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第91回:これぞニッポンの心! 軽自動車デザイン進化論(後編)

2025.11.12 カーデザイン曼荼羅 渕野 健太郎清水 草一
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ホンダの新型軽BEV「N-ONE e:」(写真向かって左)と、三菱の軽スーパーハイトワゴン「デリカミニ」(写真右)。
ホンダの新型軽BEV「N-ONE e:」(写真向かって左)と、三菱の軽スーパーハイトワゴン「デリカミニ」(写真右)。拡大

激しさを増すスーパーハイトワゴン競争に、車種を増やしつつある電気自動車(BEV)、いよいよ登場した中国の黒船……と、激動の真っただ中にある日本の軽自動車。競争のなかで磨かれ、さらなる高みへと昇り続ける“小さな巨人”の意匠を、カーデザインの識者と考える。

前編に戻る)

2代目となる新型「三菱デリカミニ」。「日産ルークス」と車体を共用する兄弟車で、もう一台、「三菱eKスペース」という、影の薄い(失礼!)兄弟がいる。
2代目となる新型「三菱デリカミニ」。「日産ルークス」と車体を共用する兄弟車で、もう一台、「三菱eKスペース」という、影の薄い(失礼!)兄弟がいる。拡大
新型「デリカミニ」の意匠はご覧のとおり、好評だった初代のイメージをほぼほぼ踏襲。細部を見ると、スキッドプレートを大型化するなどして、よりオフロード感を強調している。
新型「デリカミニ」の意匠はご覧のとおり、好評だった初代のイメージをほぼほぼ踏襲。細部を見ると、スキッドプレートを大型化するなどして、よりオフロード感を強調している。拡大
「日産ルークス」(写真左上)と「三菱デリカミニ」(同右下)の比較。初代デリカミニでは、バンパーなどを除くボディーパネルは兄弟車と共通で、塗装によって違いを見せていた。
「日産ルークス」(写真左上)と「三菱デリカミニ」(同右下)の比較。初代デリカミニでは、バンパーなどを除くボディーパネルは兄弟車と共通で、塗装によって違いを見せていた。拡大
軽自動車では10年連続、登録車を含めても4年連続で新車の年間販売台数No.1に君臨している「ホンダN-BOX」。機能面はもちろんのこと、クリーンでシンプルなデザインも高評価を得ている。
軽自動車では10年連続、登録車を含めても4年連続で新車の年間販売台数No.1に君臨している「ホンダN-BOX」。機能面はもちろんのこと、クリーンでシンプルなデザインも高評価を得ている。拡大
現在2番手で「ホンダN-BOX」を追撃する「スズキ・スペーシア」。そこら中に収納スペースを設けた、使い勝手の権化のような車内空間がスゴい。
現在2番手で「ホンダN-BOX」を追撃する「スズキ・スペーシア」。そこら中に収納スペースを設けた、使い勝手の権化のような車内空間がスゴい。拡大
軽スーパーハイトワゴンといえば、もちろん元祖「ダイハツ・タント」も忘れてはならない。これだけの車種があり、しかもおのおのに意匠の異なる派生モデルがあり……と、このジャンルの軽は、とにかくバラエティーが豊かなのだ。
軽スーパーハイトワゴンといえば、もちろん元祖「ダイハツ・タント」も忘れてはならない。これだけの車種があり、しかもおのおのに意匠の異なる派生モデルがあり……と、このジャンルの軽は、とにかくバラエティーが豊かなのだ。拡大

スーパートールワゴンの仁義なき戦い

webCGほった(以下、ほった):「日産ルークス」を取り上げるなら、同時にモデルチェンジした兄弟車の「三菱デリカミニ」も忘れてはなりませんよ。

清水草一(以下、清水):なんか、もう一台いた気がするけど……。

渕野健太郎(以下、渕野):同じ車体を共用する日産ルークスの兄弟車が三菱デリカミニでしたけど、新型ではルークスに対して、ボンネットもフロントフェンダーも変えてきたみたいですね。(初代のデザインについてはこちらを参照)

清水:そうなんですか!?

ほった:フェンダーパネルは……ヘッドランプの“目じり”の部分が違うのか。どうせならフェンダーのカタチも変えちゃえばいいのに(笑)。

渕野:そうなんですよね。実際、ボディーサイドのデザインはおおむね共通なんですけど……。ただこれは、ルークスのほうが道具感がありますね。

清水さん:対するデリカミニは、完全に先代デザインのキャリーオーバーですけど、非常に強そうでカッコよくて、イメージを変えないでくれてよかったなぁって思います。一瞬、先代との見分けが難しいけど、よくできていますよね。

渕野:ただね、軽ハイトワゴン全体を見渡すと、やっぱり個人的には「ホンダN-BOX」(その1その2)なんですよ。これが一番わかりやすい。

清水:ザ・定番っていうデザインですね。実際、ブランドイメージも超定番。

渕野:ただ、最近はN-BOXも以前ほど独壇場という感じではなくなってきましたね。「スズキ・スペーシア」とかがだんだん伸びてきて。……しかし、あのクルマの車内の機能性とかは、スゴい。

ほった:あれはもう、執念の世界ですよ。

清水:いやー、それでもイチバンはN-BOXだろうな。新型になって、ライバルより値段がプラス10万円になったのに、これだけリードを続けている。ルークスとデリカミニもほぼ同じ値段で出たけど、N-BOXの定番感にはかなわないよ。

ほった:でも、役者がそろって競争が激化するのは間違いないかと。

清水:ほんとすごいよね。世界の自動車業界でも、究極の機能性、合理性の戦いだよ。

ほった:軽スーパーハイトワゴンの争いは、すさまじい高みにあると。

清水:そう。天上界だね(笑)。

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「ホンダN-ONE e:」をユーザーはどう見るか

ほった:なんかもう、ハイトワゴンとスーパーハイトワゴンだけでも延々話しちゃっていますけど、昨今の軽を語るには、これだけでは済まないんですよ。最近、このセグメントにも来てるでしょう。例の波が。

清水:BEVの話だね。

渕野:直近だと、まずは「ホンダN-ONE e:」ですね。航続距離が「日産サクラ」「三菱eKクロスEV」よりもだいぶ長い。

清水:約1.5倍!

渕野:そういう性能面がすごく注目されてますけど、デザイン的にもちょっと興味深いところがあります。フロントまわりが「N-ONE」と全然違う。

ほった:わざわざ変えてるんですよね。

清水:でも、N-ONE e:のデザインはあまりにも商用車みたいで、いまひとつだなぁ。

渕野:いや、意図はすごくわかるんですよ。できる限りシンプルにして、あえて高級感や質感を抑えている。サクラのほうはすごく高級感があって、大きなクルマをそのまんま小さくしたような質感があるのに対して。

ほった:それでいて、お値段はサクラよりN-ONE e:のほうが10万円ほど高いわけですからね。ベースグレード対決だと、269万9430円対259万9382円。

清水:性能を比べたら断然N-ONE e:なんだけど、イイモノ感がねぇ。

渕野:基となったN-ONEは、むしろ軽のなかでは質感が高いクルマだったんですけどね。私はN-ONEのデザインがすごく好きなんです。このデザインは、質感とかかわいらしさとか、すべてを併せ持っていると思うんですよ。

清水:そこまでですか!

渕野:ところが今回のN-ONE e:は、質感の部分を抑えて、あえてダウングレードしてきた。それに関して、お客さんが価格との釣り合いをどう判断するか? プロポーションに関しても、N-ONEのほうがオーバーハングが軽くてスラッと見えますし。

清水:ボンネットの形状が違うんですよね。N-ONE e:は水平寄りで真っ平。

渕野:ボンネットの角度も違うし、ランプの角度も違う。N-ONE より少し前のほうにボリュームがきている感じです。

清水:うーん……。見れば見るほど、サクラの内外装で中身がN-ONE e:ならベストだな! もういっそ、N-ONE e:のバッテリー積んでくれ~~っ!

ほった:そんなムチャな(笑)。

2025年9月に登場した「ホンダN-ONE e:」。一充電走行距離295km(WLTCモード)を実現した、ホンダの最新軽BEVだ。
2025年9月に登場した「ホンダN-ONE e:」。一充電走行距離295km(WLTCモード)を実現した、ホンダの最新軽BEVだ。拡大
ベースとなるのはガソリンエンジンの軽自動車「N-ONE」。変更点はフロントまわりが主なので、リアクオーターから見ると、ほとんど見分けがつかない。(写真:花村英典)
ベースとなるのはガソリンエンジンの軽自動車「N-ONE」。変更点はフロントまわりが主なので、リアクオーターから見ると、ほとんど見分けがつかない。(写真:花村英典)拡大
「ホンダN-ONE」(写真左)と「N-ONE e:」(同右)のフロントまわり。ボンネットの傾きや“おでこ”の角張り具合に注目。両車のフロントまわりは、グラフィックのみならず形状自体が大きく異なるのだ。
「ホンダN-ONE」(写真左)と「N-ONE e:」(同右)のフロントまわり。ボンネットの傾きや“おでこ”の角張り具合に注目。両車のフロントまわりは、グラフィックのみならず形状自体が大きく異なるのだ。拡大
充電口を収めるフロントの装飾パネルには、バンパーのリサイクル素材を採用。通常なら除去する塗膜粉をあえて残すことで、独自の風合いを表現しているという。再生素材であることを隠さず、むしろ主張するところに、今という時代を感じる……。
充電口を収めるフロントの装飾パネルには、バンパーのリサイクル素材を採用。通常なら除去する塗膜粉をあえて残すことで、独自の風合いを表現しているという。再生素材であることを隠さず、むしろ主張するところに、今という時代を感じる……。拡大
質感を抑えて独創性を追求した「ホンダN-ONE」に対し、「日産サクラ」は「どうせお高いクルマなんだから!」とストレートに高級感・上質感を表現。アナタはどちらの軽BEVがお好きですか?
質感を抑えて独創性を追求した「ホンダN-ONE」に対し、「日産サクラ」は「どうせお高いクルマなんだから!」とストレートに高級感・上質感を表現。アナタはどちらの軽BEVがお好きですか?拡大

精進料理か、デパコスか

渕野:サクラのデザインはよくできてるけど、N-ONE e:は航続距離が全然違う。でもやっぱりデザインとしては……。サクラってほんとに魅力があります。あれはいいですよ。あれでバッテリー容量がもっとあれば、もう全然そっちのほうがよくなっちゃうんだけどなあ。

清水:N-ONE e:についてはホント、デザインはN-ONEそのまんまでいてくれたらよかったのに。

渕野:同感です。

清水:N-BOXみたいな超シンプルテイストでそろえたかったんですかね?

ほった:単純に、機械類が収まんなかったんじゃないですか? N-ONE e:は充電口もフロントについてますし。だから、できるだけ内容量を稼げるカタチに、顔まわりをつくり替えた、みたいな。

渕野:ならしょうがない。

ほった:まぁワタシはおふたりと違って、N-ONE e:も憎からず思ってますけどね。N-ONEにはちょっと譲るけど、サクラに対しては負けてないと思いますよ。サクラは高級で上質で、やってることがフツーです。ワクワクが足りない。

清水:いやぁ、高級感好きのオレはメチャメチャひかれるな(笑)。サーモンピンクのサクラはすごくステキだよ。化粧品のパッケージみたいで。

ほった:伊勢丹でデパコスでもあさっててください。ワタシは断然、鉄チンホイールのN-ONE e: Gです。

清水:そういう高僧みたいなこと言うカーマニアっているよね。精進料理じゃお客は呼べないよ。

「ホンダN-ONE e:」では、充電口が普通充電用、急速充電用ともにフロントに備えられている。
「ホンダN-ONE e:」では、充電口が普通充電用、急速充電用ともにフロントに備えられている。拡大
ほった「モーターやコントローラーだけじゃなく、2個の充電口もここにあるわけでしょ。歩行者保護のスペースも含めると、もう余裕がなかったんじゃないかな?」 
清水「見た感じは、多少ゆとりがありそうなんだけどねぇ」 
(写真:花村英典)
ほった「モーターやコントローラーだけじゃなく、2個の充電口もここにあるわけでしょ。歩行者保護のスペースも含めると、もう余裕がなかったんじゃないかな?」 
	清水「見た感じは、多少ゆとりがありそうなんだけどねぇ」 
	(写真:花村英典)拡大
エントリーグレードの「N-ONE e: G」。 
ほった「うーん、すばらしい! ホンダの軽のエントリーモデルは、スチールホイールとハーフホイールキャップのデザインが非常に秀逸で……」 
清水「こういうこと言うカーマニアっているよね」
エントリーグレードの「N-ONE e: G」。 
	ほった「うーん、すばらしい! ホンダの軽のエントリーモデルは、スチールホイールとハーフホイールキャップのデザインが非常に秀逸で……」 
	清水「こういうこと言うカーマニアっているよね」拡大
清水「サーモンピンクの『サクラ』なんて、お化粧品みたいにステキだよ!」 
ほった「この色、厳密には『シルキーライラック』って名前らしいですよ。サクラ(桜)なのにライラックとは、これいかに?」
清水「サーモンピンクの『サクラ』なんて、お化粧品みたいにステキだよ!」 
	ほった「この色、厳密には『シルキーライラック』って名前らしいですよ。サクラ(桜)なのにライラックとは、これいかに?」拡大

気になるスズキとBYDのニューモデル

渕野:でも、こうやって軽BEVがどんどん増えるのはいいことですよね。BYDもスズキも出しますし。

ほった:「BYDラッコ」と、スズキの「ビジョンeスカイ」ですね。ワタシはジャパンモビリティショーでスズキブースのステージに上がって、それはもう、ビジョンeスカイをなめるように拝見しました。で、いたく感服したんですけど……。清水さんがキャッチしたウワサだと、eスカイの市販版は次期「ワゴンR」と骨格が共用になるみたいですね(参照)。だとすると、あのままの姿かたちで発売! というのはムリかなぁ。それと、BYDのほうはスーパーハイトワゴンですけど、これ、走りというか商品としてのまとまりが、ちょっと気になりますね。

清水:なにか厳しいの?

ほった:以前、某国産メーカーの技術者さんから聞いたんですが、両側スライドドアで背の高いスーパーハイトワゴンをBEVにするのは、すごく厳しいんだそうです。重くなりすぎるっていうのと、床面にバッテリーを敷き詰めるから、低床化して室内高を稼いだり、シートアレンジのためのカラクリを仕込んだりするのが難しいとか。

清水:もっと背の高い「ホンダN-VAN e:」もあるし、大丈夫じゃないの?

ほった:まぁBYDのことだから、おかしなことにはなってないでしょうけど。

清水:デザインはまんま国産スーパーハイトワゴンだね。サイドは先代ルークスそっくり。

ほった:で、3代目「キューブ」の顔をくっつけた感じですか。これ、元日産の「デイズ」の開発責任者がBYDにいったんですよね? 日産日産してるわけだ。

清水:うん。テレビで見た見た。

ほった:BYDは日本の軽にずいぶん前のめりですけど、海外だと日本の規格そのまんまで軽自動車が走ってる地域もあるし(参照)、仮に日本でそんな売れなくても、BYDとしてはこれからいろいろ、発展の夢があるのかもしれませんね。

清水:あるかもね。ヨーロッパでも、ヘタするとあるかも。

ほった:ステランティスのジョン・エルカンさんも言ってましたよね。「欧州は日本の軽自動車のような、小型で安価な車両を開発する必要がある。日本に市場シェア40%を持つ軽自動車があるなら、欧州がそれに相当する『eカー』を持たない理由はない!」って。

清水:いまごろ気づいたのか(笑)。

「ジャパンモビリティショー2025」でスズキが発表した「ビジョンeスカイ」。同車をベースとした軽BEVは、2026年度内の発売が予定されている。
「ジャパンモビリティショー2025」でスズキが発表した「ビジョンeスカイ」。同車をベースとした軽BEVは、2026年度内の発売が予定されている。拡大
「ビジョンeスカイ」の市販モデルは、次期型「ワゴンR」と車体を共用するとのウワサがあるが……。 
清水「どちらもハイトワゴンだし、まぁ現実的に考えたらそうするよね」
「ビジョンeスカイ」の市販モデルは、次期型「ワゴンR」と車体を共用するとのウワサがあるが……。 
	清水「どちらもハイトワゴンだし、まぁ現実的に考えたらそうするよね」拡大
「ビジョンeスカイ」のインストゥルメントパネルまわり。この意匠がどこまで市販車に落とし込まれるか、今から興味津々である。
「ビジョンeスカイ」のインストゥルメントパネルまわり。この意匠がどこまで市販車に落とし込まれるか、今から興味津々である。拡大
BYDがジャパンモビリティショーで発表した、BEVの軽スーパーハイトワゴン「ラッコ」。
BYDがジャパンモビリティショーで発表した、BEVの軽スーパーハイトワゴン「ラッコ」。拡大
他の車種と同様、車名の「ラッコ」は海洋生物の名を拝借したものだが……。 
ほった「どの辺がラッコなんですかね?」 
清水「それ言ったら、『ドルフィン』や『シール』や『シーライオン7』だって、どの辺がイルカでアザラシでアシカだったのよ?」
他の車種と同様、車名の「ラッコ」は海洋生物の名を拝借したものだが……。 
	ほった「どの辺がラッコなんですかね?」 
	清水「それ言ったら、『ドルフィン』や『シール』や『シーライオン7』だって、どの辺がイルカでアザラシでアシカだったのよ?」拡大
「BYDラッコ」を見て、清水氏とwebCGほったが思い浮かべてしまった、日産の3代目「キューブ」と3代目「ルークス」。 
ほった「ワタシは初代『ダイハツ・タント』も思い浮かべちゃいましたよ」
「BYDラッコ」を見て、清水氏とwebCGほったが思い浮かべてしまった、日産の3代目「キューブ」と3代目「ルークス」。 
	ほった「ワタシは初代『ダイハツ・タント』も思い浮かべちゃいましたよ」拡大

軽のデザインは輝いている!

渕野:その欧州版軽自動車というのは、フランスとかイタリアで今売られている、あのちっちゃいやつではなくて?

ほった:違います。あれとAセグメント車の間に入る、新しい規格ですね。まぁ現状はエルカンさんが思いつきを口にしただけで、検討もされてはいないでしょうけど。

清水:実現しても、なんだかんだで日本の軽よりだいぶデカくなる気もするね。

ほった:韓国の軽車(キョンチャ)も日本の軽よりデカいですしね。とにかく、これからは世界中で、地元密着型の軽自動車規格が出てくるのかも。

渕野:かもしれませんね。

ほった:最後はちょっとカーデザインの話じゃなくなっちゃいましたけど、最近の軽のデザインについてまとめると、どうなります? 

渕野:いや、スゴいですよ軽は。日本独自の規格のなかで、めちゃくちゃ頑張ってます。バリエーションも多いし。

ほった:規格や規制が厳しいほうが、デザイナーさんが生き生きしてるように見えるんですが。むしろ今は、軽のほうがデザインが面白いというか。

渕野:日本人ですから(笑)。枠が決まってるほうが、「このなかでなんとかやってやろう!」みたいなファイトが湧くし、そういうのが得意なんですよ。ただ、今や200万円代も珍しくないという現状を見ると、ちょっと考えちゃうところはありますよね。

清水:しかしそれでも売れてるわけですよ。高くても軽のほうが便利だし、価値があるってことでしょう。実際、「ダイハツ・タント」に乗っててそう思います。これでターボが付いてて4WDで車載ナビ付きなら、万能じゃないかと。フル装備のデリカミニなら、300万円近くでもまぁいいか、みたいに思える。

ほった:登録車の安いヤツより、ですね。

清水:そうなんだよね。もはや軽は、ひとつのワールドだよ。

(語り=渕野健太郎/文=清水草一/写真=スズキ、ステランティス、ダイハツ工業、日産自動車、本田技研工業、三菱自動車、花村英典、webCG/編集=堀田剛資)

ステランティスが欧州で販売している「シトロエン・アミ」。免許を持たない若者でも運転できる、2人乗りのマイクロカーだ。ジョン・エルカン氏が提唱した「eカー」は、より日本の軽自動車に近い性格のクルマと思われる。
ステランティスが欧州で販売している「シトロエン・アミ」。免許を持たない若者でも運転できる、2人乗りのマイクロカーだ。ジョン・エルカン氏が提唱した「eカー」は、より日本の軽自動車に近い性格のクルマと思われる。拡大
日本の軽自動車は、機能面においてもデザインにおいても、本当にバラエティーが豊富。今回大きく取り上げなかった車種を見ても、上のように個性的なモデルがワサワサしているのだ。(あのクルマがいないじゃないか! 等のクレームは受け付けません)
日本の軽自動車は、機能面においてもデザインにおいても、本当にバラエティーが豊富。今回大きく取り上げなかった車種を見ても、上のように個性的なモデルがワサワサしているのだ。(あのクルマがいないじゃないか! 等のクレームは受け付けません)拡大
どんどんと価格が上がっていく軽自動車だが、そのぶん中身が進化しているのも事実。スーパーハイトワゴンの「三菱デリカミニ」の四駆ターボがあれば、日本の道路事情ではもはや無敵ではないか。
どんどんと価格が上がっていく軽自動車だが、そのぶん中身が進化しているのも事実。スーパーハイトワゴンの「三菱デリカミニ」の四駆ターボがあれば、日本の道路事情ではもはや無敵ではないか。拡大
清水「軽自動車の値段が上がっているのは、それでも売れるから。お客の要望に応え続けた結果だよね」 
ほった「資本主義のチキンレースですね。いろんな意味でインフレし続ける軽自動車がどこに行き着くか、3人で見届けましょう」
清水「軽自動車の値段が上がっているのは、それでも売れるから。お客の要望に応え続けた結果だよね」 
	ほった「資本主義のチキンレースですね。いろんな意味でインフレし続ける軽自動車がどこに行き着くか、3人で見届けましょう」拡大
渕野 健太郎

渕野 健太郎

プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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