第67回:スバル・フォレスター(前編) ―機能を尊ぶ良識派SUVの美徳と呪縛―
2025.04.30 カーデザイン曼荼羅 拡大 |
いよいよ日本に導入された新型「スバル・フォレスター」。いささか高級車になってしまったこの6代目だが、代々受け継がれてきたスバルらしさは健在か? 六連星の基幹車種の造形的特徴と、ささやかな“違和感”の正体を、カーデザインの識者とともに読み解く。
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今や500万円で買うクルマに
webCGほった(以下、ほった):今回は新型スバル・フォレスターのお話をしたいと思います。『webCG』ではスバルの記事は出せば出すほど読まれるので、今回もがっぽり稼がせていただきますよ。
清水草一(以下、清水):以前も取り上げたけど(その1、その2)、今回は正式発表に合わせてということね。
ほった:いや、あのときはあくまでスバルデザインの一環として取り上げただけですから。今回はガッツリ、このクルマにフォーカスして話をしたいなと。皆さんはもう、新型フォレスターはご覧になりました? 私はとある山奥で写真を撮りまくり(その1、その2)、さらにはプロトタイプ試乗会にも行ってきました。いやぁ、しみじみよきクルマでしたよ。お値段400万円からってのが気になりますが。
清水:まぁ、値段の話はおいておこう。
渕野健太郎(以下、渕野):自分もディーラーに実車を見に行ったんですけど、見積もり取ったらフル装備でコミコミ500万円!
ほった:ハイブリッドでオプション盛ったら、大台いっちゃいますよね。
渕野:だとすると、もう完全に従来のフォレスターより、車格がひとつふたつ上なんですよ。これまでは「アウトバック」が国内のスバルのフラッグシップでしたけど、このフォレスターが取って代わると思っていいのかな?
ほった:どちらにしろ、スバルのラインナップから「お手ごろミドルSUV」が消えちゃうのが不安なんですけどね。なにせ車両本体価格を見ると、下が404万8000円で上が459万8000円。まぁオプションで用意されるのはサンルーフと革シートと上級オーディオぐらいで、大体のものはフルフル、素で付いてるんですけどね。
渕野:素の状態でも、「アイサイト」とかインフォテインメント系は全装備ですよね?
ほった:左様です。ハイブリッドにこだわらない、“手放し運転機能”もいらないって人は、「一番下の『スポーツ』グレードを素で買って400万ちょい」って感じでいいのかと。ETCもナビも付いてるんで。
清水:ほった君、それはデザインの話じゃないじゃないか。
ほった:失礼しました。
顔だけがイカつすぎない?
清水:サイドビューで気になったんですけど、フォレスターがこの新型で、ウィンドウのラインを一段下げるようになったのは、「視界をよくする」というスバル伝統の要件からですね?
渕野:いや、旧型と新型のサイドビューを見比べると(タブレットに比較画像を表示)、おそらくですけどパッケージはほぼ変わってないです。新型ではそこを下げたというより、むしろAピラーの付け根を旧型より高く見せているんじゃないかな。デザイン的にはベルトラインがちょっと下がったように見えますが、実際には旧型とそんなに変わってないんじゃないかと。
清水:で、そのラインを真っすぐ後ろに伸ばして……。
渕野:リアクオーターガラスのところまで水平基調で伸ばしていますね。前のモデルはウエッジ感が強めでしたが、新型は割と真っすぐ、ボディーの軸やルーフラインと平行にしています。
清水:結果としてキャビンが大きく見える。ルーミーさが強調されて、イメージ的にはフレンドリーな方向ですよね。要は、サイドビューにはマッチョ感はない。でも、顔を見ると、新型はだいぶマッチョ系ですよね。
僕はどうも、顔だけが強すぎるなと感じるんです。なんでこんなに顔が強く見えるのかっていうと、グリルとヘッドライトがつながって、ひとカタマリに大きく広がってるからじゃないかと。ここ(グリルとヘッドランプの間)にちょっとでもボディー色が入ってたら、バランスがもっととれたんじゃないかと思うんですが。
渕野:うーん。見る角度による“強さ”のアンバランス感は、ほかの要素に原因があるんじゃないですかね。
受け継がれる“小さなタイヤ”問題
渕野:話が旧型と新型の比較に戻りますけど、パッケージはさっき言ったように、おそらく変わっていない。ホイールベースも2670mmで不変です。でも旧型って、新型と比べてどういうモチーフなのかが分かりづらかったと思うんですよ。どういうデザインの“流れ”にしたかったのか、各部の構成を見ていると、割と曖昧だった。
ほった:はいはい。
渕野:それが新型では、例えばドアパネルからはキャラクターラインが廃止されて、タテに広い一枚の面になったじゃないですか。一般面(サイドパネルの、フェンダーなどの張り出しがついていない“素”の面)の前と後ろに、多角形のフェンダーがくっついてるっていう、分かりやすい構成になったんです。
旧型はキャラクターラインでドア面が分断されていて、下回りの処理も、どちらかというと乗用車的なデザインでした。それが新型では、素直にSUVっぽいデザインになったと思います。キャラクターラインではなくて、ドア面のピークで軸みたいなものを見せてるんですね。ピーク自体がこれまでのスバル車に比べると強くて、それがしっかり通ってるから、サイドビューも割と強く見えるんじゃないかな。
清水:……ですかねぇ。
渕野:反面、清水さんがいま言われたような話も、なんとなく分かるんです。新型はかなりフロントがしっかりしていて、完全にSUVの顔になった。そういうフロントの強さに対して、その他の部分が華奢(きゃしゃ)に見えるっていう感じは、確かになくはないかなと。ただ、理由のひとつはタイヤの大きさだと思うんですよ。クルマの造形はタイヤを基準として立体を構成するものですが、フォレスターの場合、このタイヤサイズで正直に造形すると、もう一回り小さい印象のクルマになるはずです。なんせ実際、他銘柄に比べると一回りタイヤの外径がちっちゃいですからね。そこが変われば……。
清水:でも、いまさら変わらないですよね。
ほった:自分でドレスアップするしかない(笑)。まぁでも、無駄にデカいタイヤって、マジで百害あって一利なしですからね。燃費も乗り心地も交換費用も。
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リアがデカいと“弱く”見える?
渕野:あとは……リアまわりの絞り込みがちょっと小さいので、リアの箱感が強いんですよ。だから「顔まわりがデカいクルマ」に見える。
清水:え?
ほった:???
渕野:まずクルマの造形は、フロントとリアで役割が違います。クルマは動くものなので、「始点」と「終点」があるんです。造形に前と後ろがあるということですね。で、造形の終点のあるリアは、立体の流れとして必ず「収束」させないといけません。ルーフラインにしろ、ドア面にしろ、だんだんすぼまるのが自然なんです。
今回のフォレスターのように、顔まわりを最大限ワイドに見せるのは現代のカーデザインのトレンドです。そこから収束させていくわけですから、当然リアは小さくなるのが普通なんです。皆さん大好き「レンジローバー」はそれを極端にやってますし、例えば箱型ミニバンの「トヨタ・アルファード/ヴェルファイア」にしても、フロントとリアでワイド感が違いますよね。
さらにフォレスターの造形を見ると、「立体の強さ」という意味で、フロントに比べてリアは面のアプローチが少なく見えます。端的にいうと「丸さ」が足りないということです。ということで、リアにもう少しアプローチを入れて、収束させるような造形にすると、フロントと釣り合いがとれるのではないか、ということです。
清水:幅を削って絞ったほうが、リアまわりに強さ感が出るんですか?
渕野:ボリューム感とか強さ感としては。“幅感”じゃなくて。
清水:難しいなぁ。
ほった:普通は逆に考えちゃうけど。
渕野:そうなんですよ。例えばこれは、新型フォレスターをフロントクオーターから見たところですけど、このクルマではドアハンドルの下あたりにドア面のピークがあるわけです。それに対して、リア側はピークの位置が下にあるように見えませんか? ここは、リアサイドの縁のボリュームが強すぎるからじゃないかと思うんです。そこをもう少し削ったほうが、発散せず、より強く見えるんじゃないかと。
自分は、新型フォレスターの「フロントか強い」っていう特徴は、すごくいいことだと思うんです。それにそってサイドにもストーリーはつながってるように見えるんですが……。(あらためて写真を見る)やっぱりリアのコーナー部分ですね。アプローチをもう少しつけて、もうちょっとクルマを“ひとつの塊”として見せられれば、全体にもっとバランスがとれる気がします。
清水:こりゃ分かんないや(笑)。
渕野:ただ、ここの絞りが浅いのには、おそらくリアゲート開口部の要件があるんでしょう。フォレスターはテールゲートの口がボディーいっぱいに広がってて、このセグメントのなかでも、特にデカいんです。なおかつリアコンビランプの幅も一定量とらないとダメなので、リアコーナーを絞れなかったんだと思います。リアゲートが大きいのは、機能的ですごくいいことだとは思うんですけど……。
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顔かお尻か、それが問題だ
清水:しかし、問題の本質は尻にアリですか。僕にはそこは、なんの問題もないように見えますが。
ほった:清水さんは顔しか見てませんからね(笑)。
渕野:いやいや。顔だけに注目しているつもりでも、実はほかのものも目に入っているんですよ。新型フォレスターはちょっとリアバンパーコーナーまわりが突っ張りすぎてて、それで全体の一体感がスポイルされて見える。これも、清水さんの目に「顔とほかの場所で強さ感がつり合っていない」という風に見える理由だと思います。だから新型フォレスターは、リアの強さをもう少しフロント寄りにそろえてやれば、よりデザインが整うんじゃなかろうかと。
清水:顔とお尻は同時には見えないのに?
ほった:これはフォルムの話ですよ。てか、フォルムの話だと、私はボディーとキャビンの比率とかが、今日の話題になると思っていたんですが。
渕野:確かに、その辺はフォレスターは独特ですよね。例えば「マツダCX-5」あたりとは全然違う。普通、キャビンが小さくてロワボディーが分厚いとカッコいいプロポーションになるわけですけど、フォレスターは機能を前面に押し出してるんで、その反対です。ほかと比べて語るのが、ちょっと難しいクルマではありますよね。
ほった:ですねぇ。しかし、タイヤにしろお尻にしろキャビンにしろ、どれも機能重視の結果というのが、難しいというかスバルらしいというか(笑)。
渕野:でも……やっぱり一番は、ここなのかなぁ。(リアバンパーまわりを指さす)
ほった:どうしてもそこが気になりますか。
清水:僕はそこは、なんの問題もないと思うんだけどなぁ。
渕野:いや、ここがすごく重要なんですって(笑)。これは「プロにしか分からない」とかそういう話じゃなくて、一般の人が普通に感じるところなので。人間で例えたら、清水さんが気にされているのは目とか鼻の話ですよね。それも大事だけど、人って全体のシルエットも一目で感じ取るわけじゃないですか。フォレスターの場合はそこにちょっと違和感があって、リアのこの部分が、もう少しきゅっと高くなればいい。
清水:いやいや。それよりも、グリルとヘッドランプの間にちょっとボディー色があったらいいと思うんだけど。
ほった:それはなんか、ガチャガチャしそうな気がしますけど。
清水:逆でしょ! 落ち着くよ、目と口が離れてたほうが! 目と口がくっついてたらケムンパスじゃない!(笑)
(後編へ続く)
(語り=渕野健太郎/文=清水草一/写真=スバル、マツダ、webCG、/編集=堀田剛資)
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渕野 健太郎
プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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