第112回:国内市場の特殊化が止まらない
2018.11.20 カーマニア人間国宝への道グローバル人気車種はデカすぎる!
国内市場の特殊化が止まらない。まったくどうにも止まらない。
米「フォーブス」誌によると、昨年(2017年)のモデル別世界販売台数ランキングは、このようなものだったそうです。
1位 トヨタ・カローラ 116万0495台
2位 ホンダ・シビック 83万3017台
3位 フォルクスワーゲン・ゴルフ 78万8044台
4位 トヨタRAV4 78万6580台
5位 ホンダCR-V 75万3359台
6位 フォードFシリーズ 73万0596台
7位 フォード・フォーカス 65万6071台
8位 フォード・エスケープ 63万2529台
9位 フォルクスワーゲン・ポロ 61万4827台
10位 トヨタ・カムリ 56万9760台
1位の「カローラ」に関しては、国内向けの「アクシオ」と「フィールダー」は国内専用に「ヴィッツ」ベースで作られたものなので、あんまり実感が湧かないが、2位の「シビック」は、国内では「あまりにもデカすぎる」と言われているアレだ。アレが世界第2位ですよ! 海外向けのカローラも、全幅1800mmに近いのでだいだい同じ。それが世界(=日本を除く全世界の意)の現実なのですね!
4位と5位の国産SUVは、国内では台数が見込めないので販売されていなかったモデルだ。今年ようやく「CR-V」の国内販売が再開され、「RAV4」の復活もうわさされているが、どっちもデカすぎて数は見込めない。10位の「カムリ」も、国内ではややレアものに近い。グローバルで売れる日本車は、国内ではあんまり売れない。いや、「全然売れない」と言っても過言ではない。だからって我々が困ることは特にないが、かなりがくぜんとする事実だ。
日本という特殊な市場
では、国内ではどんなクルマが売れているかというと、以前も書きましたが、兄弟車を1車種として計算すると、こんな感じになります。
2018年上半期 国内販売ランキング
1位 N-BOX 12万7548台
2位 ノア3兄弟 9万8415台
3位 タンク4兄弟 9万6236台
4位 デイズ4兄弟 9万5861台
5位 スペーシア 7万9718台
6位 ムーヴ 7万4109台
7位 ノート 7万3380台
8位 タント 7万1809台
9位 アクア 6万6144台
10位 プリウス 6万4019台
(自販連および全軽自協等のデータをもとに筆者が集計)
10台中7台が、ほぼ国内専用モデル。グローバルモデルで最上位の「ノート」も、人気の「e-POWER」は国内専用に開発したものだ。
つまり、トップ10のうち海外でも売ってるのは、9位の「アクア」と10位の「プリウス」だけ、みたいなことになる。凄(すさ)まじいじゃないですか!
この、国内市場の壮絶な特殊化を肌で感じるべく、国内販売トップを独走している「N-BOX」については、少し前にディーラー試乗リポートをお送りしました。その続編として、近所の東京トヨペットにも出撃いたしましたので、しばしの間そのリポートをば、ハナクソほじりながらご覧くださいませ。
輸入車は眼中にナシ!
実は近所の東京トヨペットは、以前「アクア」と「シエンタ」を、ともに新車で購入したお店でして、つまり私はお客さま。今はトヨタ車には乗ってないけど、担当営業マンにとっては既納客であり潜在客だ。
そんな堂々たるお客さまである私の元に、「建て替え中だった新店舗が完成しましたので、ぜひご来場を」とのハガキが届いたので、これ幸いとばかりに自転車で出掛けました。
ちなみに、以前この店に「BMW 335iカブリオレ」(当時の愛車)で乗り付けた時は、「BMWが来た」とかなり注目されました。「ランチア・デルタ」(これまたその時の愛車)で行った時は、まったく何のクルマだか見たことも聞いたこともないとのことで(担当者談)、注目されませんでした。1年ほど前には、担当者に「遠くから見ましたけど、清水さん、『ノート』買ったんですか!?」と言われましたが、「DS 3」です。彼の愛車は「アルファード」です。押忍。
自転車を歩道に止め、新店舗を眺める。確かに新しくなったが、あまりオシャレ感はない。最も目を引くのは、出入り口に設置された「くるまにちゅうい!」という、ひらがなの看板である。ひらがななのは、お子さまにも読めるようにとの優しい配慮だろう。涙が出る。
同じ井ノ頭通り沿いには、BMW、ポルシェ、フォルクスワーゲン、アウディ、メルセデス・ベンツ、マセラティなど数々の輸入車ディーラーが立ち並び、オシャレ感を競っているが、東京トヨペットの新店舗には、その気配はない。近くの日産ディーラーにもホンダディーラーにもない。マツダディーラーだけはレクサス店みたいに黒くなったが、ちょっと遠い。
とにかく、国産ディーラーと輸入車ディーラーの間にはまったく競合関係はなく、まったく別のモノを売るお店として存在しているかのようだ……。
(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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