クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

第97回:僕たちはいつからマツダのコンセプトカーに冷めてしまったのか

2025.12.24 カーデザイン曼荼羅 渕野 健太郎清水 草一
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!
2025年のジャパンモビリティショーで世界初公開された「マツダ・ビジョンXクーペ」のデザインスケッチ。今回は、クルマ好きにとり愛憎相半ばするマツダのコンセプトモデルについて、真剣に考えてみた。
2025年のジャパンモビリティショーで世界初公開された「マツダ・ビジョンXクーペ」のデザインスケッチ。今回は、クルマ好きにとり愛憎相半ばするマツダのコンセプトモデルについて、真剣に考えてみた。拡大

2台のコンセプトモデルを通し、いよいよ未来の「魂動デザイン」を見せてくれたマツダ。しかし、私たちの心はイマイチ、以前のようにはときめかないのである。見目麗しいマツダのショーカーに、私たちが冷めてしまった理由とは? カーデザインの識者と考えた。

最新の「魂動デザイン」を体現したとされる「ビジョンXクーペ」。全長×全幅×全高=5050×1995×1480mm、ホイールベース3080mmという、堂々としたボディーサイズの4ドアクーペだ。
最新の「魂動デザイン」を体現したとされる「ビジョンXクーペ」。全長×全幅×全高=5050×1995×1480mm、ホイールベース3080mmという、堂々としたボディーサイズの4ドアクーペだ。拡大
過去の「魂動デザイン」世代のコンセプトモデルと比べると、ボディーサイドの表情は控えめ。Aピラーからリアエンドまで一筆書きでつながるルーフラインや、ボディーに描いたかのようなテールランプの意匠も目を引く。
過去の「魂動デザイン」世代のコンセプトモデルと比べると、ボディーサイドの表情は控えめ。Aピラーからリアエンドまで一筆書きでつながるルーフラインや、ボディーに描いたかのようなテールランプの意匠も目を引く。拡大
こちらもジャパンモビリティショーで発表された「ビジョンXコンパクト」。丸いフォルムが愛嬌(あいきょう)を感じさせるコンパクトハッチバックだ。
こちらもジャパンモビリティショーで発表された「ビジョンXコンパクト」。丸いフォルムが愛嬌(あいきょう)を感じさせるコンパクトハッチバックだ。拡大
ここのところ、魅力的なショーカーは出すものの、あまり市販車につながることがなかったマツダ。今回発表された2台は、どうなるのだろうか?
ここのところ、魅力的なショーカーは出すものの、あまり市販車につながることがなかったマツダ。今回発表された2台は、どうなるのだろうか?拡大

どんなにカッコよくたって……

webCGほった(以下、ほった):……えー。今回は「マツダの明日はどっちだ?」って話ですね。またしてもジャパンモビリティショー(以下、JMS)がらみですが、ようやく魂動デザインの次の一手が見えたっぽいので、その話をしようかと。

清水草一(以下、清水):まだJMSを引っ張るのかって言われそうだね(笑)。

ほった:さすがにJMSネタもこれが最後ですけどね。それにしても、その最後がマツダというのも皮肉というかなんというか。なんせ最近のマツダに対しては、ワタシらのショーで見る目が厳しくなってますからね。コンセプトカーを出しておしまい。市販の予定ナシ! って流れが、ずーっと続いているから。

清水:もう本気で見なくなっちゃったよ。

ほった:どんなにカッコよくても、市販化が期待できないと気が抜けちゃいますよね。話題になった「RX-VISION(以下、RXビジョン)」系のコンセプトモデルも、結局あれっきりだし。そのくせ中国で発表したコンセプトカーはすぐに市販化するし(笑)。まぁグチっててもしょうがないので、本題に入りますが。

渕野健太郎(以下、渕野):JMSに出展された2台についてですね。「VISION X-COUPE(ビジョン クロスクーペ、以下Xクーペ)」の意図は測りかねますが、コンパクトカーのほうの、「VISION X-COMPACT(ビジョン クロスコンパクト、以下Xコンパクト)」はいいですよね。「デミオ」や「マツダ2」など、市販車が想像できるプロポーションで、自分はこちらのほうがよくできているし、いいなと思いました。

ほった:Xコンパクトのほうがステキでしたね、お尻がプリプリしてて。編集部のサクライも「これがおすすめ!」で推していましたよ。

マツダ の中古車webCG中古車検索

今日に至る「魂動デザイン」の変遷

渕野:魂動デザインの歴史を振り返ると、マツダは15年くらい前からこれをやっていて、最初はおそらく、2010年発表の「靭(SHINARI)」だったと思います。その後に「雄(TAKERI)」「勢(MINAGI)」が出て、それぞれ「アテンザ」「CX-5」と市販車に落とし込んでいったわけです。大きな変化があったのが2015年の東京モーターショーで、RXビジョンで皆、度肝を抜かれたわけですよ。これが、今日の魂動デザインの方向性を決めたクルマかなと思います。

清水:あのころは、完全にモーターショーの主役でしたね……。

渕野:RXビジョンでなにが変わったかというと、面のリフレクション(映り込み)の動きを、すごく重視するようになったんです。プロポーションもですが、オリジナリティーとしてリフレクションの変化を追求するようになった。2年後に出た「VISION COUPE(ビジョン クーペ)」ではよりそれが顕著になって、「マツダ3ファストバック」や「CX-30」などの市販車にも反映されていきました。

ほった:RXビジョンもビジョン クーペも、市販化はされなかったけど、あのデザインはそれなりに他車に生かされたんですよね。

渕野:次いで2023年の「ICONIC SP(以下、アイコニックSP)」では、それまでのリフレクション重視の路線から離れて、「よりシンプルな造形にしていこう」というデザインテーマが見てとれました。そして、今回出た2台のコンセプトカーですね。基本的な立体構成は2017年のビジョン クーペあたりから変わっていませんが、表現のしかたがマイルドになっている(写真キャプション参照)。リフレクションを強調するより、すんなり見られるものにしたいのかなと、デザイナーの意図は伝わってきました。

清水:どっちも美しいのは確かです。

渕野:以前、この連載の新型CX-5の回(その1その2)で、「マツダのデザインはコンサバになった。守りに入ったのか?」と言いましたが 、今回の2台を見て、また魂動デザインに攻めの姿勢が出てきたなと思いましたよ。

清水:まぁショーカーとしてはそうなのでしょう。でも私は、現実性を重視してしまうんだよなぁ。

「魂動デザイン」の方向性を示してきた歴代コンセプトモデル。上から「靭(SHINARI)」「RXビジョン」「ビジョン クーペ」「アイコニックSP」。あらためて見ても、どれもウットリするほどカッコいい。
「魂動デザイン」の方向性を示してきた歴代コンセプトモデル。上から「靭(SHINARI)」「RXビジョン」「ビジョン クーペ」「アイコニックSP」。あらためて見ても、どれもウットリするほどカッコいい。拡大
「ビジョン クーペ」(2017年)と「ビジョンXクーペ」(2025年)の比較。前者では、フロントタイヤの直後でボディーを大きく削り込み、ぐっとタメをつくってからフロントフェンダー、前後ドアパネルを通して大きな“後ろ下がり”となるリフレクションの動きが見られた。いっぽう後者を見ると、タメは控えめで、フロントドアからリアドア中央にかけてはドア断面の変化も抑えられている。
「ビジョン クーペ」(2017年)と「ビジョンXクーペ」(2025年)の比較。前者では、フロントタイヤの直後でボディーを大きく削り込み、ぐっとタメをつくってからフロントフェンダー、前後ドアパネルを通して大きな“後ろ下がり”となるリフレクションの動きが見られた。いっぽう後者を見ると、タメは控えめで、フロントドアからリアドア中央にかけてはドア断面の変化も抑えられている。拡大
「ビジョンXクーペ」のインテリア。細部までつくり込まれた質感の高い意匠は、さすがはデザインに命を懸けるマツダである。
「ビジョンXクーペ」のインテリア。細部までつくり込まれた質感の高い意匠は、さすがはデザインに命を懸けるマツダである。拡大

「ビジョンXコンパクト」のデザインは実現可能か?

ほった:現実性というと、市販車の可能性があるかってことですね。

清水:そうそう。Xクーペのほうはもう、現実になりっこないAIアイドルですよ。新型マツダ2になりそうなXコンパクトには、「やっと少し現実的なアイデアを出してくれた」って感じましたけど、でもこのプロポーションは電気自動車(BEV)じゃないと無理なのでは? エンジンを積むスペースはあるのかな。

ほった:それにこのクルマ、デザインのキモは下半身の踏ん張り具合とプリッとしたお尻だと思うんですけど、コンセプトカーが市販車になるとき、一番犠牲になるのは造形じゃないですか。仮に市販化されるとしても、このかわいらしさは維持されるかな?

渕野:いや。このCピラーからリアフェンダーにかけてのスムーズな面は、「マツダ3ファストバック」と同じものですよ。マツダ3でも度肝を抜かれましたし、Xコンパクトが市販化されても、Cピラーまわりのシルエットは保たれると期待したいですね。この控えめなリアバンパーまで再現できるかはわかりませんけど……。

それと全体のシルエットに関しては、Aピラーを立たせてCピラーを寝かせた、往年の「フィアット500」のような形をしていますよね。要は懐古主義的なところもある。以前取り上げたネオレトロ系のモデル(その1その2)ではありませんが、Xコンパクトが魅力的に見えるということは、やはり皆、こういう古典的なスタイルを求めているのでしょう。

ほった:なるほど。

渕野:気になる点を挙げると、Xクーペもそうですがリアコンビランプのグラフィックが「なんでこれなの?」とは思いますね。リアゲートをはじめとするリアまわりの造形と合ってないように思います。

「2035年の未来のクルマ」と紹介される「ビジョンXコンパクト」。「人とクルマの絆がさらに深まる」ことを目指した、スマートモビリティーの未来像とされている。
「2035年の未来のクルマ」と紹介される「ビジョンXコンパクト」。「人とクルマの絆がさらに深まる」ことを目指した、スマートモビリティーの未来像とされている。拡大
「ビジョンXコンパクト」のサイドビュー。ボディーサイズは全長×全幅×全高=3825×1795×1470mm。実用コンパクト的な車形といい、「ビジョンXクーペ」よりは現実味があるか?
「ビジョンXコンパクト」のサイドビュー。ボディーサイズは全長×全幅×全高=3825×1795×1470mm。実用コンパクト的な車形といい、「ビジョンXクーペ」よりは現実味があるか?拡大
インテリアはこんな感じ。このまま実車化はさすがに難しいだろうが、ぜひ各所のアイデアを、市販モデルへと落とし込んでほしい。
インテリアはこんな感じ。このまま実車化はさすがに難しいだろうが、ぜひ各所のアイデアを、市販モデルへと落とし込んでほしい。拡大
プリッとしたお尻とグッと張り出した前後フェンダーが魅力的な後ろ姿。面のシンプルさを重視してか、テールランプはボディーパネルと完全に“ツライチ”となっていて、本当に”描いただけ”のように感じられる。
プリッとしたお尻とグッと張り出した前後フェンダーが魅力的な後ろ姿。面のシンプルさを重視してか、テールランプはボディーパネルと完全に“ツライチ”となっていて、本当に”描いただけ”のように感じられる。拡大

理想が先走りすぎてない?

清水:とにかく、こういうものを出したんだから、ぜひマツダ2をモデルチェンジしてほしいですよ!

渕野:現行型はスポーティーで古びない、いいデザインをしていますが、とはいえデビューから11年ですからね。ぜひこのコンセプトカーをベースに、新型を出してほしいです。

ほった:いやー。でもどうだろう。今はBセグのコンパクトって世界的に厳しいですからね。台数ははけないし利ザヤも稼げないし。マツダ2も、最終的には「トヨタ・ヤリス」のOEMになっちゃうんじゃないですか? ヨーロッパで売ってる「マツダ2ハイブリッド」は、すでにヤリスの姉妹車だし。

渕野:でも、全部をヤリスのバッジ違いにする気なら、こんなコンセプトカーは出さないんじゃないですか? やる気はあると思いますよ。

清水:トヨタのプラットフォームでマツダにデザインさせる、というかたちを期待したいな。

ほった:「これっぽい見た目で中身はヤリスでいい」ってことですね。もうメカがスカイアクティブとかロータリーじゃなくても。

清水:むしろ、もうロータリーはあきらめてほしいな。スカイアクティブも……。

ほった:あれだけ華々しくデビューした「SKYACTIV-X」も、現状は厳しいですしねぇ。

清水:今回のXクーペのメカもそうだよ。「走りながらCO2を回収する」(参照)っていうけど、まさに夢物語に聞こえてしまう。志が高いのはいいけど、最近のマツダは志だけが先行したメカが続いているから。

「ビジョンXコンパクト」の内外装のデザインスケッチ。このクルマをベースに、「マツダ2」がモデルチェンジすればいいのだけれど……。
「ビジョンXコンパクト」の内外装のデザインスケッチ。このクルマをベースに、「マツダ2」がモデルチェンジすればいいのだけれど……。拡大
今も、Bセグメントのエントリーモデルとしてマツダを支えている「マツダ2」だが、その実は2014年に登場した4代目「デミオ」のマイナーチェンジモデル。中身的には、もう11年選手なのだ。
今も、Bセグメントのエントリーモデルとしてマツダを支えている「マツダ2」だが、その実は2014年に登場した4代目「デミオ」のマイナーチェンジモデル。中身的には、もう11年選手なのだ。拡大
マツダが2022年春から欧州で販売している「マツダ2ハイブリッド」。ご覧のとおり、「トヨタ・ヤリス」のOEM車である。
マツダが2022年春から欧州で販売している「マツダ2ハイブリッド」。ご覧のとおり、「トヨタ・ヤリス」のOEM車である。拡大
マツダが独自に開発を進めているCO2回収装置「モバイルカーボンキャプチャー」と、コンセプトモデル「ビジョンXクーペ」。
マツダが独自に開発を進めているCO2回収装置「モバイルカーボンキャプチャー」と、コンセプトモデル「ビジョンXクーペ」。拡大

なんでクーペ型のショーカーをつくるのか

ほった:デザインに話を戻すと、今回の2台を見ていると、中国で出た「創(ARATA)」や「EZ-60」を思い出しますね。Xクーペの顔の雰囲気とか。

渕野:そうですね。こうして見ると、考えようによっては新型CX-5だけが異質な気がしてくる。まとまりのいいデザインですが、マツダへの期待を思うと、やはりもう少し攻めてほしかったな。

ほった:それと、今回のコンセプトには過去にない新しい点もありますよね。フロントマスクの、今までだったらグリルがあった部分の両サイドに、縁取りみたいにランプを入れている。

渕野:そうですね。これが効いている気がします。これがなかったら、マツダ車には見えないかもしれない。やはりグラフィックは立体より力が強いんですよ。これが“BEV時代の顔”としての、マツダの回答なのかな。

清水:XクーペはBEVじゃないですけどね。まぁグリルはないし、BEV時代を見据えたデザインではあるんだろうけど。

ほった:「カーボンニュートラル燃料で駆動する2ローターロータリーターボエンジンとモーター、バッテリーを組み合わせた、プラグインハイブリッド」ってことになってますね。で、さっき言ってたCO2回収装置も積んでると。

清水:理想は天より高いね。

ほった:ちょうどXクーペに話題が移ったんでそちらの話をしたいんですが、このクーペ、多少はSUVを意識しているんでしょうか?

渕野:うーん。車高が高いわけじゃないけど、ベタベタでもないですよね。これがマツダのさじ加減なのかもしれません。ただ、SUVだったらもっとSUV的にしてもいいと思います。

ほった:なるほどぉ……。いや、この手のクーペ型のショーカーって、デザインを他の車形に応用するのが難しいと思うんですよ。前にも「RXビジョンやビジョン クーペはカッコよかったけど、『CX-60』はちょっと……」って話をしたと思うんですが(参照)。そもそも、現行ラインナップもほとんどがハッチバックとSUVなのに、なんで、こういうときだけ背の低いショーカーをつくるのかと。

2025年4月の上海モーターショーで発表された、長安マツダの「EZ-60」。
2025年4月の上海モーターショーで発表された、長安マツダの「EZ-60」。拡大
「ビジョンXクーペ」のフロントまわり。グリルレスのフロントマスクと、高い位置に据えられた細目のヘッドランプに、「EZ-60」との類似性を感じる。また、ヘッドランプの下に配されたライン状のランプに注目。
「ビジョンXクーペ」のフロントまわり。グリルレスのフロントマスクと、高い位置に据えられた細目のヘッドランプに、「EZ-60」との類似性を感じる。また、ヘッドランプの下に配されたライン状のランプに注目。拡大
同様の意匠は「ビジョンXコンパクト」のフロントマスクにも。これが、グリルが不要となるBEV時代の“マツダの顔”となるのかもしれない。
同様の意匠は「ビジョンXコンパクト」のフロントマスクにも。これが、グリルが不要となるBEV時代の“マツダの顔”となるのかもしれない。拡大
日本におけるマツダのオフィシャルサイトより。ご覧のとおり、同社のラインナップはほとんどがSUVとコンパクトハッチバックで占められているのだが……。
日本におけるマツダのオフィシャルサイトより。ご覧のとおり、同社のラインナップはほとんどがSUVとコンパクトハッチバックで占められているのだが……。拡大
低いフォルムとササの葉のように薄いガラスエリアが特徴的な「ビジョンXクーペ」。その意匠は、背高なSUVやコンパクトカーに応用できるものなのだろうか?
低いフォルムとササの葉のように薄いガラスエリアが特徴的な「ビジョンXクーペ」。その意匠は、背高なSUVやコンパクトカーに応用できるものなのだろうか?拡大

そろそろ現実解を見せてほしい

渕野:確かに、XクーペのデザインをSUVに落とし込のむは難しそうですね。アイコニックSPのデザインも、よっぽど抑揚を出さないと他の車形では成立しないと思いましたけど。

清水:相当な全幅が必要になりますね。

ほった:だいたい、クーペのコンセプトカーって屋根が低くてキャビンが小さいからカッコいいのであって、そのモチーフのままボディーを厚くしてキャビンをデカくしたら、「あれ?」ってなっちゃうと思うんですよ。最初からSUVでコンセプトモデルをつくって、まずSUVに親和するデザインを模索するほうがいいんじゃないかな。

清水:あと、クーペばっかだと「どうせ出ないんでしょ」ってシラけちゃうしね。

ほった:そうそう。今回の議論も、いろいろ新しいモノが見えてきたのにビミョーに盛り上がらないじゃないですか。

清水:これまではマツダにしっかりだまされてたけどね(笑)。RXビジョンやアイコニックSPを見て、「スゲエ! 美しすぎる! 欲しい」って。まぁ、マツダ自身が「市販化します」って言ってたわけじゃない。僕らが勝手に期待しただけなんだけど。

ほった:でもですよ。提案性に振ったのでもない、市販化もしない、デザインの横展開もビミョーってなると、そのコンセプトカーの意味ってなんなん? ってなりますよ。やっぱり。

渕野:コンセプトカーの立ち位置の問題は、結構重要ですよね。

ほった:出来栄えがどうこうじゃなくて、そのコンセプトカーをつくる目的はなにか、どんな役割を担わせるのかを、ちゃんと考えるってことですよね。まぁ海外のショーだと、夢を見せる系のショーカー自体がほとんどなくなってしまったから、こういう悩みがあるだけでも、日本のメーカーとユーザーは恵まれているのかもしれませんが。

清水:いや~、夢ばっかり見せるのも問題だよ。マツダはそろそろ現実解を見せてほしい!

(語り=渕野健太郎/文=清水草一/写真=ダイハツ工業、トヨタ自動車、本田技研工業、マツダ、webCG/編集=堀田剛資)

2023年のジャパンモビリティショーで発表された「アイコニックSP」。ショーカーそのものの出来栄えは本当に素晴らしいのだが……。毎回のように、非現実的なクーペでコンセプトモデルをつくるのはなぜ?
2023年のジャパンモビリティショーで発表された「アイコニックSP」。ショーカーそのものの出来栄えは本当に素晴らしいのだが……。毎回のように、非現実的なクーペでコンセプトモデルをつくるのはなぜ?拡大
2015年に発表されたFRスポーツのコンセプトモデル「RXビジョン」(上)と、同車由来のデザインモチーフが取り入れられた「CX-60」(下)。CX-60も、実にスタイリッシュなモデルではあるのだが……。 
ほった「SUVだとちょっと緊張感が足りないというか、ボディーの厚みが間延びして見えるんですよね。このデザインモチーフって」
2015年に発表されたFRスポーツのコンセプトモデル「RXビジョン」(上)と、同車由来のデザインモチーフが取り入れられた「CX-60」(下)。CX-60も、実にスタイリッシュなモデルではあるのだが……。 
	ほった「SUVだとちょっと緊張感が足りないというか、ボディーの厚みが間延びして見えるんですよね。このデザインモチーフって」拡大
未来へ向けたメーカーの意思表明だったり、市販予定車の観測気球だったり、発売前のアドバルーンだったり……。いろんな役割を担ってショーでお披露目されるコンセプトモデル。マツダの流麗なクーペは、どういった役割を負っているのだろうか?
未来へ向けたメーカーの意思表明だったり、市販予定車の観測気球だったり、発売前のアドバルーンだったり……。いろんな役割を担ってショーでお披露目されるコンセプトモデル。マツダの流麗なクーペは、どういった役割を負っているのだろうか?拡大
ほった「マツダはそろそろ、マーケティングやブランディング担当も交えて、コンセプトカーをつくる狙いとかを固め直す時期にきてるのかもしれませんね」 
清水「とりあえず僕は、ショーカーでも現実解を見せるようにしてほしいよ」
ほった「マツダはそろそろ、マーケティングやブランディング担当も交えて、コンセプトカーをつくる狙いとかを固め直す時期にきてるのかもしれませんね」 
	清水「とりあえず僕は、ショーカーでも現実解を見せるようにしてほしいよ」拡大
渕野 健太郎

渕野 健太郎

プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

カーデザイン曼荼羅の新着記事
カーデザイン曼荼羅の記事をもっとみる
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。