く?

ほった:今の魂動デザインについては、フォーカスするクルマにもズレがあると思います。今回も展示車にはセダンとハッチバックを持ってきてたけど、そんなクルマでいくらいいデザインをつくってても、今のご時世、意味がない。あっと言わせるようなSUVのショーカーは出せないもんですかね。

渕野:自分もそう思います。SUVの比率で魂動デザインを徹底追求したようなものが出れば……。ショーカーではないですけど、この前、中国で「EZ-60」というのが出たじゃないですか。次期型「CX-5」なんじゃないかってウワサもありましたが。(写真を見せる)

ほった:うーん、なんかリアクションが出てこないな。

清水:なんかカッコいいね、くらいしか(笑)。

渕野:オートモビル カウンシルに出ていた2台に比べると、ちょっと弱いですよね。地味というか。

ほった:実物を見ていないから意見を言いづらいですけど、なんつーか、想定の範囲内ですよね。「靭(しなり)」とかRXビジョンのときのような衝撃は……。

清水:それは想定の範囲内だけどさ、ここまで特定のデザインコンセプトで極めちゃうと、後は想定の範囲内でブラッシュアップしていくしかないんじゃない?

渕野:でも、マツダデザインにはもうひとつ流れがありますよね? この間、青山のショールーム……ていうかブランド施設みたいな場所で、「アイコニックSP」をじっくり見てきたんです。あれは、これまでの魂動デザインとはちょっと違う感じで、もっとボリューミーでしょ? プラン(俯瞰)で見ると絞り込みが強くて、キャラクターラインも全くない。こういう方向性はあるかもしれないなと。

清水:あれは確かにスゴいけど……。

渕野:真上から見たらすごい抑揚なんですよ。それでいて、一見シンプル。次のマツダデザインはこっちの方向に行くのかなと思いつつ……じゃあこれを普通のパッケージに落とし込めるのか。それこそSUVとかでどう表現するんだろう? っていうのは、あんまり想像つかないんですよね。

ほった:いや、ムリなんじゃないですかね。前にも言いましたけど、あれは背が低いクルマどころか、コンパクトスポーツって車種だけに特化したデザインだと思いますよ。実用車であんな絞り込みしたら、なかの人や荷物がつぶれちゃう。

2025年4月の上海ショーで発表された「EZ-60」。「EZ-6」に次ぐ新エネルギー車の第2弾で、こちらはクロスオーバーSUVとなっている。
2025年4月の上海ショーで発表された「EZ-60」。「EZ-6」に次ぐ新エネルギー車の第2弾で、こちらはクロスオーバーSUVとなっている。拡大
ラインナップは、「EZ-6」と同じく電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)の2本立て。2025年内の量産化を予定している。
ラインナップは、「EZ-6」と同じく電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)の2本立て。2025年内の量産化を予定している。拡大
こちらは2024年の北京ショーで発表されたコンセプトモデル「創(あらた)」。「EZ-60」を示唆するモデルだった。
こちらは2024年の北京ショーで発表されたコンセプトモデル「創(あらた)」。「EZ-60」を示唆するモデルだった。拡大
2025年の上海ショーにおける、マツダのプレスカンファレンスの様子。 
ほった「そういえば、『創』も『EZ-6』も『EZ-60』も、まだ日本ではお披露目されていませんよね。あのデザインコンセプトは、中国専用ってことなのかな?」 
清水「もしこれが、グローバルに適用する新デザインなんだとしたら……時代の流れを感じるねぇ」
2025年の上海ショーにおける、マツダのプレスカンファレンスの様子。 
	ほった「そういえば、『創』も『EZ-6』も『EZ-60』も、まだ日本ではお披露目されていませんよね。あのデザインコンセプトは、中国専用ってことなのかな?」 
	清水「もしこれが、グローバルに適用する新デザインなんだとしたら……時代の流れを感じるねぇ」拡大
2023年のジャパンモビリティショーで発表された、小型スポーツカーのコンセプトモデル「アイコニックSP」。
2023年のジャパンモビリティショーで発表された、小型スポーツカーのコンセプトモデル「アイコニックSP」。拡大

デザインで表現したものを裏切ってはいけない

渕野:正直、マツダとスバルっていう両極端な存在は、国内のメーカーのなかでも個性が際立ってますよね。そういう色合いは残っていってほしいんですよ。もちろん商売あっての話ではあるんですが。

ほった:今のところ、両社ともに極端路線でうまくいってますからね。この先はわかりませんが。

清水:マツダのデザインは、今の前田育男さん体制が始まって15年ぐらいですよね。例えばBMWも、過去15年くらいいろいろ苦しんで、キドニーグリルをばかデカくしたりとかいろいろやって(笑)、もがきながらブランドイメージをじわじわ上げてきたと思うんです。マツダもそういう感じで、もがくしかないんじゃないでしょうか。

ほった:で、それと同時にメカも磨いてほしいと。

清水:そう! マツダデザインは今の延長線上で頑張りつつ、メカのほうがもうちょっとついてきてくれれば。

渕野:そうですね。デザインも結局は機能の表現で、要は“期待値”なわけです。そのクルマの期待値を表現しているわけだから、中身はやっぱりリンクさせてほしい。

ほった:なるほどですねぇ。……なんか、今回は完全にオートモビル カウンシルの話じゃなくなっちゃいましたね。とんだタイトル詐欺だ(笑)。

清水:たまには、そういう回があってもいいでしょ。

(語り=渕野健太郎/文=清水草一/写真=マツダ、webCG/編集=堀田剛資)

2009年にデザイン本部長に就任し、今日のマツダデザインの基を築いた前田育男氏。今は、デザイン・ブランドスタイル監修を行うシニアフェローとなっている。
2009年にデザイン本部長に就任し、今日のマツダデザインの基を築いた前田育男氏。今は、デザイン・ブランドスタイル監修を行うシニアフェローとなっている。拡大
2017年の東京モーターショーより、ステージに展示された「魁コンセプト」。 
ほった「そもそもマツダって、2017年以来、ブランド全体の新しいデザインコンセプトを示したショーカーを発表してないんですよね。『アイコニックSP』はどういう扱いなんだろう? って感じだし」 
清水「だから、『この先のデザインをどうするのか?』っていう漠然とした不透明感があるのかもしれないね」
2017年の東京モーターショーより、ステージに展示された「魁コンセプト」。 
	ほった「そもそもマツダって、2017年以来、ブランド全体の新しいデザインコンセプトを示したショーカーを発表してないんですよね。『アイコニックSP』はどういう扱いなんだろう? って感じだし」 
	清水「だから、『この先のデザインをどうするのか?』っていう漠然とした不透明感があるのかもしれないね」拡大
同じく2017年の東京モーターショーより、コンセプトモデルの「ビジョン クーペ」。 
ほった「ひょっとしたら、今年のジャパンモビリティショーで、でっかい花火が打ち上がるかもしれませんよ」 
清水「それもいいけど、そろそろメカのほうも頑張ったほうが……」
同じく2017年の東京モーターショーより、コンセプトモデルの「ビジョン クーペ」。 
	ほった「ひょっとしたら、今年のジャパンモビリティショーで、でっかい花火が打ち上がるかもしれませんよ」 
	清水「それもいいけど、そろそろメカのほうも頑張ったほうが……」拡大
渕野 健太郎

渕野 健太郎

プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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