求む! 趣味性のあるクルマ
国内自動車市場の2019年前半を振り返る
2019.08.16
デイリーコラム
今の日本は“軽頼み”?
日本の国内販売台数は、バブル経済絶頂の1990年に778万台のピークを迎えた。その後はほぼ一貫して減り続け、リーマンショックの影響を受けた2009年から東日本大震災が発生した2011年までは500万台を下回った。その後は回復へと向かったものの、2018年は527万台だから、1990年の68%にとどまっている。果たして2019年はどうなのか? 直近の2019年1~7月で途中経過を振り返りつつ、考察したい。
2019年の1~7月には、速報値で321万台が国内で販売され、対前年比は1.2%の増加だった。ただし数値は微増であり、2019年10月に消費増税が行われるとはいえ、その駆け込み需要ではないと考えられる。
駆け込み需要が生じない理由は、クルマの売れ方と関係がある。新車として販売されたクルマは今、4割近くが軽自動車なのである。今の販売の主力は日常の移動に使われる実用車だから、ユーザーは損得勘定をして、その是非を冷静に見定める。愛車の車検が満了する時期でないと、容易に新車には乗り換えない。これは、この数年間にクルマの売れ行きが上向きにならない理由にも通じる。
消費増税後は、自動車税が年額1000~4500円の範囲で減税され、自動車取得税に代わって施行される環境性能割の税率も1年間限定で軽減される。消費税の増税幅そのものも2%におさまるから、急いで買うユーザーは少ない。
新車需要の37%を占める軽自動車の内訳を見ると、最多販売車種は、ホンダの「N-BOX」だ(少数の「N-BOXスラッシュ」を含む)。2019年1~7月の販売累計は、ホンダ車全体の33%に達した。万一何らかの理由でN-BOXの生産が滞ると、ホンダの国内販売は大打撃を被ってしまう、という数である。N-BOXの好調により、国内で売られるホンダ車の半数を軽自動車が占める。
「スズキ・スペーシア」も好調で、国内販売の総合2位だ。今の軽乗用車の売れ行きを見ると、全高が1700mmを超えスライドドアを装着した車種が半数近くに達し、N-BOX、スペーシア、そして「ダイハツ・タント」が国内販売の上位3車となっている。ちなみにタントは2019年7月9日にフルモデルチェンジを行ったから、2019年1~7月の大半は“先代のモデル末期”にあたるが、買い得な特別仕様車の「VS」シリーズが需要を支えた。国内販売の上位10車種を見ると、約半数が軽自動車になる。
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普通車ならミニバンとコンパクト
小型および普通車に目を向けると、販売の上位に位置するのは、「トヨタ・プリウス」を除けば「日産ノート」「トヨタ・アクア」「トヨタ・シエンタ」などコンパクトな車種が目立つ。販売上位10車の内訳は、コンパクトカーとミニバンがそれぞれ4車で、残りはプリウスと「カローラアクシオ&フィールダー」である。
小型/普通車販売ランキングの上位30車でも、大半はコンパクトな車種と排気量が2リッター以下のクラスで占められる。2リッターを超えるエンジンを搭載する人気車は、トヨタの「アルファード/ヴェルファイア」「クラウン」「ハリアー」「RAV4」、そして「マツダCX-5」程度に限られてしまう。
今後の動向としては、軽自動車の比率がさらに増える可能性が高い。現時点で2019年3月に一新された「日産デイズ」と「三菱eKシリーズ」が伸びており、今後は7月に新型になったタントと「ホンダN-WGN」も売れ行きが期待される。なお2020年には、「日産デイズ ルークス」と「三菱eKスペース」もフルモデルチェンジが行われる。
こうした状況では軽自動車同士の競争がさらに激化して、N-BOXやスペーシアも販売促進に力を入れるはず。新車販売されるクルマの40%以上が軽自動車になるかもしれない。
仮にそうなると、軽自動車税の増税に発展する懸念も生じる。公共の交通機関が未発達な地域では、高齢者が古い軽自動車を使って買い物や通院をしているから、軽自動車の増税は福祉の点から人々の利便性に影を落とす。しかも今は、車齢が13年を超えた車両の増税まで実施しているありさま。自動車関連の税金はまさに悪法の様相を呈しており、根本的に改めねばならない。
ドイツブランドの強さが際立つ
一方で、輸入車の伸びは見逃せない。冒頭で2018年の国内販売は1990年の68%にとどまると述べたが、輸入乗用車は同じ対比で155%に増えた。ブランド別ではメルセデス・ベンツが173%、フォルクスワーゲンが141%、BMWが140%で、ドイツ車を中心にバブル経済期よりも多く売れている。
昔は価格が軒並み高かった輸入車だが、今ではコンパクトな車種も増えた。日本車の価格が上昇したから、相対的に輸入車の割高感は薄れている。さらにSUVの人気が高まることで、輸入車の売れ行きが伸びたといえる。
2019年1~7月の正規輸入乗用車の登録台数は17万0898台で、2018年の同期に比べると1.2%少ない。ただし昨年は一部車種の新車効果で1%伸びたから、今年はその反動もあって微減となっている。
輸入車のナンバーワンブランドは、メルセデス・ベンツ。2019年1~7月に3万6892台が登録された。2位はフォルクスワーゲンの2万7631台、3位はBMWの2万6885台と続く。この台数に4位のMINI、5位のアウディを加えると、正規輸入乗用車全体の69%を占める。相変わらずドイツ車の人気は高い。
そして輸入車はセダンとワゴンの人気も根強く、このカテゴリーでは日本車が苦戦を強いられている。
日本のメーカーは国内市場を軽自動車に任せる安易な商品開発を行わず、趣味性を感じさせる小型/普通車にも、もっと力を入れるべきなのだ。
販売を復活させたRAV4は、幸いにも台数が伸びている。今後も販売促進に力を入れて人気を保ちつつ、なおかつこうした車種を増やしてほしい。実用志向の車種が増えすぎては、クルマの世界がますます退屈になってしまうし、小型車/普通車の需要が高まることは、前述した軽自動車の規格を守ることにもつながるはずなのだ。
(文=渡辺陽一郎/写真=本田技研工業、スズキ、ダイハツ工業、日産自動車、トヨタ自動車、メルセデス・ベンツ日本、フォルクスワーゲン グループ ジャパン/編集=関 顕也)

渡辺 陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆さまにけがを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。特にクルマには、交通事故を発生させる甚大な欠点がある。今はボディーが大きく、後方視界の悪い車種も増えており、必ずしも安全性が向上したとは限らない。常にメーカーや行政と対峙(たいじ)する心を忘れず、お客さまの不利益になることは、迅速かつ正確に報道せねばならない。 従って執筆の対象も、試乗記をはじめとする車両の紹介、メカニズムや装備の解説、価格やグレード構成、買い得な車種やグレードの見分け方、リセールバリュー、値引き、保険、税金、取り締まりなど、カーライフに関する全般の事柄に及ぶ。 1985年に出版社に入社して、担当した雑誌が自動車の購入ガイド誌であった。そのために、価格やグレード構成、買い得な車種やグレードの見分け方、リセールバリュー、値引き、保険、税金、車買取、カーリースなどの取材・編集経験は、約40年間に及ぶ。また編集長を約10年間務めた自動車雑誌も、購入ガイド誌であった。その過程では新車販売店、中古車販売店などの取材も行っており、新車、中古車を問わず、自動車販売に関する沿革も把握している。 クルマ好きの視点から、ヒストリー関連の執筆も手がけている。
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